対中で仏とも連携を深めよう
日本と欧州の外交協力が深まりづらい一因に、台頭する中国への認識のずれがある。中国の軍拡ひとつとっても、アジアから遠く離れた欧州は、日本ほどには危機感を抱いていないのが実情だろう。
そうしたなか、日本とフランスは9日、外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)の枠組みを新設し、パリで初会合を開いた。来年は東京で開催するという。
日本が2プラス2の制度を設けるのは米国、オーストラリア、ロシアに次いで、仏が4カ国目。日仏が対中政策などで連携を強められれば、中国に責任ある行動を促していくうえでも有益だ。
日本からみると、今回の会合のいちばんの成果は、軍事転用できる汎用品などの輸出管理策を話し合う委員会を設置したことだ。
欧州連合(EU)は1989年の天安門事件以来、対中武器輸出を禁じているが、軍事に転用可能な汎用品への輸出規制は必ずしも厳格とはいえない。
昨年春には、仏企業がヘリコプターの着艦装置に使える部品を中国に売り、日本政府が仏政府に懸念を伝える騒ぎも起きた。だが、仏側はこうした輸出はEUの禁輸対象外との立場のようだ。
軍事に使える部品・技術が欧州から中国に流れ込めば、中国軍の増強につながり、アジア太平洋の緊張は高まりかねない。そうなれば、南太平洋に仏領を抱え、海軍を常駐させる仏にも望ましくないはずだ。日仏の委員会で輸出管理のあり方を協議してほしい。
2プラス2ではこのほか、防衛装備品の共同開発に関する委員会も設けることになった。日本は武器輸出三原則を緩和し、米国以外の国々とも共同開発を手がけようとしている。すでに英国とは化学防護服の開発で合意した。仏との協力も実現すれば、装備品の調達コストを下げるのに役立つ。
ただ、共同開発は、日本の防衛技術や関連部品などが第三国に流出しないことが大前提になる。この意味でも、仏側には輸出管理の強化を求めたい。