ハンセン病患者の家族も被害、国に賠償命令 熊本地裁
国が続けたハンセン病患者の隔離政策によって家族も差別などの被害を受けたとして、元患者の家族らが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長)は28日、原告541人について国の責任を認め、1人当たり33万~143万円、計約3億7千万円の賠償を命じた。
弁護団によると、家族の被害について国の賠償責任を認めた判決は初めて。
原告は北海道から九州・沖縄に住む20~90代の男女561人。国が「らい予防法」に基づいて患者の隔離政策を進めたことで、就学・就労や結婚で差別を受け、家族関係が破綻するなどしたとして、1人当たり550万円、計約30億円の賠償を求めていた。
遠藤裁判長は判決理由で、隔離政策によって患者の家族が差別を受ける社会構造が形成され、就学・就労の拒否、結婚差別などの被害が生じ、家族関係の形成を阻害したと認定した。
医学の進歩などによって、遅くとも1960年には国に隔離政策を廃止する義務が生じ、96年にらい予防法が廃止された後も正しい知識を普及して偏見を除去する義務があったのに、その義務を怠ったと判断した。
こうした国の不作為が不法行為に当たることを原告らが認識するのは困難だったことなどから、損害賠償請求権の消滅時効(3年)は成立していないとした。
国側は「隔離政策は家族を対象としておらず、差別や偏見を除去する義務は負わない」などと主張していた。
厚生労働省は「判決内容を精査するとともに関係省庁と協議し、対応を検討する」とコメントを出した。
元患者本人の訴訟では、2001年の熊本地裁判決が隔離政策は違憲だったとして国に賠償を命じ、当時の小泉純一郎首相が控訴を断念して確定した。その後、本人の被害を補償する制度が創設された。
家族の被害を巡っては、患者の遺族が国に賠償を求めた訴訟で鳥取地裁が15年、訴えを退けたうえで「国は患者の子に対する社会の偏見を排除する必要があったのに、相応の措置をとらなかった」などと言及していた。