ネットバンキング不正送金被害11.8億円 1~11月、最悪時の4倍
インターネットバンキング利用者のIDとパスワードが盗まれ、預金が別の口座に不正送金される被害が今年1~11月に1125件、約11億8400万円に上ったことが12日、警察庁のまとめで分かった。被害額は過去最悪の約3億円だった2011年の約4倍。引き出した現金をロシアなど海外にサービス業者を利用して送金する手口も初確認され、同庁は注意を呼び掛けている。
被害者は全国のメガバンク、地銀、ネット銀の25行の利用者で、居住地域は鳥取県を除く46都道府県に及んでいる。
1~5月まで20~30件程度で推移していた被害は、6月に111件と急増。ほぼ同時期に、不正に引き出した現金を海外送金サービス業者を使って送金する事例が目立ち始めた。
同サービスは銀行以外の事業者が手がける。手数料は銀行より安く、現金授受のチェックは銀行ほど厳しくないという。
送金先で多いのは、ウクライナ239件、ロシア134件、モルドバ19件、トルコ17件。この4カ国への送金について警察庁が業者側に注意喚起すると、フランス(13件)やポーランド(8件)など欧州諸国への不正送金事例も出始めた。不正に引き出された現金のうち海外送金サービスで海外に送られた額は約2億6000万円に上った。
利用者がウイルスが仕込まれたメールを開き、パソコンなどが感染してIDやパスワードが抜き取られる手口が多かった。11月、偽の銀行サイトにメールから誘導してパスワードなどを入力させて情報を盗み取る「フィッシング」と呼ばれる手口が28件発生。フィッシングは昨年と一昨年に頻発したが、今年は11月に初めて確認された。
警察庁は「銀行をかたってIDやパスワードを入力させるようなメールやサイトに十分注意してほしい」と強調。各銀行は取引ごとにパスワードを発行する「ワンタイムパスワード」など対策を始めており、同庁は「こうしたサービスを利用してほしい」としている。
全国の警察は今年、ネットバンキング不正送金に絡み、現金の受け取りや口座の不正譲渡などで31事件、60人を摘発しているが、全容解明には至っていない。
警察庁によると、利用者が被害に遭ったのは、ゆうちょ、みずほ、楽天、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、シティバンク、住信SBIネット、セブン、ジャパンネット、新生、イオン、北洋、八十二、南都、埼玉りそな、十六、大垣共立、千葉、第三、西日本シティ、もみじ、常陽、肥後、横浜の25銀行。