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英経済「リーマン前」超す 4~6月GDP、6年ぶり水準

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【ロンドン=小滝麻理子】先進国のなかで英経済の好調ぶりが顕著になってきた。英政府統計局が25日発表した2014年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.8%増(年率3.2%増)となり、規模でリーマン危機前のピークを超えた。消費の伸びに加え、法人税率下げの効果などで自動車を中心に国内製造業が活性化。英中央銀行イングランド銀行は各国に先駆けた利上げに向けて地ならしを始めている。

4~6月期の実質GDPは3935億ポンド(約68兆円)で、6四半期連続で拡大。約6年かかったが、危機前のピークである08年1~3月期の規模を0.2%上回った。

国際通貨基金(IMF)は24日、英国の14年の経済成長率を従来予想から0.4ポイント引き上げ、3.2%に上方修正した。米国、ドイツを大きく上回り、主要7カ国(G7)でも突出する。

好景気の要因の一つは個人消費だ。4~6月期の英国の小売り売り上げは前期比1.6%上昇し、この10年で最高水準にある。株価上昇で消費者マインドの改善が続いており、海外からの旅行者などの消費意欲も堅調だ。

法人減税が奏功

英製造業の復調も経済のエンジン役となっている。英製造業購買担当者景気指数(PMI)は急ピッチで改善し、昨年11月以来の高水準にある。

特に好調なのが自動車産業だ。英ポンドが対ドルで6年ぶりの高値圏にあるにもかかわらず、14年上半期の輸出台数は前年同期比4%増え、年間の生産台数は10年ぶりの記録となる160万台に達する見通しだ。

英政府は国内への企業投資を誘致する目的で10年に28%だった法人実効税率を14年には21%に引き下げたほか、研究開発などでも優遇税制を導入。こうした施策がじわりと効き、それまで中国など新興国へ製造拠点を移していた国内外のメーカーが英国に回帰・進出している。英ジャガー・ランドローバー、独BMW、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車などが高級車や欧州の拠点として製造する。

製造業のGDP全体への寄与度はまだ大きくないが、これまでの個人消費頼みのいびつな経済成長から「バランスがとれてきた」(IHSグローバル・インサイトチーフエコノミストのハワード・アーチャー氏)と評価する声が出る。

英中銀は金融危機後の09年以降、政策金利を過去最低の0.5%に据え置くが、経済好転を踏まえ、利上げのシグナルをよりはっきりと市場に送り始めた。これまで15年前半と見られていた利上げ時期について、カーニー総裁は6月中旬、「市場が現在予想している時期より早いかもしれない」と発言。23日に公表された7月の金融政策委員会の議事録も「利上げが景気拡大を妨げるリスクは減っている」と指摘した。市場では現在の経済情勢が続けば、年内に利上げに踏み切るとの見方もある。

不動産は過熱

ただ、好景気の持続性には疑問府もつく。最大の懸念材料は不動産の価格の高騰だ。金融緩和をきっかけに、世界の機関投資家や富裕層マネーが流れ込み、ロンドンを中心に住宅・オフィスとも価格は急騰している。

英中銀は銀行に対して、新規の住宅ローンに上限をもうけるよう求める新規制を導入したが、景気の腰を折らずに、バブルをどこまで封じ込められるかは不透明だ。

失業率が低下する一方で、賃金が上がらない状況も改善していない。貯蓄を取り崩して消費に回している状態で、生産性が向上しないままでは、消費が失速する恐れもある。来年5月に総選挙を控えるなか、好景気を維持し、恩恵を裾野までいかに広げるかがキャメロン政権にとっても重要になってきそうだ。

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