非国民通信

ノーモア・コイズミ

長居さんをどうにかしないと

2015-12-30 22:43:36 | 雇用・経済

止まらぬ客離れ、100店超閉鎖… “低迷を招いた張本人”カサノバ社長の進退にも波及(産経新聞)

 米マクドナルドが、筆頭株主として約50%を握る日本マクドナルドホールディングス(HD)の株式の一部売却を検討していることが22日、分かった。国内外の投資ファンドや大手商社に打診したもようで、外部の資本とノウハウを活用し、低迷が続く日本事業の早期再建を急ぐ考え。売却株数や金額などの詳細は今後、詰めるが、最大33%分を売却する可能性もある。45年間続いた米本社主導の経営を抜本的に見直す。

(中略)

 外食業界に詳しい日本経済大学の西村尚純教授は「小手先の改革では復活できない。これまでのビジネスモデルを180度転換させるような抜本的な改革が必要だ」と話す。

 出資関係の見直しで、サラ・カサノバ社長の進退問題が浮上しそうだ。カサノバ社長は米本社の意向で、平成25年8月末に就任した。トップ人事は大株主の意向によるところが大きいが、「マックの低迷を招いた張本人」(大手外食チェーン幹部)との見方が社内外で広がっている。

 

 日本のマクドの社長が黄金時代を築いた藤田田から中継ぎを挟んで原田泳幸に代わったのは、藤田の独自路線が米本社の意向に沿わなかったとも伝えられるところですが、その結果はいかがなものでしょう。藤田時代にもマイナス要因は多々ありましたけれど、それ以上に栄光もありました。その先、原田時代には一瞬の輝きがなかったわけではないにせよ、凋落の一途をたどっているわけです。挙げ句の果てに米本社は日本マクドナルドの株式の売却を検討しているとか。アメリカ側の言うことによく従う人よりも、もう少し日本の市場を理解している人を社長に据えておけば、結果は違ったかも知れませんね。

 なお低迷を抜け出せない責任を問われてか、現社長のサラ・カサノバ氏の進退まで噂されています。それを思うと、改めて前任者の処世術は凄かったなと感じるところでしょうか。世の中には、会社の業績を落としても自身の評価は落とさない人がいるものです。常にマウンティングを怠らず、問題の責任を巧みに転嫁し、己の地位を保つべく励んでいる、そうした「出世するための努力」を欠かさない人は、日本のどこに行っても高く評価されます。業績不振から抜け出せずに進退問題に発展させてしまったカサノバ社長と、業績低迷が大問題化する前に別会社のトップへと華麗な転身を遂げた原田前社長、ある種の能力において両者には大きな違いがあると言えそうです。

 ちなみに私は――バーガーキングやウェンディーズ、ドムドムバーガーの方が好きですけれど――マクドナルドはそんなに嫌いではないですし通勤経路にあるので割と利用しています。朝の出勤時も夜の退社時も、いつも行列ができていますね。そして昼時は店内の座席がいつも埋まっています。見た目は繁盛しているのですが……それでも儲からないようです。まぁマクドに限らず、駅前の好立地にある店舗ともなれば、昼間の安いメニューではいくら売れてもテナント料を賄えないものなのかも知れません。昼間は行列のできる店でも、普通につぶれていますから。夜に酒を飲ませて稼がないと、飲食店はどこも厳しいのでしょう。

 どうもマクドの客層を見ると、ろくに注文もしないのにテーブルを占拠している迷惑な客が多いなと、そう感じます。喫茶店価格ならいざ知らず、100円のコーヒー一杯で長居する客もいれば、マックバーガーならぬMacBookを広げている人もいる、荷物を広げて縄張りを主張するお嬢さん達もいれば、店舗内で勉学に励む空回り学生もいる、地元の店舗では行き場がないのか寝泊まりする覚悟で居座っている人もいる、そして会社の近くの店舗では何も食わずに打ち合わせをしているブラック臭漂う会社員グループまでいる――こういう客のために、2階席や3階席の賃料まで捻出していれば、そりゃ会社の業績が悪化するのは不可避に思えます。

