伊総選挙、安定政権の確立困難に 上院で過半数なし
【ローマ=原克彦】イタリア総選挙は25日午後10時(日本時間26日午前6時)までの開票作業の結果、安定政権を確立できる政党連合が出ない見通しになった。下院は改革継続派の中道左派連合が議席の過半数を獲得したが、下院とほぼ同等の権限を持つ上院で議席が各陣営に拡散した。首相決定を巡り政治が混迷するのは必至で、再選挙が必要になる可能性も出てきた。
イタリアの総選挙は欧州債務危機後で初めてで、財政再建などに取り組んだモンティ首相の改革を継続するかどうかが最大の焦点になった。改革継続を求める金融市場では財政再建が後退するとの不安からイタリア国債が売られるなど、欧州債務危機が再燃する懸念もある。
地元メディアによると下院の得票率(開票率94.6%)は民主党など中道左派が29.6%で、ベルルスコーニ前首相が率いる中道右派の28.7%を上回っている。下院は得票率で1位の政党連合に54%の議席を与える仕組みで、中道左派は全630議席のうち340議席を獲得する。
一方、上院は州ごとに1位の政党連合に議席の55%を与える。中道左派はミラノを擁するロンバルディア州やシチリア州など議席数の多い州で中道右派連合に敗れたのが響き、議席数は105前後と終身議員を除く全315議席の過半数を大きく下回る見通し。中道右派は110議席を超える勢いだ。
中道左派は上院で過半数を確保できなければ、安定政権の確立に向け同じ改革推進派のモンティ首相の政党連合と連立を組むとみられていた。しかし、モンティ連合は国民の増税への不満などから苦戦。上院の議席は20前後にとどまる見通しで、左派と組んでも過半数には届かない。
コメディアン出身のグリッロ氏が率いる新党「五つ星運動」は下院で25%、上院でも24%の票を獲得。緊縮政策や既存政党の汚職を最も強く批判し、政治に不満を抱える若者を中心に支持を集めた。
下院で勝利した中道左派が安定政権を確立するにはモンティ連合に加えて中道右派を巻き込んで大連立に持ち込む必要がある。五つ星運動はこれまで、既存政党との連立は組まない姿勢を鮮明にしている。
今後は首相の指名権を持つナポリターノ大統領が各政党と協議して政権の発足を働き掛ける見通し。ただ、上院で折り合いがつかなければ、再選挙が必要になる可能性もある。