ユーロ圏、13年はマイナス0.3%成長予測
回復遅れ下方修正
【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会は22日、域内の経済見通しを発表した。ユーロ圏の2013年通年の実質成長率はマイナス0.3%と予想し、昨年11月時点から0.4ポイント下方修正した。欧州委は年内に景気が上向きに転じるシナリオを描くが、高止まりする失業率、くすぶる債務危機、通貨ユーロ高の3つの足かせが残る。欧州景気の基盤は依然として脆弱だ。
ユーロ圏の実質成長率の12年実績はマイナス0.5%(EU統計局の速報値)だった。下方修正は、ドイツやフランスで12年後半に設備投資や輸出が不振だったことを引きずるためだ。13年は2年連続のマイナス成長となる公算が大きい。
「現在まさに底に達している」。欧州委は現在の景気情勢をこう表現した。ユーロ圏の13年中の成長率を四半期別にみると、1~3月期は前期比でゼロ成長を予想。年後半には小幅なプラス成長に転じるとのシナリオを示した。
しかし、欧州景気には雇用情勢の悪化が重くのしかかる。ユーロ圏の失業率は昨年末時点で11.7%と、1999年のユーロ導入以来の最悪水準にある。欧州委は13年通年で12.2%、14年も12.1%と予想し、現状より高い水準にとどまる。
雇用や賃金に不安を抱く家計は消費を抑制し、ユーロ圏の内需は13年も前年比で1%近く減少する見通しだ。EUは若年雇用対策などを打ち出しているが、現時点で大きな成果を上げていない。
仏政府などは企業のリストラ策に介入し、人員削減策を撤回させようと必死だ。世界鉄鋼最大手アルセロール・ミタルはフランスとベルギーの工場の一部閉鎖を発表したが、関係国政府や欧州委の圧力で計画の修正に追い込まれた。それでもベルギーの地方政府は「十分でない」と主張する。
確かに、企業の人員削減を撤回させれば、失業率の上昇を一時的には食い止められる。しかし、企業の業績回復が遅れれば新規雇用の機会が失われ、失業率が高止まりする悪循環が続いてしまう。
債務危機の火種も残る。市場参加者はイタリアで24~25日に行われる総選挙を注視。モンティ現首相が主導してきた改革路線が継続され、危機の拡大に歯止めがかかるかが焦点となる。欧州委のレーン副委員長(経済・通貨担当)は「イタリア国民だけでなく、残りのユーロ圏にとっても重要だ」と指摘する。
欧州議会のシュルツ議長は、改革路線の修正を主張する中道右派のベルルスコーニ前首相を「イタリアを沈滞させた」と批判。選挙の結果次第では南欧国債が再び売り圧力に直面しかねない。
フランスの債務問題への懸念も浮上する。エロー仏首相は13年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑える目標を達成できないとの見通しを示している。