 本当にマクドがファストフードなら、もうちょっと席数を減らせる、テナント代を削れる、業績も幾分かはマシになるような気がします。しかし、意外やマクドはスローフード、とにかく「長居する客が多い」印象が強いです。それでも昼時に客が座って食べられるようにと駅前ビルの3階や4階まで借りるとなれば、それは人件費なんかよりずっと重いコストなのではないでしょうかね。まぁ、店は客を選べません。しかし、店舗によって客層は異なります。私がマクドナルドの経営層であったなら、「長居さん」が寄りつかないブランドイメージの構築を考えますね。長居する客が減って、牛丼屋やソバ屋よろしく「サッと食べてサッと帰る」客が中心になれば、もう少しスリムな経営ができそうですから。

 

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モデルケースとしては有意義だ

2015-12-27 11:41:50 | 政治・国際

 仕事と○○の両立云々という話は色々とあるもので、それは現状では両立が難しい場面が多いからこそ出てくる議論とも言えます。そして往々にして「仕事」の方を優先することが当然視されてもいるわけです。もちろん担う責任次第では仕事を優先すべき場面もあるのでしょうけれど、日本社会の場合はその敷居が低すぎるところもあるように思います。端的に言えば「(非正規ではない)社員」だとか、その程度のレベルで仕事優先が当たり前のように求められているのではないでしょうか。本当に限られた一握りの人間、たとえば一定以上の規模の会社の経営者クラスともなれば話は別ですが、たかだか正規雇用程度で仕事第一を要求されてはたまりません。

 

自民・宮崎氏、育休取得の意向=菅長官「超党派で議員立法を」(時事通信)

 自民党の宮崎謙介衆院議員(34)=京都3区=は23日、来年2月に予定される妻の金子恵美衆院議員(37)=新潟4区=の出産後、「育児休暇」を取得する意向を明らかにした。東京都内で記者団に、「男性の育児参加を推進したい。まず『隗(かい)より始めよ』で、1億総活躍推進のためにも頑張りたい」と語った。

(中略)

 これに関し、23日に都内で開かれた宮崎・金子夫妻の結婚披露宴であいさつした菅義偉官房長官は「育休を取るための議員立法を超党派でつくればいい」と提案。育休取得を推進する立場の塩崎恭久厚生労働相も「最低限やることを押さえながら、イクメンをやってもらわないと困る。前向きに頑張ってほしい」と激励した。 

 

 ……で、割と反響があるらしいのが上で伝えられている自民党議員の育休宣言です。「一石を投じる」という意味合いでは若手議員らしからぬ良い仕事をしているとも言えます。ただ「本当に限られた一握りの人間」には、私事を犠牲にしてでも職務に専念することが求められるのではないかとも考えるわけで、そして国会議員ともなれば、まさに「本当に限られた一握りの人間」です。諸々の特別な権利、権限、権力を預けられた国会議員ともなれば、単なる会社員とは負うべき責任も違います。普通の人とは違うものを与えられた身分であれば、その辺のサラリーマンと同じ基準で考えられるべきではないのでしょう。

 ただ、モデルケースとしては有意義と思います。育休を取得する人は少ない、ましてやそれが男性側ともなれば、本当に希少です。女性側ではなく男性側が育児のために休業する、国会議員という注目度の高い立場で育休男性の先駆者になるのは、結構な意義があるのではないでしょうか。何百人もいる与党議員の末席でひっそりと出番を待っているよりも、育休取得のモデルとして行動する方がずっと政治的な活動とすら言えます。少なくとも国民の関心を高めるという点では成功していますし、身内のこととあってか意外や自民党内部でも容認論の方が優勢なようで、まぁ「こういうのもアリ」ですかね。

 

 一方、否定的見解を連発しているのが民主党で、いかにも強者目線の考え方しかできない政党だなと感じさせてくれるところです。たとえば世の中には国籍や人種、性別や親の資産状況など「生まれたときから不利」なスタートに立たされている人もいて、一方で「他人よりも努力して」不利な条件を克服して社会的に成功した人もいるわけです。その種の人は往々にして「他人よりも努力すれば成功できる」のだからと、有利不利の是正を求めるような声にネガティブな態度を取りがちだったりします。民主党の見解は、そういう類に似ているのではないかな、と。

