UQなど中堅3社 携帯電話の契約数の公表取りやめへ
KDDI系およびソフトバンク系通信会社が、電気通信事業者協会(TCA)が毎月公表している携帯電話の契約数統計からの離脱を検討していることが31日明らかになった。KDDI系のUQコミュニケーションズ(東京・港)、ソフトバンク系のワイヤレス・シティ・プランニング(WCP、同)とウィルコム(同)の3社でUQは既に9月末で公表取りやめを決定。WCPとウィルコムも近く追随する公算が大きい。TCAの統計は契約数重視の販売合戦をあおる原因との批判が以前から一部であがっていた。中堅以下の携帯電話会社の離脱で統計が形骸化する可能性があり、残りのNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルも公表を継続するか判断を迫られそうだ。
UQは既に最終決定 WCPとウィルコムは追従へ
UQらは今後、総務省への報告が義務付けられている3カ月ごとの公表にとどめる方針。関係者によると離脱を決定したUQに続き、ソフトバンク系のWCPとウィルコムも離脱時期を含めて具体的な検討に入った模様。両社の広報は「現時点で公表を続けるか否か最終決定はしていないが、契約数の公表についてさまざまな検討をしていることは事実」(ウィルコム)と認めている。
各社はこれまで契約数を重要な経営指標と位置付け、TCAの統計に協力してきた経緯がある。ただ結果として他社より契約数や純増数を増やすため、大幅な値引きを実施したり複数の端末をセット販売したり過度な販売合戦が店頭で繰り広げられるようになった。
一方で直近、携帯電話の普及率が100%を超え成長の鈍化が懸念されており、思ったほど販促の効果が上がりにくくなってきた実情がある。中堅以下の携帯電話会社にとり大手3社との競争激化で純増を維持するのが難しくなり、従来の契約数重視の販売合戦は転機を迎えつつある。こうしたことが今回の3社の判断につながったとみられる。
もっとも契約数が順調に増えている時期はその事実を広告などで大きくうたい、伸び悩んだとたん非公表とする姿勢をめぐり、身勝手との批判が起こる可能性もある。
UQはWiMAX(ワイマックス)方式のデータ通信サービスを2009年2月に開始。当初は契約数を公表せず、同年9月から四半期ごとに公表。翌10年4月から月次データの公表を始めた。11~12年には、KDDIのスマートフォン(スマホ)にWiMAXの通信機能が組み込まれたことで単月で20万契約以上の純増を記録した。直近の13年9月は1万200契約の純増にとどまっていた。
同社は31日、WiMAXの高速版である「WiMAX2+」のサービスを始めたが、当初は提供エリアや端末の機種数などに制約があり大幅な契約数増は見込みにくい。WiMAX2+開始が目前の9月末に公表を打ち切ったのはこうした事情からとみられる。UQの野坂章雄社長は31日、日本経済新聞の取材に対し「データ通信サービスで競合するイー・アクセスは11年11月末で公表を打ち切っている。今のタイミングに同社に合わせただけで、四半期ごとの公表は今後も続ける」としている。
PHSサービスを提供するウィルコムは、10年2月に会社更生法の適用を申請。その後ソフトバンク傘下に入った。11年1月に、PHSを1回線契約すると、追加で1~2回線無料で契約できる「もう1台無料キャンペーン」を始めたことで契約数が純増に転じた。11年1月末時点で364万だった契約数を、直近の13年9月末には531万契約まで伸ばしている。
WCPは旧ウィルコムの次世代PHS事業を引き継ぎ、10年2月に「ソフトバンク4G」の名称でデータ通信サービスを開始し13年9月末の契約数は208万件。ソフトバンクモバイルやウィルコムが扱うアンドロイド搭載スマホは、WCPの回線を使いデータ通信をする仕組みだ。
(電子報道部 金子寛人)