低栄養や骨粗しょう症も 増える「ネット依存症」
日経ヘルス
依存症患者向けのデイサービスも登場
「ネットの過剰使用のために健康問題や社会問題が明確に出ている場合にはネット依存症の治療が必要。早めに専門家に相談してほしい」と話すのは国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長。
2011年7月に日本初のネット依存治療専門外来を開設し、新規患者数は2012年末までで121人(10~80代)。その6割は未成年者という。深刻なケースも多いため、当初週1回だった専門外来は週2回に拡充し、治療の一環としてネット依存症患者のためのデイサービス(ネットから離れる時間を作る目的で実施)や入院治療も行っている。
依存の対象はオンラインゲームに限らず、ブログ、ソーシャルネットワーキングサービスなどさまざま。中には、スマートフォン(スマホ)で、ネット上の動画を10時間以上見続けているだけの患者もいるという。
「深刻なのは、ネットを長時間やり続けるために食事がおろそかになって低栄養になる、動かないから10代でも筋力低下や骨粗しょう症が起こる、などの人が少なくないこと。ネットに没頭するあまり、昼夜逆転して学業や仕事に支障をきたし、抑うつ状態になっている人も多い」と樋口院長は指摘する。
診断時にはネット依存度テスト、血液検査、体力測定、骨密度検査、脳のMRI検査、心理テストといった検査で、身体的、精神的な影響も総合的に評価する。
ネット依存症の多くは、本人が依存症であることに気づいていない。そのため治療は、患者本人が依存度を自覚することから始まる。医師と臨床心理士などによるカウンセリングや診療と並行して、毎日自分の行動を記録していくうち、いかにネット漬けの生活をしていたか気づく人も多いそうだ。
「ネット依存症には子供から大人まで誰でもなり得る。スマホやアイパッドなど小型機器の普及でいつでもネットとつながれる環境が整い、今後さらに依存症が増える可能性が高い」と樋口院長。まずは右のネット依存度をチェックし、「6つの心得」を参考に予防を心がけたい。
~自分と家族のネット依存を予防する6つの心得~
2.ネットの使用は時間を決めて最小限に
3.ネット以外に熱中できるものや人生の目標を見つけておく
4.もしや?と思ったら、すぐに専門家に相談。早期発見、早期治療が重症化を防ぐ
5.オンライン機器の購入やネットの使用時間の長さを、成績アップなど子供との取り引きの材料にしない
6.子供がネットの使用制限に反抗しても、毅然とした態度で臨み、ネット依存の怖さをきちんと伝えておく
(樋口院長の取材をもとに編集部作成)
この人に聞きました
国立病院機構久里浜医療センター院長。1979年東北大学医学部卒。米国立保健研究所留学、国立療養所久里浜病院臨床研究部長などを経て現職。アルコールパッチテストの考案者。
(ライター 福島安紀)
[日経ヘルス2013年4月号の記事を基に再構成]
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