『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』 仕事に主軸 精確・リアルに
フランスの巨匠ジャック・ドワイヨン監督の新作。前作「ラブバトル」の狂気的な愛のドラマと違って、今回は「近代彫刻の父」と称されるオーギュスト・ロダンの没後百年を記念して有名な彫刻家の後半生を、ロダン美術館の全面協力を得て精確かつリアルに浮き彫りにしている。
1880年、国立美術館の新設のため初めて大仕事を依頼され、「地獄の門」を制作するロダン(ヴァンサン・ランドン)。そんな中、ロダンは弟子のカミーユ・クローデル(イジア・イジュラン)に心惹(ひ)かれて関係を深めていく。
このロダンとカミーユの関係は有名であり、伝記や映画でも描かれている。本作でもロダンが彼女と内縁の妻ローズの間で板挟みになって悩む姿や、2人の破局などが描かれるが、物語はロダンの仕事を主軸に展開する。
ロダンは「地獄の門」が未完成のまま「カレーの市民」を制作するが、評判は芳しくない。やがて文芸家協会からバルザックの記念像の制作を依頼されるが、完成したのがバルザックの裸体像だったことから酷評され拒否されてしまう。
そんな中、ロダンが小説家ミルボーや画家モネたちと交流する姿から新しい時代の息吹が示され、またモデルをデッサンする姿から仕事人間としてのロダンを見せている。そんなロダンに扮(ふん)したランドンが好演している。
ドワイヨン監督の演出はロダンの目線に立って人物像に焦点を当てる一方、例えばロダンと別れた後のカミーユの心の苦悩を、画廊に展示された彼女の「嘆願する女」をロダンがじっと見つめる姿で語るなど、人物の心理に加担することなく映像化している。
問題のバルザック像は7年かけてガウン姿で完成したが、日本では彫刻の森美術館や東京芸大、久留米市などで見ることができる。2時間。
★★★★
(映画評論家 村山 匡一郎)
[日本経済新聞夕刊2017年11月10日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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