九電、夏の一時金見送り提案 役員報酬も削減幅拡大
九州電力は2日、家庭向け電気料金引き上げの政府認可を受けたことに合わせて人件費の追加抑制策を発表した。社員の年収カットでは、今夏の一時金支給見送りを労働組合に提案した。役員報酬の削減幅もこれまでの35%から平均60%に拡大することを決めた。値上げについて家庭や企業の理解を得るためにも、一段のコスト削減が必要と判断した。
「お客様の意見を真摯に受け止め、さらなる経営合理化に努める」。瓜生道明社長は2日の記者会見で、家庭向け料金引き上げの認可を政府から受けたことを報告した。平均6.23%の値上げ幅で5月1日から実施する。申請当初は8.51%を想定した値上げ幅は政府の査定で圧縮。これに合わせ、4月から引き上げた企業向けも14.22%の値上げ幅を11.94%に抑制する。
政府の査定では人件費抑制を強く求められた。昨夏の一時金の支給実績は約80万円で、組合員は約1万人のため、今夏の支給を見送れば単純計算で80億円のコスト削減になる。役員報酬でも約2億6000万円の合理化効果を見込める。
九電は社員の平均年収を826万円から650万円に減らす方針をすでに決めている。しかし、政府の料金査定で原価への算入を認められたのは598万円。瓜生社長は「労働組合との交渉次第だ」とかわしたが、平均5%引き下げで労組と合意した基準内賃金に加えて一時金も削減対象とする方針を明確に示した。
取締役の報酬も料金査定に対応して削減する。昨年9月以降は35%カットを実施していたが、4月からは会長・社長で70%、社内取締役の平均で60%に削減幅を拡大する。昨年11月の値上げ申請段階では年間で約6億6000万円を想定していた役員報酬を、約4億円に圧縮する。
九電にとって、値上げへの理解を家庭や企業から得るために一段の合理化は必須だ。さらに、料金査定で原価算入を認められなかった人件費は電気料金で回収できず、経営の悪化に直接跳ね返る。査定で削り込まれた原価は約300億円。この分をカバーするためにコスト削減を進める上で、人件費の抑制は避けて通れなくなっている。
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