豪、6年ぶり政権交代 EPA締結に弾みも
保守連合、過半数獲得で圧勝
【シドニー=高橋香織】7日に投開票されたオーストラリアの総選挙は野党・保守連合(自由党と国民党)が下院(150議席)の過半数を獲得して圧勝し、6年ぶりの政権交代が実現する。次期首相に就任する自由党のアボット党首は法人税減税やインフラ整備を進め、豪経済の再生を目指す。日豪経済連携協定(EPA)の締結にも弾みがつく可能性がある。
豪州の主要メディアが7日夜、出口調査などから保守連合が大差で圧勝する見通しと一斉に報じた。与党労働党のラッド首相は敗北宣言した。
オーストラリア放送協会(ABC)の予測によると、保守連合の最終的な獲得議席数は改選前の72議席を大幅に上回る87議席となる見込み。労働党は71議席から59議席に減る見通しだ。
アボット党首は週内にも第28代首相に就任し、直ちに組閣に着手する。同党首は、過去6年の労働党政権で財政赤字が拡大したと強調。堅実な経済運営に努め、規制緩和で資源産業をてこ入れすると訴え、支持を得た。
豪経済は1991年に景気後退を脱して以来、22年間、経済成長を持続してきた。ただ2013年4~6月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比2.6%増と、前年同期の同3.6%増から減速。13年度(7月~14年6月)の実質成長率は2.5%にとどまると予想されている。新政権の当面の課題は資源頼みの経済からの脱却となる。
保守連合は労働党政権が導入した炭素税と鉱物資源利用税の撤廃を公約に掲げている。豪州で資源・エネルギー産業に携わる日本企業などにとって、負担軽減につながる。20年までに温暖化ガス排出量を5%削減する従来の目標達成にはこだわらない姿勢だ。法人税率も引き下げる方針で、企業活動の活性化を目指す。
「インフラ首相と呼ばれたい」。アボット党首は選挙戦でこう繰り返した。資源ブームが終息するなか「多様で強い経済の構築」が課題と指摘。広い国土を効率的に結ぶインフラ建設の15年計画を立案し、成長戦略の柱とする方針だ。国内産業の競争性を高め、物価高の緩和にもつなげる。
東部クイーンズランド州の高速道路改修(67億豪ドル、約6000億円)など、道路建設に今後4年で204億豪ドルを投じる。アボット氏は建設に時間を要する鉄道ではなく、道路を優先すると言明した。労働党が選挙戦の終盤に打ち出したブリスベーン―メルボルン間の高速鉄道計画の実現は遠のき、日本の新幹線を売り込む構想は見直しを迫られそうだ。
アボット氏は首相就任後の最初の訪問先候補にインドネシアを挙げている。このほか早期に中国や日本、韓国を訪問する意向を示している。ハワード保守連合時代の07年に始まった日豪経済連携協定交渉の早期妥結を最優先課題と位置付けている。