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残業減らない要因、「非効率な会議や資料作成」3割

第293回 編集委員 木村恭子

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電子版の読者の皆さんに残業時間の長さを1年前と比較していただいたところ、「変わらない」との答えが半数を占めました。また、残業時間が減らない要因に関しては「非効率的な会議や資料作成が多い」との答えが約3割に上り最多でした。

 ◇

1年前と比べて残業時間が「変わらない」と答えた読者(50.3%)の内訳は、残業が「減っていて変わらない」人と「増えていて変わらない」人とに分かれました。

すでに残業が減っている読者の「7年前から完全に残業を原則禁止、生産性が3割以上あがった。土日の出勤も役員以外は禁止にしている」(53歳、男性)といったコメントを読むと、会社が一体となって残業時間の削減に取り組んでいる姿勢が伝わってきます。

一方、「そもそも残業が多いので変わらない」(62歳、男性)といった状況下にいる読者に関しては、「管理職が早朝深夜残業・休日出勤をやめようとしない。当然、部下にも同じプレッシャーをかけている」(44歳、女性)との訴えもありました。

長時間労働を是正するには、会社のトップを含めた管理職の役割が大きいといえるでしょう。

残業時間が「変わらない」内情で正反対の方向性を象徴するかのように、残業時間が「減った」と答えた読者(25.1%)と「増えた」と回答した人(24.7%)とが拮抗しました。

まずは、「減った」読者のコメントを紹介します。長時間労働を改善しない、もしくはできない会社を見限り、新天地を求めた人が少なくありませんでした。

「残業の少ない会社に転職した。毎日3時間早く帰れるようになった」(51歳、女性)

「サラリーマンを辞めて、起業したら減りました」(49歳、女性)

「海外」では働き方を改善できる機会が多いようです。

「ドイツに赴任し残業減。規定時間超の労働は直属上司が減給」(38歳、女性)

ただ、日本の企業でも仕事の効率化を積極的に推進している様子がうかがえるコメントもありました。

「会社全体に効率的なレベルの高い仕事をしようという空気ができつつある。事務手続きの省力化や、会議のペーパーレス化、細かいことまで含めるといろんな取り組みが進んでいる」(33歳、男性)

「仕事量は変わらないかむしろ増えたが、始業時刻前など、他に邪魔されず自分のタスクに集中できる時間を利用して効率的に仕事を行っている。昔は月100時間近いのはざらだったが、今は30時間程度まで減った」(37歳、男性)

ただ、中には「オフィスにずっといなくてもいいという空気が浸透してきた感はある。残業代は出ないわけだし……。一方でスマートフォン(スマホ)があるので、いつでもどこでも仕事の連絡は追いかけてくる」(41歳、女性)と、会社内に残っての残業ではなく、会社外での「残業的な時間」の存在も浮き彫りになりました。

この社外残業に関する声は、残業時間が「増えた」と回答した読者から特に多く寄せられました。

回答者の内訳
回答総数1797
男性89%
女性11%
20代7%
30代16%
40代29%
50代27%
60代15%
70代5%
80代以上1%

「表向きは残業時間と手当の削減になっているが、手当なしの管理職登用増、裁量労働制(時間無制限で手当固定)の選択化で実態は逆に表に出ない残業時間が増加傾向にある」(64歳、男性)

これでは「残業減らしてヤミ残業が増える」とでもいいましょうか。この逆効果は、賃金の面でも影響があるようです。

「(残業の)上限規制によって、実績に表れないサービス残業が増え、年収が100万円減少した」(47歳、男性)

「基本給が8万以上減ったので残業代でカバーせざるをえない」(56歳、男性)

また、人員削減も残業が増える要因になっています。

「人が減り仕事が増えた。団塊世代の延長雇用が終了し大量退職した後は顕著」(47歳、男性)

育児休暇や介護休暇の制度が充実してきていることに伴う弊害も。

「育児や介護等で、時間制限のある配下社員が増えたため、その分の仕事のやりくりやカバーが必要になった」(47歳、女性)

長時間労働が健康面を含め問題であることは今や共通認識ではありますが、その是正については対応が途上にあるせいか、いろいろな矛盾や問題点もあるようです。

ある読者(49歳、男性)は「精神論的な残業削減をうたうばかりで業務全体の見直しを行わないとかえって管理のための時間が増加してくる」として、同じ業務量で仕事時間だけを減らすことへの弊害を指摘しています。

また、グローバル化に伴う問題として「海外との仕事が増え、帰宅しても、海外との電話会議があるので、睡眠時間が減った」(54歳、女性)との意見もありました。

先ほど、海外赴任で残業が少なくなった読者の声を取り上げましたが、海外での例として、次のような異なる意見もあったことも紹介します。

「年収が高い大手企業の社員は、見合った成果を出すのが当然だから、残業論議の対象にしてはいけない。欧米も、エグゼクティブの働き方はがむしゃら。年収が低い層に限定して論議を」(54歳、男性)

