量から金利「政策に持続性」 日銀総括検証
「主な意見」を公表
日銀は30日、20~21日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。長短金利を誘導目標とする新しい枠組みへの移行は「政策の持続性を高める」との認識で一致。誘導目標を量から金利に変える中で国債購入額が減少する可能性も示唆している。長期金利をゼロ%程度に操作することへの難しさに言及があり、新枠組みの運営を懸念する声もあがった。
日銀は目標とする物価2%上昇を実現できない中、過去の異次元緩和について「総括的な検証」を実施。新しい政策の枠組みとして「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」を導入した。ある委員は「新しい枠組みは従来に比べ、経済・物価・金融情勢の変化に応じてより柔軟に対応することが可能」との認識を示した。
今後の金融政策は、現状マイナス0.1%の短期金利と、長期金利をゼロ%程度に誘導することで操作するが、異論も相次いだ。中央銀行が本来市場で形成されるはずの長期金利を操作するのは異例のことだからだ。
ある委員は「期間10年までの金利をマイナス圏で長期間固定することになりかねず金融仲介機能への影響が懸念される」と指摘。別の委員も「指し値による国債買い入れオペなどの導入は市場機能を著しく損ねる恐れがある異例の措置である」と言及した。
ほかの委員は「ゼロ%程度というのは次回会合までの調節方針。毎回の会合で最適なイールドカーブ(利回り曲線)の形状を判断する」との見方を示した。
新しい枠組みのもとでも国債買い入れ額は当面年間80兆円程度に維持するが、ある委員は「長期金利の操作目標を実現するため、増減することは当然生じうる」と言及。「狙い通りに国債買い入れペースが低下し政策の持続性が高まるかは不確実」との意見もあった。資金供給量については「物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を持続すべきだ」との声もあがった。
日銀は物価が2%を安定的に超えるまで緩和を続ける「オーバーシュート型コミットメント」も新しく導入した。ある委員は「極めて強い約束(コミットメント)」と述べた一方、ほかの委員は「現実的な目標設定ではなく予想物価上昇率の引き上げも期待できない」と反論した。委員の間で新枠組みの導入について見解が割れた。
マイナス金利政策については「金融機関収益、金融市場、生保年金の運用などに対する影響も大きかった」との声があがり、今後も金融機関への副作用を注視すべきだとの向きが多かった。
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