李明博大統領、任期切れ前に特赦 側近らに
【ソウル=内山清行】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は29日、不正事件で有罪が確定した側近らを含む政治家、経済人ら55人の特別赦免や減刑、復権を決めた。31日に実施する。大統領による特赦は珍しくはないが、2月の任期切れ前に駆け込み的に強行した印象は否めず、世論は反発しそうだ。
今回の特赦を巡っては朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領が28日「大統領権限の乱用で、民意に反する」との意向を示し、現職大統領と対立する事態になっていた。
朴氏は李大統領と同じ保守政党、セヌリ党の所属。朴氏側は李大統領だけでなく、特赦強行を防げなかった朴氏にも批判の矛先が向かうことを懸念している。
特赦は憲法に規定がある大統領の権限だ。新大統領の就任や光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)などを機に、慣例的に実施している。李明博政権での特赦は7回目。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でも8回あった。
法務省によると、特赦の対象には大統領の「政治的な父」といわれ、不正資金事件で有罪が確定した崔時仲(チェ・シジュン)前放送通信委員長ら複数の側近を含んでいる。
崔氏らは最近、相次いで裁判闘争を断念し、刑が確定した。特赦は刑が確定していない場合は適用されないため「特赦を見込んだあうんの呼吸」との指摘が出ていた。
李大統領の実兄で、不正資金事件で有罪となった李相得(イ・サンドゥク)前議員は控訴したので対象になっていない。
経済人では、財閥や大手企業の元幹部が対象になった。ただ「大統領の親族と財閥オーナーは除外した」(法務省報道官)という。
大統領の特赦は、側近や財閥関係者らが対象になることが多く「権力やお金があれば罪も許されるのか」と批判が根強い。先の大統領選で朴氏は大統領の赦免権を制限する方針を示していた。
李大統領は29日開いた国務会議(閣議)で「政権発足時に権力を使った不正事件に赦免権は使わないという原則を発表したが、その通りに実施した」と述べた。