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PCデポ炎上 世間は適法より「適切」重視

(徳力基彦)

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パソコン専門店、ピーシーデポコーポレーションの高額解約料騒動の波紋が止まらない。

この騒動はもともとは8月14日、ある男性のツイッターへの投稿から始まった。自分の父親が契約したサポートサービスの解約をPCデポに申し出たところ10万円という高額な解約料を求められた、という批判だ。

この投稿を起点にテレビの情報番組などでも多数取り上げられるほどの大きな話題になり、インターネット上でも炎上。デマ情報まで広がる事態になり、PCデポの株価は年初来高値の半額以下の水準にまで下落してしまった。

騒動の拡大の原因として、PCデポの初動対応の遅さを指摘する声もある。ただ、実際には8月16日の段階で批判の広がりに対しおわびをウェブサイトに掲載し、同17日には75歳以上の高齢者のコース変更と契約の解除を無償にするなどの対応策を発表した。

対応は早かったとは言わないまでも、問題発生数日後の対応としてはかなり踏み込んだものと言うこともできる。

では、なぜこの騒動は拡大してしまっているのか。そこにはPCデポ側の、クレームへの対応姿勢の誤解があるようだ。

今回の騒動自体については、男性の父親が認知症を発症していることもあり、詳細の経緯に対する主張がPCデポ側と男性側で食い違いもあるようだ。実際の問題の真の原因がどこにあったのかは正直、外部から簡単には結論が出せない。

ただ、一連の騒動に対するPCデポ側の対応姿勢で垣間見えるのが、自らは適法に対応しており問題は無いという強気の姿勢だ。

騒動後の双方の話し合いについて、男性とPCデポに同行訪問したライターのヨッピー氏が詳細な記事をヤフー!ニュースに掲載している。その中で印象的なのが、謝罪の場であるはずの話し合いの席で契約者本人の同行や、身分証明書の提示を強硬に求めるPCデポ側の姿勢。通常の顧客への接客や謝罪というよりは、悪意のあるクレーマーに対する対応という印象を受けてしまう。

想像するに、PCデポ側としては、法的には自社には問題はないという認識で、今回の指摘はクレーマーによる過剰な批判という印象なのかもしれない。

この一連の対応を見ていて、思い起こされるのが舛添要一・前東京都知事の騒動だ。初期のファーストクラス利用などへの問題提起に強気の反論をして火に油を注ぎ、次々に騒動が拡大。最終的に都知事辞任まで追い込まれてしまった。

舛添氏も何度も「違法ではないが一部不適切な点があった」という趣旨の発言を繰り返していたが、今回のPCデポの対応にも同じ姿勢が重なってみえる。

2つの騒動に共通するのは、騒動の本質の誤解だ。こうした問題が社会の注目を集めたときに、人々が重視するのは、実は「違法かどうか」ではなく「社会的に適切かどうか」になってきているということだ。

今回のPCデポの騒動では、社会的弱者である老人とその息子に対する姿勢が問われているのだ。騒動発覚から数日で対応方針を発表したにもかかわらず、現場で告発者をクレーマーとした扱いに終始してしまっては、せっかくの対応方針自体も疑って見られてしまう。

今はツイッターなどの交流サイト(SNS)により、一人ひとりの消費者がメディアになってしまった時代だ。

企業活動は適法であれば良いという話ではなく、1人の消費者の先に大勢の人々の厳しい監視の目があり、1人の怒りが広く伝播(でんぱ)する時代になったことを忘れてはいけない。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

〔日経MJ2016年9月2日付〕

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