遺伝子組み換え作物は「安全」 米科学アカデミーが報告書
【ワシントン=川合智之】米科学アカデミーは17日、遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全だと結論づける報告書をまとめた。過去20年間の約900件におよぶ研究成果をもとに包括的に評価した結果、がんや肥満、胃腸や腎臓の疾患、自閉症、アレルギーなどの増加を引き起こす証拠はないとした。
報告書によると、遺伝子組み換え作物は収量には影響しないが、害虫や雑草から収穫物を守り、農薬の削減や農家の収入向上などの効果がある。遺伝子組み換え作物と野生種の交配による危険性は確認されなかった。
日本や欧州では食品に遺伝子組み換え作物を使う際に表示義務を課しているが、報告書では「表示義務化は国民の健康を守るために正当化されるとは思われない」と指摘。ただ「製品表示には食品の安全性を超える意味がある」として、社会的、経済的に幅広く検討する必要があるとした。
遺伝子組み換え作物は遺伝子を人工的に改変し、害虫や病害への抵抗や生産量などを高めたもの。1990年代から米国などで栽培が本格化し、現在は米でつくる大豆やトウモロコシ、綿の9割超が遺伝子組み換えとなっている。消費者の「健康への影響が不透明だ」との声を踏まえ、米の一部の州でも表示義務化を法制化する動きが広がっていた。