民主大揺れ…離党者続出「バカ正直解散」「大変な政治空白」(産経新聞)
野田佳彦内閣は16日午前、閣僚全員が関係書類に署名し衆院解散方針を閣議決定した。閣僚からは政権の成果を強調する声があがったが、突然決まった解散に疑問の声が出た。一方、足元の民主党内では解散当日も、離党者の動きが相次いだ。
(中略)
民主党内では“激震”が続いており、初鹿明博衆院議員(東京16区)が党執行部へ離党届を提出。福田衣里子(長崎2区)、橋本勉(比例東海)両衆院議員が離党の意向を固めた。首相が14日に衆院解散を明言して以降、民主党の離党者は表明した議員を含め9人になった。
さて、思いの外あっさりと野田内閣は白旗を掲げ解散と相成ったわけですが、まぁ自民党にとっては最高のタイミングでしょうか。元より民主党内をまとめるよりも自民党に秋波を送ることに熱心だった野田内閣です。政策的な距離の近さもさることながら、根本的に野田は自民党が好きだったのではないかと思われます。野田は民主党よりも自民党に認めてもらいたかった、小沢など民主党に所属していた議員を躊躇なく切り捨てる一方で、ほとんど執拗なまでに自民党に擦り寄ってきたわけです。そして自民党に塩を送るような解散宣言、国民に嘘は吐いても自民党に嘘は吐きたくなかったのでしょう、何とも涙ぐましい話です。
引用元でも伝えられているように、自民党と違って民主党にとっては相当に不都合な時期です。今後の展望が開けているわけではないとはいえ、ここで解散されても民主党には一切の勝算がない、せめて自民党が何か「やらかす」のを待つぐらいは普通に考えられたことでしょう。しかし、野田は民主党の利益をあまり気にしていないようです。まぁ、野田を代表に選んでしまった民主党議員の自己責任ですかね。ともあれ、元より支持率が急落、かつ離党者も続出するなど明るい兆しが見えない民主党、このタイミングでの解散に頭を抱えている人が少なくないであろうことは容易に想像できます。
強いて言えば、自称「第三極」グループが一本化されることを恐れて解散を急がなければならなかったのかも知れません。多分にご祝儀相場的なものとは言え、瞬間的には自民党よりも世間の期待を集めた橋下一派など、状況次第では民主党を上回って自民に次ぐ2番手まで這い上がってくる可能性はあります。自民も民主もダメ、そして群小政党は目に入らない、そういう真の多数派の票を一手にかき集められれば今の民主などではとうてい太刀打ちできないことでしょう。だから、自称「第三極」グループが分立したままで支持が定着していない内に選挙をしなければならない、自民党に次ぐ第二政党の座を維持するためには今しかないと、そういう判断も働いたのではと推測されます。
参考、ポピュリズムの勝利と敗北
近年、成功を収めたポピュリズム政党としては「みんなの党」が代表格になるでしょうか。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、識者を装う人からも「ポピュリズムと馬鹿にするな」的な声が目立ったものです。しかるに、その「みんなの党」が名古屋市議選で同じポピュリズム政党である「減税日本」の前に全滅(当選者0)の憂き目に遭ったことは記憶に止められるべきと言えます。結局、ポピュリズムは勝者総取りの世界、ポピュリズムの№1である限り圧倒的な支持を集める一方で、二番手以下に落ちればたちまちの内に有権者から忘れ去られてしまうものなのです。
これまでの選挙で民主も自民も橋下には敵わなかった、みんなの党が候補者を擁立してきた選挙区では自民も民主も敗北が相次いでいたわけです。それだけにポピュリストの一本化が進まない今の間に選挙を済ませてしまいたいとの思惑は少なからずあったのではないでしょうか。実際、焦りが見えるのは民主党内部だけではなく、ポピュリズム陣営の旗手である橋下にもまた苦戦の後は窺われるところ、石原一派との連携を発表したばかりですが、これで石原支持層を取り込めるかと言えば逆に石原を嫌う層の反感を集める可能性も高まる、石原グループにしても橋下を嫌う層の反発を買う恐れがあるだけに、次の選挙では思いのほか伸び悩むことにもなりそうです。
まぁ、この悪夢のような民主党政権がもうすぐ終わると思えばありがたいような気がしないでもありませんが、自民党が民主党よりマシかと言えば微妙なところです。主導権争いこそ熾烈だったものの、一方で政策の骨子は野田内閣とあまり変わらなかったのではないか、麻生内閣の頃に輪をかけてマトモな議員が減って、過去の自民党時代よりもなおさら政権担当能力が落ちてはいまいかと、色々と危惧されることは多いです。ただ、このまま民主党政権が承認されてしまうよりは、まだしもダメ出しされて別の政党に看板だけでもすげ替えられた方が良いのかな、とは思います。最悪の政権を単に黙認するよりは、非建設的なNOでも声が上がった方が多少なりとも政治っぽいです。
JA、各党にTPP「踏み絵」 代表招き賛否表明追及へ(朝日新聞)
JAグループの全国農業協同組合中央会(全中)の冨士重夫専務理事は12日、朝日新聞の取材に対し、15日に各政党代表者を招き、環太平洋経済連携協定(TPP)に賛成か反対かを表明してもらう方針を明らかにした。賛成の党は次の国政選挙では推さない。事実上の「踏み絵」になる。
連合の古賀伸明会長は15日の記者会見で、衆院選の対応について「自民党政権に歴史を逆戻りさせても何も生み出さない。民主党支援に全力を挙げたい」と強調した。
JAはTPP絡みで「踏み絵」を迫るそうです。TPPが農業という産業にプラスかマイナスかはさておき、既存の農協にとっては間違いなく逆風になるだろうなと思われるだけに、まぁ反対論が強いのは致し方ないところでしょう。そこでJAは各政党にTPPに賛成か反対かを問う、これを朝日報道は「踏み絵」などと呼んでいるわけですが、踏み絵というネガティブな単語で名指すのが適切なのかどうか、私には疑問に思われます。農協にとっては死活問題なのですから、自分たちを守るのか放り出そうとするのか、それを基準に支持と不支持を決めようとするのは当然の権利のはずです。これが「踏み絵」と呼ばれて否定的に見られるようでは、いったいどうやって身を守れば良いのでしょうかね。
逆に自分たちを守る姿勢が見られないのが連合で、相変わらず民主党にしがみつく様子です。民主党に媚を売って、それで労働者の利益になるとでも思っているとしたら果てしなく愚かなこと、連合の幹部には別の思惑でもあるのかと邪推したくなるところです。まぁ、労働者のことより脱原発が第一な労組も珍しくないだけに(むしろ脱原発の煽りを受けてシフト勤務に回されたりする労働者も多そうなのですが)、自分の組織の政治的な勝利こそ重要と考える労組があっても不思議ではありません。その代表が連合であり、所属組合員の利益よりも自分が惚れ込んだDV夫への愛を貫くことの方が大事なのでしょう。自分たちの利益を守ろうとする農協と違って連合は己(の組合員)を省みない、その献身的な姿勢には涙が出てきます。