国立大に個人寄付しやすく 4割を税額控除、政府検討
政府は個人が国立大学法人に寄付しやすくなる税額控除制度を導入する検討に入った。寄付額の約4割を個人が支払う所得税から差し引く仕組み。年収700万円の世帯では、現行制度と比べて控除額が4倍超に増える。日本の国立大は米国の大学に比べ寄付などの民間資金の活用が遅れていた。安倍晋三首相が意欲を示す国立大改革の柱に据え競争力を高める。
文部科学省が税制改正を要望、年末に自民党の税制調査会が最終判断する。来年度の税制改正大綱に反映される見通しだ。
国立大への寄付制度として現在、寄付額を課税所得から差し引く所得控除制度がある。年収700万円の世帯の個人が5万円寄付した場合、軽減される所得税額は4200円程度にとどまる。
新制度では現在の所得控除に加え、税額控除も新たに選択できるようにする。税額控除は個人の所得にかかわらず、寄付額の約4割を所得税から差し引く仕組みで、年収700万円の世帯が5万円寄付した場合、控除される所得税額は1万9200円程度に増える。
国立大の2012年度の寄付収入は846億円。このうち個人からの寄付は143億円にとどまる。個人の寄付者の税負担を軽くすることで、特に5万円以下の小口の寄付などを幅広く集めやすくなるとみている。税額控除を先行導入した私立大は、13年度の寄付収入が231億円と導入前の09年度比で倍増した。奨学金制度や留学生への奨学金などに活用している。
国立大は政府の交付金への依存度が高い。最近、交付金を減らされて、経営難に苦しむ大学が増えている。米国ではハーバード大などが総収入の3割程度を寄付金収入や基金の運用でまかなうなど、民間資金の活用が進んでおり、高い競争力を維持する一因となっている。