伊藤 正臣
集英社 (2016-04-19)
売り上げランキング: 10,954
タネも仕掛けもないラブストーリー 1巻 感想です。
よもやこんな漫画が発売される時が来ようとは。何を隠そうは俺は趣味でマジックをやっていて、就職試験の最終試験でもマジックを披露して内定をゲットしたまである。
そんなマジックを題材とした恋愛漫画が発売されると聞いて今日という日を楽しみにしていた。
高校の奇術部の部長で主人公の「
小熊沢」はヒロインで一年生の「
奇之下ひばり」を屋上に呼び出していた。
目的は愛の告白ではなく、奇之下のマジックがマジックではなく超能力なのではという疑問をぶつけるためだった。
そして奇之下はあっさりと超能力だと認めたのだった。能力は半径5m以内の物体の瞬間移動。これによりトランプの真ん中に入れたカードを一番上に持ってくるマジックを再現していた。
しかしここで二人に齟齬が発生していた。
小熊沢は超能力だと指摘するために奇之下を屋上に呼び出したが、奇之下は部を代表して高校生マジックコンテストに選抜されたのではと思っていた。
さらに小熊沢の友達が奇之下は告白されるのを期待されていたのではと言い出すから話は余計ややこしいことに。
奇之下の夢はアイドルになることだった。そのために高校生マジックコンテストに出場して「可愛すぎる高校生マジシャン」としてスカウトされることを目論んでいた。
アイドルという野心を持ちながらも控えめな手段で、この子可愛い。
小熊沢が誤って告白してしまったことをきっかけに二人は付き合うことになった。
しかし奇之下はあくまで、将来アイドルになったときに恋愛経験を活かすためで偽の恋人同士。ニセコイが始まったw 小熊沢は奇之下をプロデュースして高校生マジックコンテストの選抜に選ばれるようにするのが役目。
誤解をきっかけにタネも仕掛けも
あるラブストーリーが始まったわけだけど、このヒロイン何気にいじらしくいい子で可愛い。
コンテスト出場のチャンスを蹴ってでも小熊沢を気遣ったり、彼女として努力していて少し抜けているところもあるけどその真面目さが可愛かった。
秘密の技法を使わない簡単なマジックも解説されていた。これくらいなら小学生でもできるし、入門にはいいと思う。
奇術部のショーにはマジックをぶち壊すマナーの悪いお客さんがやってきていた。
俺はあくまで趣味でやっていて主に知り合いに見せるだけだからここまでひどいお客さんには遭遇したことないけど、こうさせないのも、されても動じないのもマジシャンの実力の内なんだよな… 俺にはたぶん無理だ。
このマナーの悪いお客さんを黙らせたのは超能力者の奇之下さん。絶対見破ることができない超能力を使ったマジックで見事納得させたのだった。
このお客さんが適当に指名したマジシャンが奇之下で、その瞬間お客さんが詰んだのは内心笑いが止まらない激熱な展開だった。
マジックショーデートでは小熊沢の幼馴染のマジシャンでもう一人のヒロイン「
北渡千鶴」が登場。和服を着て日本の古典奇術を行う姿が艶やかなヒロインだった。
で、千鶴は小熊沢のことが好きで、奇之下に自分の協力を願い出ていた。
仮の恋人同士だから別に奇之下に問題はないはずだけど、ここは恋愛物のお決まりの展開だね!ライバルは大事。
奇之下は小熊沢とマジックグッズのプレゼント交換をしてより恋人っぽい雰囲気になっていた。
ここまで見てると、奇之下に本当に恋心がないならベテラン女優になれるよな感じw
千鶴はその後小熊沢と同じ高校に転校してきた、と思わせて転入試験に落ち奇術部の活動にだけ特別に参加できる立場となった。この子も少し抜けていてかわいい。
プロを目指し本格的に活動している大人びた雰囲気があったのに、勉強がダメという子供っぽさのギャップがいいね。
そして幼馴染らしく仲の良い小熊沢と千鶴に、別に特別な感情のないはずの奇之下はショックを受けていた。
そのショックは超能力が暴走して怪奇現象を引き起こしてしまうレベル。極黒のブリュンヒルデのヒロインみたいに。
こうして最後に奇之下は自分が小熊沢に恋していることに気づいて、ようやくタネも仕掛けもないラブストーリーが始まろとうとしたところで1巻は終わり。
メインヒロインは素直さと子供っぽさが魅力的で、嘘を付けなさそう所が可愛かった。もう一人のヒロインも大人っぽさとは裏腹な一面があって微笑ましかった。
物語はマジックをつなぎに主人公とヒロインの関係が恋人同士というより保護者と子供のようだった思った矢先に、ドキッとさせられる描写があったり、穏やかな気持ちで二人を眺めていたい気持ちになった。
劇中でマジシャンの秘密の技法が解説されていたりするのは賛否両論かもしれない。トランプが一番上に上がってくるマジックもこの技法でやることも可能だし。
多くの読者がマジックに馴染みのない人だからだろうけど、個人的にはもう少しマジックに踏み込んでも良かったと思った。ただ、逆に言えば初見の人には優しい内容だろう。
個人的な評価★★★★☆
下のランキングのバナーを押してくれたら励みになります!