西尾 維新 VOFAN
講談社
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結物語 感想です。
表紙は花嫁姿の戦場ヶ原で、傷物語の映画の最終章の特典小説でも暦が23歳の物語だと明かされていたから二人の幸せなエピソードだと思ったら、そういうわけではなかった。
23歳となった暦は警察キャリアの警部補になっていた。古畑任三郎と同じである。高校時代あれだけ変態だった暦がこんなエリートになっていたのは心に突き刺さるものがあった…
なお火憐も高校卒業後に警察官になっていて、月火は日本の大学を中退して海外の大学に入り直してそこも中退して、今度はダンススクールに入り直そうとしていた…
新米警部補の暦は研修の一環として、直江津署の風説課という部署にやってきていた。
この部署は臥煙さんが根回しして創設した部署で、町に流れる風説を調べてそれが怪異に発展しそうならその前に潰し、放置して大丈夫なら放置しておくという専門家業を個から公へと発展させた部署だった。
メンバーも課長の「
甲賀葛」以外みんな怪異に関係ある人たちで、今回の物語では暦がそんな人たちと風説を調べる短編集だった。ちなみに暦以外は全員女性。暦のハーレム属性は健在だった。
1話目は「
周防全歌」という不死身の人魚とタッグを組み、やたら子供の水難事故が多い川を調査する物語だった。
この物語では忍が五件の内四件は事故ではなく怪異絡みの事件だとヒントをくれていた。だから怪異の真実を探るという最初の化物語のような面白さを味わうことができた。風説課のメンバーもそれぞれ個性的で面白い。
神原とも物語中偶然再会して、彼女は今性癖はそのままスポーツドクターを目指していた。彼女もあれだけ変態だったのにこうやって立派になって時間の経過はすごいと感じた。
2話目は死後ゴーレムとして復活した全身泥でできている29歳「
兆間臨」。彼女も一応不死身っぽい。直江津高校の先輩でもあって、今回の事件では直江津高校の下校時に制服だけがいつの間にかに切られてしまう事案の調査に駆り出されていた。
犯人が見えない上に器用に服だけを斬る通り魔で怪異っぽいけど、風説課が必ずしも怪異絡みの事件ばかりを解決しているわけではないわかる物語だった。
取り調べの最中では扇ちゃんが登場。今や扇ちゃんにとって暦に興味はなく、直江津高校の七不思議のひとつとして迷える生徒をさらに迷わせることを生業にしていた。怪異としてきちんと怪異の仕事をしている模様。
そして神原の前に現れた扇くんも彼女と同一人物のようだった。神原は5年たっても扇くんと言っていたし、決着はつけたのだろう。
扇ちゃんのこの5年後の姿が一番すんなり納得できた。
3話目は人狼の末裔である「
再埼みとめ」が今や革命家として世界中で危険視されている羽川翼の帰国の際に護衛に繰り出される物語。
羽川は海外でのボランティア活動から戦争を止める仲介人となり、さらには国境を消すようにまで至り革命家として、重要人物となっていた。羽川を抹殺するために潜伏地ごと攻撃されたこともあったらしい。
羽川の帰国の目的は日本から自分の痕跡を消すこと。そのためにホテルで厳重な護衛に固められならが事務作業にいそしむと思われたが、阿良々木家にやってきていた。
羽川は暦に活動に疲れたとか活動のパートナーが欲しいとか言っていたけど、この物語のオチはなかなか秀逸だった。
阿良々木家に現れた羽川は暦さえ騙せるほどの影武者で目的は暦の持つ羽川の下着や髪の毛を処分すること。今の羽川にとって暦なんてどうでもいい男になっていたのは良かったと思う。
傷物語での献身っぷりを映画で見たときの危うさはもう感じない。きっともう暦のピンチにも駆け付けてはくれないだろう。
最後は課長の「甲賀葛」だけどこの物語は暦と戦場ヶ原の物語だった。
暦は過去二回戦場ヶ原と分けれ二回寄りを戻していた。一度目の破局の原因は大学進学のため下宿先を探していた老倉と同棲生活を始めたからw 普通の阿良々木家に両親や妹がいるとはいえ戦場ヶ原の逆鱗に触れたのだった。
戦場ヶ原は現在海外の金融業界で有能さを発揮していて、公僕となった暦とは疎遠に。互いの進路の件から二人は大喧嘩。三度目の破局の危機に陥っていた。
暦は直江津署での研修を終えるために役場に訪れそこで、公認会計士として働く老倉と偶然遭遇し相談したのだった。老倉の暦への恨みと真の悪さが未だ健在でそこらへんはほっとしたw
老倉の望みは暦が警察を辞めて戦場ヶ原のために海外に行きそこで破局して露頭に迷うことと、暦に対してとことん性格悪くて面白かった。
だが暦が選んだ選択肢は警察として海外で働くこと。そのために甲賀課長に推薦状を貰ったり努力していた。
甲賀課長は怪異の専門家と知り合いらしく、臥煙先輩と呼んだり、忍野くんと呼んだりもっと掘り下げられそうなキャラだった。人間としての有能さをもっと見たかった。
途中、北白蛇神社に訪れるが八九寺は登場せず。大人になった暦には見えなくなったというわけではなく安心した。ただ留守にしていただけらしい。再登場を願う。
本格的に海外に行けそうになった暦を自宅で待っていたのは戦場ヶ原。戦場ヶ原も戦場ヶ原で日本で働く根回しをして帰国していた。
夫が妻のために大事にしていた懐中時計を売って櫛を買い、妻が夫のために自慢の髪を売って時計用の鎖を買うという物語に似ている。
二人ラブラブすぎでしょw 二人入れ違いになってしまうという感動的な物語だった。表紙の再現もそう遠くないんだろうなw
<物語>シリーズはこれで完結ではなく今度はモンスターシリーズが始まるそうだ。次は忍物語。
どうやら、うつくし姫をキスショットという吸血鬼にした自然発生の、決死にして必死にして万死の吸血鬼「デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」と暦が対峙しちゃうようだ。
最近はない血生臭い物語になるんだろうか。
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