柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

ご迷惑をおかけいたします。

2014年08月26日 22時18分41秒 | 日記
料金未納でパソコンが切られています。

原稿、パソコンで送ることができず、郵便でSDカードを送付するしかありません。

(携帯電話はまだしばらく通じるようですが、60枚の原稿を分割して改行などがおかしくなったら困るので、郵送します)

京都での対談謝礼は手渡しでもらったのですが、それは食費に回すしかないのです。

お金がないのに、謝礼金を手にして気が大きくなり、息子への京都土産に、バウムクーヘンと焼き栗と餅を買ってしまったことが悔やまれます。3000円も使ってしまった……

書き下ろしをこれ以上引っ張ることはできない。経済的に破綻する。書き上げたら、間髪入れずに雑誌掲載の小説を書いて、1枚いくらの稿料をもらわないと、飢える。

このあいだ読んだ、太宰治の書簡集が面白かった。

太宰は一貫して貧しく、稿料と印税の前借りのお願いの手紙ばかり書いていたのですよ。

「年末に相なりますとはなばだ窮し、『津軽』の約束のしるしという名目(名目はどうでもいいんですけど)とにかく、印税の内から二千円ほどいわゆる越年資金として、いただくことができたら、この急場を切り抜けられるようなんです。(中略)もちろん、これはいわゆる越年資金で、これ一回だけのお願いで、あとは本のできあがるまで絶対にこんなあつかましいことはお願いいたしませぬゆえ、どうか、このたびだけお聞きとどけくださいまし」

自死の1年半前、太宰治が出版社の編集者に宛てた手紙です。

近年発見される谷崎潤一郎の手紙も、その内容は生活の逼迫と借金のお願いばかり――。

山本周五郎も「前借り魔」と呼ばれていたそうです。

文豪の生活だって困窮していたのである。

わたしみたいなものが困窮するのは、当たり前。

困窮に堪えて、書きます。

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