マクドナルド 見えぬ再成長 株主総会、カサノバ社長3年目
日本マクドナルドホールディングスが29日に開いた株主総会でサラ・カサノバ社長の続投が決まった。苦戦が続く日本マクドナルドについて、筆頭株主の米マクドナルドは保有株式を売却する方針を明らかにしており、経営陣は変わる可能性があった。3年目のカサノバ体制は当面、単独で再建への道を歩む。先行きを楽観視する株主は少ない。
総会には985人の株主が参加した。異物混入問題で揺れた2015年より252人減ったものの、質問に立った株主は22人と逆に8人増えた。所要時間は前年並みの2時間34分。15年12月期は上場来最大の最終赤字となり、再生の行方に関心を持つ株主が多いことがうかがえる。
「15年は後半にかけて、勢いを取り戻すことができた」。登壇したカサノバ社長は強調した。15年12月以降、既存店売上高は前年比で増収基調にあり、16年に入っても回復は続く。「今年は明るい1年になると確信している」と述べた。
ただ、株主の評価はまちまちだ。一部に「これからも回復していくと感じた」(22歳女性)という声があるものの、多くは「一度、落ち込んだ業績を取り戻すのは大変。再生には時間がかかる」(68歳男性)との見方だった。
米社による日本マクドナルドの株式売却は再生に向けたパートナー探しの意味合いが強い。説明を求めた株主に対し、カサノバ社長は「売却プロセスは米マクドナルドの秘匿情報」と述べるにとどめた。
1月下旬に米マクドナルドが株式売却の検討を表明してから表だった進展はない。入札は投資ファンドの米ベインキャピタル、英ペルミラ、アジア系のMBKパートナーズが参加したものの、1月の締め切り後、「詳しい説明がない」(ファンド関係者)という。
交渉が長期化している一つの要因は日本マクドナルドの株価だ。29日終値も2681円となり、業績に比べて割高との指摘は多い。ファンド側が提示した買収金額との開きは大きいとみられる。米マクドナルドは保有する49.99%の株式のうち、売却は最大でも33%分にとどめる意向とされている。出資比率が限定されることもファンド側が好条件を提示しにくい一因になっているようだ。
「16年は中期的成長の道筋を確かなものにする」。カサノバ社長は株主に再成長への決意をこう示した。ただ、16年の戦略は大量改装や地域特産品を使ったメニューなど大半は15年の延長線。新味を欠く内容に株主からは「納得のある説明は聞けなかった」(45歳男性)との声が上がる。
「外食産業全体が厳しいなか、成長なんて期待していない」(60歳男性)。株主の冷めた見方を覆すことができるのか。真価を問われる3年目となる。(小沼義和、田中深一郎)