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ライブドア攻防戦を戦った軍師、フジに凱旋

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2005年、フジテレビジョン(現フジ・メディア・ホールディングス)とライブドアの間で、ニッポン放送株とフジの経営権を巡る攻防戦が起きた。最高指揮官はフジ側が日枝久会長、ライブドア側が堀江貴文社長(当時)。軍師には、それぞれ宮内氏がいた。ライブドア側が宮内亮治取締役(同)。そしてフジ側が宮内正喜常務(同)だ。

フジ・メディア・ホールディングス(HD)は11日、傘下のBSフジ社長の宮内正喜氏が6月下旬に社長に就く人事を発表した。本体から転出した軍師が約10年の時を経て、トップとして帰還する。

この10年でフジの組織形態は大きく変わった。ニッポン放送はグループ最上位にある「資産統括会社」ではなくなり、フジ・メディアHDの子会社に収まった。世代交代も進み、フジテレビ社内で宮内氏に会ったことがない者も多くなってきた。ただ、40歳以上の宮内氏を知っている社員は今回の帰還におののいているのではないか。宮内氏が軍師だった時のスタイルが、箸の上げ下ろしにまで口を挟む強烈な締め付け型だったからだ。

ライブドアとの攻防戦の時、宮内氏は総務・人事担当常務だった。戦いの序盤では、支援を申し出たファンド、金融機関、IT企業との調整や敵陣との和解交渉の実務を経営企画局が担当していたが、最終局面では完全な人手不足に陥った。慌てた宮内氏が中堅幹部数十人をあちこちの部署から呼び集める。

ただ、テレビ局の人材は基本的には「番組作りが好きな人」の集まりで、企業経営の知識を身につけている者は少ない。なぜニッポン放送の株が焦点になっているかなどフジサンケイグループの歴史を宮内氏が「怒鳴り散らしながら」(当時の中堅社員)教え込み、即席の応援部隊に仕立て上げた。

ライブドア攻防戦の後も、懸案だったニッポン放送の完全子会社化、産経新聞社との人材交流、フジテレビを中心としたグループ企業の再編などの業務に携わった。編成制作担当の山田良明常務(現・共同テレビジョン相談役)とともに、社内では次の社長候補と噂されたが、2007年に系列の岡山放送の社長に転出した。

グループトップの日枝会長は、こうした遠ざけて様子を見る人事を多用する。現フジテレビ社長の亀山千広氏も実は同じだ。同氏はかつて「俺の才能にかなうヤツはいない」と公言する自信家で、90年代にプロデューサーとして「あすなろ白書」「ロングバケーション」などのドラマで大ヒットを飛ばし権勢を振るった。「鼻っ柱を折るため」(関係会社社長)、日枝会長は当時傍流だった映画事業局に亀山氏を異動させる。

結果として亀山氏にとっては吉と出た。今度は「踊る大捜査線」や「海猿」などドラマ連動型の映画を次々にヒットさせ、その実績を買われて最終的には社長の座を射止めた。

だが、その亀山氏の強運を持ってしても、視聴率低迷にあえぐフジテレビを立て直せなかった。日枝会長も今回、代表権のない取締役相談役に退き、10年間、様子を見ていた軍師に後事を託す。ただ宮内氏は現在73歳。10年ぶりの論功行賞に応えるための持ち時間はどれだけあるのだろうか。

(石塚史人)

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