セールスフォースがツイッター買収から撤退
米顧客情報管理(CRM)大手セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)が「しっくりこなかった」として米ツイッターの買収交渉から手を引いた。そのため、ツイッターの買収に関心を示す企業は1社もなくなった。
企業向けサービスと相性イマイチ?
ベニオフ氏は英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)とのインタビューで、セールスフォースによるツイッターの買収観測に終止符を打った。法人向け事業を展開するセールスフォースにとってはメリットがないとの見方が大勢を占めていた。同氏は(4~7日に開催された)セールスフォースのイベント「ドリームフォース」での基調講演に先立ち、米CNBCテレビのインタビュー番組に出演。司会のジム・クラマー氏にツイッターの買収について聞かれると、明言を避けつつも「ツイッターに関しては、まずは何にでも目を向けてみるということだ」と述べた。
セールスフォースのCEOがツイッターを買収しない方針を公の場で明らかにしたのはこれが初めてだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は10月初め、ツイッターの取締役会が買い手候補と直接協議に入ると報じた。買い手候補として取り沙汰されたのは、米グーグル、米ウォルト・ディズニー、そしてもちろんセールスフォースだ。だがその後、各社はツイッターの買収にはもはや関心がないと表明している。
セールスフォースによるツイッターの買収が実現すれば、大型投資になっただろう。同社は最近、企業向けクラウドのデマンドウェアを28億ドル、文書処理のクイップを5億8200万ドル、データ管理を手掛けるクラックスを5億3460万ドル、データ分析ベンチャーのビヨンドコアを1億1000万ドル、そしてセールスフォースの人工知能(AI)事業の推進に大きな役割を果たしたメタマインドを3280万ドルでそれぞれ取得するなど、注目の買収を次々と成立させてきた。
ベニオフ氏がツイッターを欲しがったとされるのは、ビジネス向け交流サイト(SNS)大手の米リンクトインの買収で米マイクロソフトに敗れたのが理由かもしれない。もっとも、ツイッターの買収をなぜ見送ったのかというFTの質問に対し、このカリスマCEOは「価格や企業文化、全てを考慮した上での判断だ」と語った。
そして誰もいなくなった
ツイッターは業績が低迷し、自力で改善できそうにないため、株主からの圧力が強まっている。15年のジャック・ドーシーCEOの復帰は、かつての栄光を取り戻す取り組みだと歓迎された。ドーシー氏は「ライブモーメント(今起きていること)」に力を入れており、ツイッターは10年間この分野を手掛けてきたと強調している。
ツイッターの行方については様々な見方がある。ドーシー氏の前任者のディック・コストロ氏は最近、ツイッターは「成功した独立企業になると思う」と期待を示した。一方、初期の投資家のクリス・サッカ氏はツイッター株の売却に動いていることを明かした上で「新鮮な人材もいないのに、今後2年でどうやって業績を大幅に改善するのか見通せない」と発言。ツイッターの共同創業者ビズ・ストーン氏はドーシー氏への支援を表明し、ツイッターは強い独立企業になるとの見通しを示した。
もっとも、まだ身売りの望みはあるようだ。14日には、ソフトバンクがツイッターの買収に関心がある可能性が報じられた。ゲームを続行させよう。
ベニオフ氏が買収を否定したとのニュースを受け、ツイッターの株価は5%以上下げた。一方、セールスフォースの株価は5%上昇した。
By Ken Yeung
(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)
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