30年の世界の温暖化ガス、10年比16%増 国連が報告書
【ブリュッセル=竹内康雄】国連気候変動枠組み条約事務局は25日、各国が提出した2030年の温暖化ガスの排出削減目標が、国際枠組みの「パリ協定」の目標に合致しているかを分析した報告書を公表した。現段階の削減目標では30年時点での温暖化ガス排出量が10年比16%増になると指摘。パリ協定の目標を実現するには不十分で、一段の対策が必要になると呼びかけた。
パリ協定は気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度以内に抑えることをめざす。現行目標では気温上昇は今世紀末に2.7度になる可能性があるという。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2度未満にするには30年時点の排出量を10年比25%減、1.5度以内に抑えるには45%減にする必要があるとみている。現段階の目標では実現には遠い。
パリ協定を批准済みの192カ国・地域の目標を集計した。このうち、新しい目標を提出したり、更新したりした143カ国・地域の集計では30年の温暖化ガスの排出量は9%減になる。事務局によると、日本が掲げた30年度の13年度比46%削減など、米欧を含め主に先進国は大きく深掘りした目標を提出・更新した。一方、中印は古い目標のまま更新しなかった。
条約事務局のエスピノサ事務局長は声明で新規目標を出していない国に「新しい目標を出すよう求めたい」と呼びかけた。中国は30年までに二酸化炭素(CO2)の排出をピークアウトし、インドは国内総生産(GDP)当たりの排出量を05年比33~35%減らす意向を示している。
ただ、国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は今のままの政策では30年時点の排出量は20年とほぼ変わらない。途上国の排出は全体の6割を占め、主要排出国である中印の努力なしにはパリ協定の目標は達成できない。
英グラスゴーでは31日に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開幕する。先進国が中国やインドなど新興国に温暖化ガスの排出削減目標を引き上げるよう圧力を強めている。
COP26の議長を務めるシャルマ氏は声明で、各国はより野心的な行動を取る必要があると主張。各国の目標水準は「進展はあったが、十分ではない」とさらなる排出減が必要と訴えた。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は15日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と電話協議し「COP26に向けて、もっと野心的になってほしい」と要請。EU高官によるとミシェル氏は習氏に30年目標を深掘りし、60年までにCO2排出を実質ゼロにする目標の前倒しを求めた。
COP26では温暖化ガスの排出量の多い石炭火力の縮小が議題になる。中国はなお発電量の6割を、インドは7割を石炭に頼っている。日本も30年度に2割の電気を石炭火力でまかなう計画で、英国などから批判される可能性がある。
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