消費増税巡り神経戦 党首討論、岡田氏「先送り」で先手
18日の党首討論は2017年4月からの消費税率10%への引き上げの是非をめぐり、安倍晋三首相と民進党の岡田克也代表が神経戦をたたかわせた。岡田氏は現在の経済情勢の下では再延期せざるを得ないと明言。首相の再延期の表明に先手を打ち、アベノミクスの失敗に照準を合わせようとした。一方、首相は「適時適切に判断する」と言質を与えなかった。
「予定通り10%に引き上げるということか」。岡田代表は党首討論の冒頭から消費税を取り上げて、首相に再延期するつもりがあるのか何度も問いただした。
これまで民進党は「軽減税率の導入を前提とした消費増税には反対」との立場で、再増税の是非そのものは曖昧にしてきた。旧民主党が与党時代に消費増税を含む社会保障と税の一体改革をとりまとめたためで、当時の執行部を中心に増税容認論が根強いためだ。
ただ、民進党が再増税の是非を不明確にしたまま参院選に突入すれば、首相が再延期を決めた場合、後手に回る恐れがある。再延期の提案で先手を打てば、首相が正式に再延期を表明した際、アベノミクスの失敗と位置づけて厳しく追及できると判断した。
岡田氏は党首討論で、消費増税を19年4月まで2年間延期すべきだと提案し、延期によって影響を受ける社会保障の財源確保へ赤字国債を発行すべきだと踏み込んだ。2年間の延期により軽減税率の導入を白紙にすべきだとも訴えた。
一方、首相は今のところ、岡田氏の提案には乗らず「不透明さを増す状況の中で、中国経済の減速というリスクもある」と指摘。「リーマン・ショックや大震災級の影響のある出来事が起こらない限り(消費増税を)予定通り行っていく。そういう状況かどうかは適時、適切に判断する」と繰り返した。
首相の発言を文字通り受け取る向きは少ない。首相は26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論などを踏まえて6月1日の国会会期末ごろに表明することを模索。岡田氏の挑発に乗って再延期を表明すれば、14年11月に「再延期はしない」としてきた自らの発言との整合性やアベノミクスの失敗などを野党側から厳しく追及されかねない。
他の野党も消費増税の再延期に照準を合わせた。共産党の志位和夫委員長も「景気悪化が明白な場合でも(消費税率を)上げるのか」と迫ったが、首相は「イエスかノーか、単純な問題ではない」と反論。「専門家の皆さんに分析していただかねばならない」と慎重に判断する考えを示した。おおさか維新の会の片山虎之助共同代表は「決断は早いほうがいい」と早期の延期表明を首相に促した。
首相は党首討論後、谷垣禎一幹事長と会談した。会期末を控えた国会対応などについて意見交換したとみられる。