官民共同の留学支援、思わぬ苦戦 最大560万円支給も定員割れ
海外で学びたい大学生に向けた官民共同の新たな留学支援事業が苦戦を強いられている。半年ごとに500人を募集し、返済不要で最大560万円を支給する好条件にもかかわらず、最近3回は定員割れ。国は低迷する留学生数を2020年までに12万人に倍増させる目標を掲げており、文部科学省は「成績も語学力も問わない。思い切って応募して」と呼びかけている。
事業は国際的に活躍する人材を育てようと、国と経済界が14年に創設した海外留学の奨学金制度「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」。海外の大学への留学だけでなく、インターンシップやボランティアも支援対象だ。
提出書類や面接を通じて、学生が立てた留学計画と積極性などの人物像をみて選考する。原資は企業からの寄付。渡航先などに応じ、月10万~20万円を最長2年、学費を最大60万円、渡航費を最大20万円支給する。
「3千人、5千人と応募が殺到すると思っていたが、特別な能力がないから無理とためらう学生が多いようだ」と文科省の担当者。第1期こそ1700人の応募があり、定員の300人を上回る323人に支給したが、定員を500人にした第2~3期は応募者が大きく減り、選考基準を下げなかったため、合格者は定員を割り込んだ。
応募者を増やそうと、第4期から比較的裕福な家の学生も支援対象にしたものの、応募者は約1400人、合格者は437人だった。現在は5期生を募集中(応募は3月8日まで)だ。
1期生としてラオスで教育支援に取り組んだ東洋大2年の高木一樹さん(22)は「思いが実現し、同期生ら多くの人とのつながりもできた。迷わず飛び込んで」と話す。
経済協力開発機構(OECD)などによると、海外の高等教育機関への留学生は04年の約8万3千人がピークで、12年は約6万人だった。〔共同〕