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新手ネット通販「BASE」急拡大 誰でも店主に

3週間で約6000店舗を集めたモール

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 「無料で誰でも30秒でネットショップを作ることができます」。新手のネット通販モール「BASE」が店舗数を急拡大させている。11月下旬のサービス開始から2週間で登録店舗数が5000を突破、17日現在で約6000に増えた。好調なことから18日には法人化と事業の本格化を発表し、来年3月までに1万店舗、初年度の流通総額1億円を目標とする。個人でも簡単に店主に。突如現れた新手のネット通販の可能性と課題とは。

「ネットショップの作成が、今までで一番簡単に。多彩なデザインテンプレートと決済方法も。しかも無料」――。

BASEにアクセスすると、トップページにこんな文言が並び、その横にショップのURL、メールアドレス、パスワードの記入欄が置かれている。記入して「新しくショップを開く」ボタンを押すと、いきなり「商品追加」ページに。まるでSNSサイトの会員になるかのような感覚だ。

ほかにも、ショップのデザインを変更する「ショップ編集」、売り上げやページビュー、未発送商品を管理する「データ管理」といった管理項目がある。クレジットカード決済は3.6%と40円の決済手数料をとられるが、それ以外の決済、システム利用料などは全部タダ。「ヤフーオークション」よりも手軽に安く販売できるとあって、店舗数は2週間で5000を超え、販売されている商品の総額(売上総額ではない)は1億円を超えた。

「生産者の思いや顔を前面に」

この新手のサービスを仕掛けるのは、矢継ぎ早に新手のネットサービスを企画・投入しているプロジェクト「liverty(リバティー)」。今年5月、リバティーが手がけた学費支援サイト「studygift(スタディギフト)」が"炎上"し、サイト閉鎖を余儀なくされた、といえばお分かりになるだろうか……。それだけに「不安」もあるが、可能性は感じさせる。

居並ぶ店舗、商品はじつに千差万別。リアルに実在するセレクトショップからパソコン「Mac」を彩るデザインシールを売る個人、果ては「ふんどし」を入れる木製の枡(ます)だけを売る日本ふんどし協会まで、よくいえばバラエティーに富んでいる。

中には、作り手の思いが伝わってくるような店舗も。「やさいものがたり」の店舗ページには、にんにく、さつまいも、みかん、とうもろこしなど、あらゆる野菜・くだものを持つ生産者の写真がずらりと表示されている。

事業主は熊本県の坂口龍也氏。もともと「子供の野菜嫌いを楽しく撲滅!」をテーマとした通販サイト「野菜物語」を九州・北海道各地の農家と組んで運営しており、BASEの店舗はその支店的な位置づけ。直販サイト以外に楽天などのモールには出店しておらず、初の支店という。

「楽天などのモールは安売りで数をさばくのが売れる条件。僕らは数がそろいにくいし、安売りもしたくはない。BASEはタダだし、作ったリバティーというグループに、昔からおもしろそうだなと興味があったこともあり、出しました」

BASEへの出店理由をこう語る坂口氏は、続ける。「もうけたいというよりは、農家の顔や思いを前面に出して、まずは見てもらいたい、知ってもらいたいという思いの方が強いです」

売り上げはまだ「数件程度」。もうけ主義ではなく、まずは商品を知ってもらうカタログとして。そんな気軽な使い方が、出店の伸びにつながっているようだ。

3週間で1000件の決済、700万円の流通

それでも、数があればそれなりの売り上げ規模にはなる。まだ生まれて3週間とまもないが、BASE全体で約1000件の決済、額にして700万円の売り上げがあった。初年度の流通総額目標が1億円なので、すでに初月の目標は満たしつつあるということになる。

ただし、システム利用料はタダ。クレジットカードの決済手数料も現状は決済代行会社にそのまま納める形で、BASEが得るわけではない。どうやって運営していくのか。BASEをリバティーで企画し、18日に設立発表する新会社の社長にも就任する鶴岡裕太氏は、こう話す。

「いまは正直、1円ももうかってない。ユーザーが増えるほど、システム投資がかさむので逆ざやになる状況。ゆくゆくは、流通総額が増えるほど決済代行会社に支払う手数料も下がっていくので、その浮いた分を収益源としていきたい。店舗向けの有料機能の導入なども考えていますが、まずは店舗と利用者を増やすことが先決。半年、1年は今のままでいきます」

「手紙を書きます」が250円

動き出した新手のBASE。本気なのか。ギャグではないのか。ちょっと不安になってしまう商品もある。

例えば「手紙屋」の商品説明には「この商品を購入すると、1週間くらいであなたのもとに手紙が届きます。手紙には、わりと好き勝手なことが書いてあります。でも読み終わるころには、『ふふん』と悪くない気持ちになります。そんなささいなプレゼントです。ぜひ」とある。これは1通250円で販売されている。

「歌人の枡野浩一があなたの名前を詠み込んだ短歌(57577)をつくります」とうたわれているのは、57577という店舗。価格も5757円と徹底している。

こうした変わり種商品についてBASE社長に就く鶴岡氏はいう。「単なる物販ではなくて、新しいウェブサービスのようなものを模索する流れは、僕は悪いことだとは思っていません」。何が商売に、何がお金になるか分からない。BASEは、そんなちょっとしたサービスの観測気球をあげるインフラにもなりつつあるということだろうか。

クレジットカード決済はある程度、安全性を担保

とはいえ、利用者(購入者)としては、本当に商品が届くのか。詐欺に遭わないか。心配になる。この点について鶴岡氏は、こう説明する。

「代引きと銀行振り込みについては確かに課題です。現状、店舗とお客さん間の取引に任せているので、そこは何かできないか、検討していく。クレジットカード決済については、配送したかどうかのステータスを確認したうえで、決済から1カ月後をメドに、店舗に売り上げ分を振り込むことにしているので、現状でもある程度、僕らが安全性を担保できる」

もともとプロジェクトベースで動いているリバティーのサービスが法人化を決めたのも、法人として信頼性を担保するため。産声をあげたばかりで危うい側面も散見されるが、新しい何かが期待できるサービスでもある。

(電子報道部 井上理)

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