春秋
ゴールデンウイークを廃止しよう――。文化財の補修を手がける小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長がそう提言している。元投資銀行のアナリストで「新・観光立国論」の著作を持つ。大型連休というかき入れ時に頼る限り、観光業の進化は難しいと語る。
▼この期間は多くの宿泊施設が宣伝なしでも満杯になる。料金は高く、もうけも大きい。大勢の客を効率よくさばくことが大事になり「おもてなし」の技を磨く余裕もない。これでは創意工夫や個性の芽を摘むとの主張だ。いささか辛口の見方だが、押し合いへし合いの観光を経験した人は、一理あると感じるのではないか。
▼きょう、あすは休日の谷間。休みをとって9連休という方もおられよう。JTBによる事前の予測では、今年のゴールデンウイークに旅に出る人は昨年より減り、予算も抑え気味だそうだ。旅をしない人に理由を聞くと「混雑する」が圧倒的な首位で、費用の高さも上位に入る。通勤ラッシュのような旅への忌避感は強い。
▼この連休、旅に出ない人からは「ほかの時期に行くので」という声も多かったそうだ。有名観光地は一年中、高齢者や外国人でにぎわう昨今だが、それでも5月の連休や年末年始に比べ他の時期は人も少なく、料金も安めで空気も落ち着いている。休みの取り方も脱・一斉主義となるか。働き方改革は休み方改革でもある。