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井村屋あずきバーが硬い理由 中部・関東の技対決

鋳物・ビジネス靴…光る企業紹介

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多くの個性的な企業がひしめく関東。ものづくりの中心を自負する中部。両地域ともに他社にまねのできない製品を作る企業が割拠している。菓子など身近な分野で技を競い合う、光る企業を並べて紹介する。

(1)アイス編

フタバ食品「サクレレモン」 食べやすい軟らかさ追求

薄くスライスしたレモンが乗った、さっぱり味のかき氷。フタバ食品(宇都宮市)のカップ入り氷菓「サクレレモン」は食べやすい軟らかさが売り物だ。そもそも「サクッと」すぐに味わえることが商品名の由来のひとつだ。

「氷がシャーベット状なので冷凍庫から出してすぐにスプーンが入る」と同社の斉藤龍樹取締役企画部長は話す。通常のかき氷アイスと違い、冷凍してもカチカチにならない。

秘密は容器にある。通常のカップアイスで使う薄い素材だと、冷気が中まで伝わり硬くなる。しかし厚みがあり軽いポリプロピレン製を使うため、冷凍庫内の冷気を遮り食べやすいシャーベット状を保てる。

発売以来27年を経た定番商品のサクレレモンは、フタバ食品のアイス部門の売上高の3割を占める。最近は地元・栃木県出身のお笑いコンビ「U字工事」を使った販促が奏功し、2010年の年間販売個数は3800万個と前年のほぼ倍増になり、その後も同水準を保っている。6~8月に年間の7割を売り上げるため、今後は冬場の売上高アップが飛躍のカギになる。

<相手を語る>
 加藤光一・井村屋開発部低温開発チーム長 フタバ食品の製品はレモンなど、若者が好みそうなフレーバーを使ったものが多い。サクレレモンのブランドイメージも定着している。

井村屋「あずきバー」 硬めが和の風味引き出す

津市に本社を置く井村屋の「あずきバー」は小豆の風味と食感を残した「和」の氷菓だ。60~70代の高齢者にファンが多いロングセラーだが、食べるには意外と硬い。ただ、これには理由がある。

原材料は小豆、砂糖、コーンスターチ、塩のみ。食品添加物は一切使わず、凍っても軟らかい脂肪分を含む乳製品も入らない。和風の自然な風味にこだわるがゆえの硬さだ。「素材を生かした味わいで飽きがこないからかリピーターが多い」(同社)という。

アイス1本あたり小豆は100粒入っている計算。一部の豆粒はそのまま残し、小豆の風味が口に広がる。販売は家庭向けの箱タイプ(6本入り)が8割以上を占める。工場では自動選別機で不純物などを取り除いた小豆を炊き、砂糖とコーンスターチを合わせる。最後に小豆の風味を引き立たせる塩を加え、冷やして固めれば完成だ。

1973年の発売から売上高を伸ばし小売りの店頭に定着。売り先は米国など海外にも広がる。2011年度の販売本数は2億3900万本で、12年度の目標は3億本という。

<相手を語る>
 斉藤龍樹・フタバ食品取締役 井村屋は商品展開が幅広く多彩なノウハウを持っている。あずきバーは季節を問わず売れる商品で、当社も1年を通じて売れる商品を作りたい。

(2)鋳物の鍋編

伊藤鉄工「i-mono」 強度高め薄さと軽さ実現

鋳物の街、埼玉県川口市で2008年に生まれた伊藤鉄工の鋳物鍋「i-mono」。武骨な鍋を手に取ると、意外な軽さに驚く。直径23センチのホットパンの重さは3.2キログラム。仏製の同サイズ品と比べ2キロ近く軽く高齢者でも使いやすい。

秘密はダクタイル鋳鉄という材質だ。内部に含む黒鉛が細かな球状になっている。黒鉛が針状のねずみ鋳鉄を使う一般的な鋳物鍋に比べ、強度が高く割れにくいため薄く造ることができる。厚さは2~3ミリと他社製に比べ半分ほどでも、加熱・保温性能は同じだ。

形状も精密。底に僅かなゆがみもないため、平らなIHコンロに置くとぴたりと安定し、カタカタと揺らぐことはない。同社の篠崎謙一顧問は「価格は最高でも2万1000円。ぜひ使ってみてほしい」と話す。

伊藤鉄工は鍋については素人だった。06年度に川口商工会議所が中小企業庁のブランド育成に乗り出したのを契機に、鍋の開発を始めた。ダクタイル鋳鉄は溶けた鉄の流し方や温度管理など高い鋳造技術を要する。マンホールや水道管など高圧に耐える部品の製造で培ったノウハウを、鍋の開発につぎ込んだ。

i-monoの出荷は月300~500個。製造は簡単ではなく、生産効率の向上が課題だ。

<相手を語る>
 土方智晴・愛知ドビー専務 i-monoは軽くて使いやすく、消費者に受け入れられやすい。あそこまで鋳物を薄くする技術はなかなかない。互いに切磋琢磨(せっさたくま)していきたい。

