バター不要 ホテルの朝食のようなパンケーキ焼くコツ
普段は市販のホットケーキミックスを使い、卵と牛乳を混ぜ、フライパンで焼いている。バターとメープルシロップをかけて、できあがり。でも一度もホットケーキミックスの箱の写真のようにきれいに焼けたことがない。どうしたらいいのだろう。
帝国ホテル(東京都千代田区)に向かった。「インペリアルパンケーキ」(1300円)が正式にメニューに登場したのは60年前。黄金色の丸いパンケーキが3枚重なり、ホイップバター、メープルシロップをたっぷりかけていただく。
厨房では専用の鉄板で焼き上げる。大和幸義シェフに聞くと、家庭用に簡略にしたレシピ(右図参照)を教えてくれた。
自宅で帝国ホテルの味を再現できるかも。わくわくしながら早速やってみる。フライパンにバターをひき生地を流す。固まってくると表面にふつふつと穴があき、次第に甘い香りが漂ってきた。期待しながら裏返してみると「あれ、焼き色が汚い」。表面がきつね色でなく、こげ茶と卵色のまだら模様になっている。
火を弱めたり強くしたりしながら4人分の分量を焼いたが、うまくいかない。形も大きさも違うため、3枚重ねると行儀の悪いパンケーキになってしまった。
実は帝国ホテルでも「きれいに焼けるようになるには3年くらい修業が必要」(大和シェフ)だという。
弱火でじっくり あせらず待って
記者の失敗はフライパンの状態が悪いためと分析。表面に余計な油が残っていると、焼き上がり時に表面がまだらになる。火力が強すぎると焦げ、逆に弱すぎると食感が硬い生地になってしまう。「鉄板を最適の状態にすることが最も難しい」(大和シェフ)
そこで家庭で焼く場合の3つのポイントを教わった。(1)フッ素樹脂加工のキズのないフライパンを使う(2)基本的にバターなどの油はひかない(3)火加減は最初は強火で熱して、一旦ぬれタオルなどで温度を下げ、生地を流してからは弱火で待つ――の3点だ。
アドバイス通りに、練習を続けた。いつもは焼く前にバターを溶かしていたが、確かにないほうが表面がつるんと仕上がる。
焼き時間は何度やっても難しい。生地を火にかけてからは極力弱火が素人にはおすすめと感じた。まだ早いかなと思うころから、生地をチラッとめくり、焦げていないかを確認する。ゆっくり、あせらず、弱火がポイントだ。練習を繰り返すうち、だんだん頃合いが分かるようになってきた。
たっぷりメープルシロップをかけたパンケーキは王道の味わい。最近は果物やホイップクリームをのせた「ハワイの朝食風」や、厚めに焼いた「ふんわり系」など個性派も増えている。次に、こうしたパンケーキも上手にできないか。
牛乳やアイス混ぜ ふっくら厚めに
「市販のホットケーキミックスでも、専門店の味に近づけますよ」と教えてくれたのは、ホテルニューオータニ(東京都千代田区)の西洋料理の太田高広副料理長。ふっくら厚めなのに、口の中でジュワッと溶ける「ニューオータニ特製パンケーキ」(1800円)を考案した人だ。
太田副料理長が家庭向けに考えてくれたレシピ(右図参照)は簡単。ホットケーキミックスに少なめの牛乳とヨーグルト、アイスクリームを混ぜ合わせる。もっちりとした生地をフライパンの上にのせ、焼く。
焼き方の基本は帝国ホテルと同じ。最初は強火で熱し、ぬれタオルで温度を下げる。今回は生地が分厚いので、極力弱火で蓋をして、中まで火が通るのを片面3分ずつ待つ。
蓋を開けると分厚く、ふんわりと焼き上がった。牛乳の量を変えるだけで、好みの厚さに調整できる。
砂糖をふるいフルーツを添えるだけで、ハワイの朝食のような印象に。アイスを上にのせると、中までしっとりとした。
基本の焼き方さえ覚えれば、シンプルな素材だけに、いろいろな材料と合わせやすい。ベーコンや卵を添えれば朝食にもなる。週末にいろいろな組み合わせを試してみたい。
東京・原宿の名物がクレープからパンケーキに代わりつつある。2010年、ハワイの人気店「エッグスンシングス」が国内1号店を開店、ブームの火付け役になった。
通勤前の時間を楽しむ「朝活のお供としてもパンケーキは人気」(スイーツ専門家の平岩理緒さん)。原宿には専門店がひしめく。休日の昼は行列必至。平日夜がおすすめだ。
(佐々木たくみ)
[日経プラスワン2013年1月12日付]