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東大も注目「バカロレア」 グローバル人材育成の現場

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訂正11月1日6時30分に掲載した「東大も注目『バカロレア』 グローバル人材育成の現場」の記事中、「卒業試験は44点満点」とあったのは「卒業試験は45点満点」の誤りでした。
 我が子をグローバル人材に育てたい。こう考える親は多いだろう。では、グローバル人材は、どうすれば育つのか――。その答えの一つとして文部科学省が推進するのが、スイス生まれの「国際バカロレア(IB)」と呼ぶ教育プログラムだ。安倍政権は「日本再興戦略 JAPAN is BACK」のなかでIBの普及を掲げる。生涯を通して新しいことを学び、挑戦する人材を育てるというIBの現場を、ビデオカメラと共に追った。

「(豪州の)アボットポイント港を拡張すべきか」。東京都町田市にある私立・玉川学園のIBクラス。「環境システムと社会」の授業で11年生(高校2年生に相当)の生徒10人が「賛成」「反対」に分かれて英語で議論していた。賛成派は拡張した際の豪州経済への経済効果を示す一方、反対派は近くにある世界有数のサンゴ礁地帯「グレート・バリア・リーフ」への悪影響を訴えた。生徒たちは現地の報道などをインターネットで調べ、英語のプレゼン資料もまとめた。全生徒が英語を流ちょうに話すわけではない。英語はつたなくとも、自分の意見を堂々と語る生徒の姿が印象的だった。

なぜ、町田市内の高校でアボットポイント港なのか。当初、記者が感じた疑問は授業が進むにつれて氷解した。お題は豪州のローカルニュースだが、議論している内容はどこの国や地域でも起こりうるテーマなのだ。説得力を高めるには経済や科学、地理、歴史といった幅広い知識が欠かせない。中教審委員を務める浦野光人ニチレイ相談役は「様々な知識を動員して自分自身の答えを導き出す技能はビジネスパーソンとしてグローバルに活躍する必須条件だ」とIB教育に賛同する。

IBは1968年、スイスにある国際機関で働く人たちの子弟らの教育を念頭に始まった。大学入試制度は国によって異なる。彼らが母国に戻っても円滑に進学できるよう、世界どこでも通用する統一資格をつくることが目的だった。当時の世界は東西冷戦のまっただ中。「多文化理解を通じ平和でより良い世界のために貢献する若者を育てる」をIBの理念として掲げたこともうなずける。

IBには小中高校それぞれに対応した「PYP」「MYP」「DP」の各プログラムがある。高校生レベルのDPで生徒は6科目を履修。卒業論文もあり、ボランティアなど課外活動も評価の対象となる。卒業試験は45点満点で24点以上が合格、世界的な平均点は30点前後という。英国の大学はDPの成績を入試に積極活用、ケンブリッジ大やオックスフォード大の合格ラインは40点だ。また、スタンフォード大やエール大など米国の著名大学ではDP修了生の合格率が平均を2倍程度上回る。

文科省は日本再興戦略の閣議決定を受け、DP導入校を18年までに現在の10倍にあたる200校まで増やす計画。「各地の公立高校にも導入を呼びかける」(永井雅規・国際協力企画室長)。IBの"公用語"は英語、フランス語、スペイン語の3言語だが、16年には日本語が仲間入りする。言葉の壁が取り払われることで、IB熱が高まる可能性がある。こうした流れを受け、入試にDPの成績を活用する大学が増えている。筑波大は医学部を含む全学部で「国際バカロレア特別入試」を実施、東大も推薦入試で活用する。慶大や上智大など私立大もDP修了生の受け入れ態勢の整備に力を入れている。

IB校の勉強量は半端ではない。取材で密着した玉川学園IBコース8年生(中学2年生に相当)の岡崎アミさんは学校の課題だけで毎日3~4時間を費やす。チームワークやリーダーシップを身につけるため、クラスメートと協力しながらこなす課題も多い。自宅でインターネット電話スカイプ」を使い議論することもあるという。「What do you think? (あなたはどう思うの)」と絶えず突っ込む先生たちに当初は戸惑ったが、今では「自分から発信しないと相手に伝わらないことが分かった」。

「自ら課題を発見し、その答えを探求するIB教育は、知識詰め込み型の日本の教育を変える黒船だ」と、国際バカロレア機構アジア太平洋地区の坪谷ニュウエル郁子・理事は力説する。IBにおける先生は、生徒に気づきを与える良きメンターであることが求められる。教科書の知識を授けるという上から目線では立ちゆかない。IBを日本で普及、成功させるには、生徒以上に学び続ける先生の育成が必要だ。

(映像報道部 中野圭介)

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