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2024年5月19日 (日)

わが身と住家の儚く徒なるさま

和田合戦女舞鶴

 若太夫襲名披露狂言です。国立劇場の建て替えで、北千住のシアター1010での上演です。初代が初演し、祖父の10代目も襲名時に取り組んだ名作です。今回からは、ABの2つのプログラムでの公演になりました。襲名披露はAプロです。若太夫さんの芸歴や芸論に関しては、呂太夫・片山剛「六代豊竹呂太夫~五感の彼方へ」(創元社)に詳しいので、ぜひお読みください。表題の作品は、我が子(市若)を源氏の直系(公暁)の身代わりにする両親(与一、板額)の苦悩がテーマです。わざと切れるように仕組んでいる兜の緒が、市若を身代わりにせよとの暗示になっています。暗示の意味を悟って、母親が、一芝居打って我が子に切腹させるという筋書きは、なかなか凝っています。そして、死に際に、母親は、一切を打ち明けて、我が子に天晴と賛辞を送り、外では父親が念仏を唱え、子は歓びのうちに絶命します。このシーンがクライマックスです。母親は、泣きながら我が子の首を切って、使者である父親に渡します。思えば、凄い夫婦です。義理を立てるために、子が犠牲になる筋は、文楽の床本ではしばしば出てきます。親の思いに応える子の健気さ、武家らしい覚悟には、一方的な犠牲者ではない、幼いながらも自立した武士の姿が籠められています。母親(板額)の人形は、桐竹勘十郎さんが務めています。若太夫さんは、襲名を契機に、更に至芸を極めてくれることでしょう。若手の太夫さんの方が、声が出るので聞き取り安くて好きだという人もいますが、陰翳ある表現の深さは、切の字をもらっている太夫さんには叶いません。

 

戸建て賃貸による差別化

 地主と家主6月号に、浜松市で、戸建て賃貸25戸を所有しているオーナーさんの紹介記事がありました。主に、ガレージ付きの戸建て賃貸を新築しているそうです。当初は、中古アパートを買い進めていたが、修繕費の増大と入居者の属性の低下に不安を感じたとのことです。この10年は、新築物件の建設に取り組んでいますが、駅周辺の新築戸建ての供給が少ないことに目を付けて、戸建てに特化した戦略にシフトして行ったと言います。オーナーさんによれば、戸建てはクルーザー戦略だそうで、同じエリアのRCマンションと同程度の家賃が設定できている上に、将来の建て替えにも対応しやすいメリットがあります。他人と同じことをしていれば、レッドオーシャンで空室を埋める競争に苦労しますので、このオーナーさんは、うまく独自の路線で、そのリスクを避けています。頭の良いやり方だと感じます。今後も、時代の先を読みながら、柔軟に経営判断をしていくそうです。

 

老害の人

 内館牧子さんの原作を、コロナ禍を背景に内容を改めて、伊東四朗さん主演で放送が始まっています。毎回面白く見ていますが、高齢者が知らず知らずに他人の迷惑になる行為を行うという筋書きは、身につまされる部分が多いと感じます。組織の中で活躍する機会がなくなってしまうために、自分の存在を認めてもらいたいとつい力が入ってしまうと失敗の元です。自尊心を傷つけられて耐え難いと思うのは、自分という存在の価値を高く見積もり過ぎているのだと思います。自己嫌悪に陥るくらいなら、自分に対して甘くする方が良いでしょう。老化は避けられず、若いころほどの能力はもうないのです。仕方がないことです。諦めが肝心です。怒りを他人にぶつければ、結果的に自分が大きな損をするでしょう。頼まれれば、それに応じるが、頼まれない限りは、手を出さないオランウータン流が平和を保つ秘訣だと思います。番組の中では、登場する全ての老人が何らかの老害の主になっていくようですので、色々な老害の態様を楽しもうと考えています。こういう番組を見れば、ますます自分に甘くなりそうです。

 

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