老子は、牛に乗って関所（函谷関）を去る際、関守に請われて「道徳経」を残したとされますが、これは伝説なのでしょうか？ それとも史実と考えられていますか。 また、牛に乗っていたことには何か特別な意味があるのでしょうか。

老子が牛に乗って函谷関を去る際に関守・尹喜に請われて『道徳経』（『老子』）を著したという話は、史実というよりも伝説と考えられています。 この逸話は司馬遷の『史記』「老子韓非列伝」に記されていますが、老子の実在自体が歴史学的に確定していません。現代の研究では、『老子』は一人の著者によるものではなく、紀元前4世紀から紀元前3世紀頃にかけて複数の著者によって編纂された可能性が高いとされています。 牛に乗っていたことの象徴的意味については、以下のような解釈があります： ・質素で謙虚な生き方の象徴（馬ではなく牛に乗る） ・老子の思想における「無為自然」の表現 ・老境に達した賢者のイメージ（「老」の字は牛を引く老人の象形とも言われる） この伝説は、道家思想の権威付けや老子という人物の神格化に寄与したと考えられています。