 ◇

「古くて新しい問題」といえる長時間労働の是正ですが、日本で残業が減らないもっとも大きな要因について、電子版の読者にお聞きしたところ「非効率的な会議や資料作成が多い」が最も多く、31.6%を占めました。

「『もし、上司から質問された困る』という類の作成がやたらと多い」(47歳、男性)

「作成するもののあまりつかわれない資料や結論のでない会議はそれぞれ無駄なのにやめると不安なのかなかなかやめられない」(44歳、男性)

次に「仕事がこなせる量を超えている」(24.8%)ことが原因として挙がりました。

残業しないでも対応可能な仕事量でおさまらない理由について、様々な意見が寄せられました。まずは設問1にも人員削減によって結果的に残業時間が増えたという声があったように、「人が足りない」(47歳、女性)こと。

また、「できる人に仕事が集中する」(67歳、男性)ことや「能力がない人、仕事を断って遊んでいてもクビにならない人の分、断らないできる人に過重労働がかかる」(49歳、女性)など、仕事が偏重していることを挙げる読者もいました。

IT(情報技術)の進化は仕事の軽減に向かうと思いきや、逆効果になっている例も。

「社長や上長が24時間365日メールでやり取りをしている。部下を動かしてでも、それらのメールに素早く反応することが評価されるために残業も増える」(49歳、女性)

残業が減らない要因として3番目に多かったのは、「残業が奨励される風土がある」(22.9%)でした。

「遅くまで残っている=頑張っているととらえている管理職が多い」(39歳、男性)

「上司が自分と一緒に残業してくれる部下を重用してきた」(26歳、男性)

中には「上司が仕事をしているので帰りづらい雰囲気がある」(44歳、女性)といった声もありました。

その他の理由としては「家族持ち平サラリーマンは残業手当が無いと生活できないですよ」(48歳、男性)として、「残業代で手取りを増やしたい」(12.7%)が続きました。

残業代を含めた金額で生活を成り立たせている人も多いなか、残業時間減による残業代の削減は「賃下げ」ととらえる考え方もあります。長時間労働の是正のためには、「残業代込み」での給与の考え方を労使ともに見直す必要もあるといえましょう。

また、ユニークだったのは「帰宅しても居心地が悪い」(2.0%)と答えた読者からのコメントでした。

「家に夫の個室がない。個室がないと家に帰っても何もできないから職場に居座る。そういう人間が上司になると部下も帰れない」(63歳、男性)

上司の家庭事情が部下の残業時間にも影響を及ぼしかねない状況です。

長い間、残業を減らすべきだとする動きがありながらも減らなかったことへの改善策として「マイナス評価になったら、みんな必死に早く切り上げますよ」(54歳、男性)と、ペナルティーを科す提案もありました。

また、発想の転換で、現状のままでやみくもに残業時間を減らすのではなく、休日の取り方を変えることを提唱する読者もいました。

「祝日が多すぎる。強制的に休まざるをえない日が多く、1日当たりの仕事量がどうしても増えてしまう。英米のように、祝日を減らして有休を利用して休む日を分散すれば、仕事もほかの人と効率的に共有できる」(36歳、男性)

政府は残業時間に厳格な上限を設ける方針です。皆さんからの意見では、時間数の調整だけでは、なかなか問題が解決しないばかりか、新たな問題も出てきかねない切実な状況が浮き彫りになっているといえます。

他国と比べて低いといわれる日本の労働生産性を上げるために、必要な政策を総動員してほしいですね。

 ◇

今回の調査(15~18日)にご協力いただいた読者の皆さんによる安倍内閣の支持率は62.0%となり、前回調査の54.2%から7.8ポイント上昇しました。

今回のテーマに関する皆さんからの意見を紹介します。

まずは、安倍内閣を支持する読者から。

「人材の流動性を増加させたほうがよい。再就職が容易になれば、ブラック企業を辞めやすくなる」(48歳、男性)

「一部の女性管理職を輩出するための数字づくりのみならず、経験豊富な一般職の活用・処遇底上げにも目を向けてください」(44歳、女性)

「『働き方改革』は、本来は民進党が率先して取り組むべきこと。正社員主体の労働組合の意向におもねる民進党は社会的弱者に寄り添う視点が希薄であることが、そのまま党勢に反映されていると思う」(47歳、男性)

一方、「支持しない」読者からは「ヤミ残業」や「隠れ残業」に関する意見が寄せられました。

「日本で最も問題なのは、残業としてカウントされない事実上の残業。これが非常に多い。過労死の根本原因はそうした隠れ残業にある」(51歳、男性)

20日の日本経済新聞朝刊「視点・焦点」面では、長時間労働に関する特集を組んでいます。併せてお読みください。

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