愛知ドビー「バーミキュラ」 ぴたり密閉で無水調理OK

1000分の1ミリ単位の精度――。愛知ドビー(名古屋市)の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」は、鍋本体と蓋がぴたりと密着する精度が売り物。食材から出た蒸気や風味を閉じ込める「無水調理」が可能だ。

バーミキュラはインターネットの口コミで人気に火がついた。「同じ材料なのにカレーがおいしくなる」。価格は2万円を超えるが、納品まで15カ月待ちの状態という。鋳物の高い熱伝導率と、ガラスを吹き付けたホーロー加工の遠赤外線効果が特徴。蓋と本体の接合面は平滑に削り、肉眼では見えない凹凸も排除して鍋の密閉性を高めた。

愛知ドビーの主力は産業機械用の鋳物部品。下請け仕事に頼る収益構造からの脱却を目指し、2007年に鋳物ホーロー鍋の開発に着手した。鋳物のホーロー加工は仏製の鍋にはあったが製法は不明。失敗を繰り返しながら3年がかりで成功にこぎつけた。

顧客への配慮も欠かさない。7色のホーロー加工は古くなると新たに施し、色を変えることもできる。納品を待つ顧客には、メールで職人の仕事ぶりを伝えることも。高級外車の販売店を参考にし、手元に届くまでを楽しんでもらう狙いだ。年末にも生産能力を3割増の月3600個程度とし、納期短縮を目指す。

<相手を語る>
 篠崎謙一・伊藤鉄工顧問 愛知ドビーの製品は色が多様で魅力的。レシピ開発に力を入れるマーケティングは見習いたい点だ。中小の高い技術を生かした鍋を普及させるため力を合わせたい。

(3)ビジネス靴編

リーガル 「複式縫い」で耐久性高く

千葉県浦安市に本社を置くリーガルコーポレーションの主力は男性向けのビジネス靴だ。しっかりしたつくりで固定ファンをつかんでいる。

靴底と甲部分を2回縫い合わせる「複式縫い」と呼ぶ、丁寧な製法で耐久性が高い。革の色の風合いを高める仕上げ作業などは職人の手仕事。つま先に飾りのない「プレーントウ」は、熟練の技で鳥のくちばしのような鋭い形に仕立てる。

青野元一・紳士営業部長は「高い自社基準を設けており、精緻な検査を経なければ商品にしない」と自信をのぞかせる。売れ筋は2万円台半ばの商品という。

さらにお気に入りの靴を長く履けるよう修理体制も手厚い。千葉県柏市の修理工場では1日約400足の修理を手掛ける。

同社は1902年に東京で設立された日本製靴が前身。61年にリーガルブランドの生産を始め90年に現社名に変更した。全国に200店を持つ小売企業でもある。12年3月期の売上高は352億円だった。

現在、同社は35歳前後が主な顧客層。若い層での認知度を上げるのが長年の課題だ。価格帯が低めの入門シリーズを用意するほか、シニア層や女性を意識した商品群も強化している。

<相手を語る>
 鈴木新・マドラス総合企画室長 リーガルコーポレーションは業界でも早くから直営店戦略や海外展開に着手していた。タイムリーな戦略を着実に進める企業だとみている。

マドラス 機能性高め商品分野拡大

革靴製造大手のマドラス(名古屋市)は、老舗として形が美しいビジネス靴を得意としてきた。しかし、現在は機能性を高めたビジネス靴を扱うなど商品分野を広げつつある。

最近の売れ筋は「マドラスウォーク」(1万6000~1万8000円)。ビジネス靴だが、革の内側にアウトドア用品に使う防水透湿素材「ゴアテックス」を使い、防水性・通気性を高めた。帰宅困難者が多かった東日本大震災以降、長く歩くことに備え機能性を重視する消費者が増えているといい、販売が伸びている。

マドラスは「亜細亜製靴」として1921年に創業。65年にはのちに社名となる伊靴大手のマドラス社と提携し、技術力を磨いてきた。百貨店を主な販路として1万~5万円の靴を供給する。ただ、近年は革靴の価格下落や服装のカジュアル化が加速し、革靴の販売は減少傾向。12年5月期の売上高は約100億円という。

このため、革靴に続く収益の柱を育成している。今春には、20代半ばの男性をターゲットにしたスニーカーの新ブランド「JADE(ジェイド)」を立ち上げた。今秋には小中学生向けのシリーズも投入し、顧客の裾野拡大を目指す。

<相手を語る>
 秋葉光徳・リーガル統括課長 マドラスは都心など当社とぶつかる商圏もあり、よい意味でのライバル。お互いに良い商品を提供して業界の活性化につなげたい。

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