サザンオールスターズが発表した初期のベスト盤で、バラードを集めた2枚組です。これを最後にレーベルがInvitation からタイシタレーベル(大したレーベルって^^;…もちろんサザンのレーベルです)に移るので、Invitation 時代の総決算という意味があったのではないかと。まあ、移籍といったってどちらもビクター内レーベルなので、部署転換ぐらいなニュアンスなんでしょうけど。
なんで初期の総決算となるベスト盤をバラッド限定にしたのでしょうか。僕の勝手な想像ですが、サザンのリーダーである桑田佳祐さんがユーモアたっぷりな人だし、またそのユーモアを前面に出した曲もヒットしていたので、下手したら夏のイベントバンドかコミックバンドぐらいに思われてもおかしくなかったバンドだと思うんですよね。それを「サザンっていい音楽だよね」という方向に引き寄せるには、いわゆるいい音楽を押す必要があったんじゃないかと。僕が
学生の頃、友人たちはみんなこのアルバムを聴いていて、誰も彼も「サザンの曲っていいよね」と思うようになってたんですよ!でもよくよく考えてみれば、「勝手にシンドバッド」でデビューした頃は「桑田佳祐って面白いよね」でした。というわけで、もし音楽面でのアドバンテージを伝えたいのであれば、たしかに「バラッド」効果はあったんじゃないかと。
久々にこのアルバムを聴いて感じたのは、70年代後半から80年代初頭ぐらいにあった日本の若者文化の匂いがどこかに感じられる曲がけっこうある事でした。恋愛観ひとつとってもそうで、僕はそういうサザンが好き。大学生たちが部屋に集まってインスタントラーメン食べながら麻雀するとか、深夜のラジオ放送を聴きながら勉強するとか、デートした帰りに別れがたくてマクドナルドに立ち寄ってずっと一緒にいるとか、部活で汗流して帰りにみんなでいつまでも話してるとか、そういう日常の中にしみ出した当時の日本に染みついていた若者文化、みたいな。「ラチエン通りのシスター」については以前に書いたとおりですが、「恋の女のストーリー」「別れ話は最後に」「恋はお熱く」あたりにも、そういうことを感じました。
僕が好きなサザンって、きたない部屋にたむろして未来を夢見てる若者が作った音楽であって、バブル期の洒落たサウンドや、スタジオでこねくり回したニューウェーブ的なものじゃないんですよね。
初期のサザンに関しては、ある音楽ディレクターさんが話していた言葉が耳に残っています。「新人バンドをどうやって売り出すか」みたいな話の流れで、その方が「なんだかんだ言っても、サザンオールスターズみたいなバンドですら、初期にバーニングが関わってなかったらあそこまでメディアに露出できたかどうかは怪しい」みたいに話されていたんです。僕は単なるプレーヤーだったもんで、そういう芸能界チックな話に疎かったんですが、なるほどそういう話ってゴシップ週刊誌ネタじゃなくて、今自分が働いている世界で実際に起きてることなんだなあ、なんて思った若い頃の僕でした。アミューズやサザンがここまで長生き出来た理由って、早い段階でそっち系と手を切ったところもあったのかも知れません。悪習を引きずったまま力でどうにかしようとしていると、ジャニー…いやいや、この話はこのへんで。。