 特に蓮舫にとって国会議員は時間に自由の利く暇な仕事のようですが、それは誰にとっても同じではありません。「人を働かせる側」の人間が、従業員に「十分な休暇は与えている」と強弁しているのと同じようなもので、「自分はできる(と思っている)」としても、他人が同じことをできるとは限らないわけです。ちょっと昔に「苦労を乗り越えてきた」人が「自分たちはできたんだから」と次なる世代にも同等の苦労を要求するのと同じようなものでもあります。いかに育児する人の負担を軽減するかが課題になっている現代において、「頑張ればできるだろう」と仕事の負担を減らすことに異議を唱える民主党的な見解が幅を利かせ育休の取得にあれこれと条件が付けられてしまえば、まぁ少子化は今以上に加速しそうですね。

 

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高齢者だけの問題じゃない

2015-12-23 23:31:33 | 社会

高齢者3万円給付金、自民内で批判続出「高齢者優遇だ」(朝日新聞)

 お年寄りらに1人3万円を配る政府の「臨時給付金」案について、16日にあった自民党の厚生労働部会などの合同会議で小泉進次郎農林部会長らから「高齢者優遇」といった批判が続出した。合同会議は給付金を含む今年度補正予算案の了承を保留し、17日に改めて議論することになった。

(中略)

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「アベノミクスによる賃金引き上げの恩恵が及びにくい高齢者の所得底上げを図るためのもので、党の理解を得られるよう説明を尽くしたい」と話した。

 

 的中率50%の予報よりも的中率0%の予報の方が判断材料としては役に立つものでして、そうした面で私は週刊ダイヤモンドなどの経済誌には信頼を置いていたりもするのですが、政治家も同じですよね。小泉進次郎が反対するのなら、たぶん良い政策なんでしょう。菅官房長官の語る「アベノミクスによる賃金引き上げの恩恵が及びにくい高齢者の所得底上げ~」は筋の通った話で、まぁ賃金引き上げは道半ばと言いますか目指すところには遠く及ばないのはさておき、実際に賃上げが軌道に乗っても既に退職して久しい高齢者には何の恩恵もない、そこは公平性の観点から賃上げとは別の施策が必要になるわけです。

 「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」とはよく言われるものですが、それもまた色々と問題があります。レイシストが在日外国人を罵倒してもニュースにならないが、レイシストを罵倒すればニュースになったり等々、どうにも不公正と感じる場面は少なくありません。あるいは在日外国人への差別を批判する一方で、福島関係諸々を危険物であるかのごとくに語り、「福島」が忌避されるように仕向けるのに熱心な人もいます。福島の産品にあらぬ嫌疑をかけて排除を求めるような言動もまた紛れもないヘイトスピーチですけれど、これに批判的な人もいれば擁護する人もいたりして、まぁ酷いものです。

 ともあれヘイトを向けることが社会的な批判を浴びる対象もあれば、そうでないものもあるわけです。在日外国人や障害者、非正規社員や女性全般、福祉受給者そして「福島」等々、こうした対象に悪罵を浴びせる人もいれば、そうした振る舞いに眉をひそめる人もいます。一方でヘイトスピーチの対象として幅広く容認され、罵倒しても非難を浴びにくいものがある、それが「高齢者」なのかなと思います。在日外国人による架空のエピソードを捏造して排除を呼びかけるような言動は非難を呼ぶこともありますが、高齢者による架空のエピソードを作っては老害云々としたり顔で語る、そうした振る舞いが世間の批判を浴びることは、まずないのではないでしょうか。高齢者は、最も安心して「叩ける」存在になっていると言えます。

 世間の不平不満の原因を高齢者のせいにして、そして「若者の味方」を装う政治家や論者は数多います。高齢者向けの福祉の削減を訴えて「若者のため」「次世代のため」と唱えれば世間の受けは悪くありません。逆に高齢者向けの政策を検討すれば、この小泉進次郎みたいな輩から「高齢者優遇」云々と難癖をつけられるわけです。なんだかんだ言って自民党は支持層との「しがらみ」の強いところがあって、それが安易な「切り捨て」を難しくしているところもあるように思いますが、ポピュリストが勢力を強めれば強めるほど高齢者は票のために切り捨てられることでしょう。では、それが「若者のため」になるのかどうか――

 

「介護が経営上の課題に」…9割の企業に危機感(読売新聞)

 主要企業の9割超が、将来的に介護の問題を抱える従業員が増え、会社経営上の課題になると危機感を抱いていることが、読売新聞が実施したアンケートでわかった。

(中略)

 それによると、「今後、親などの介護の問題を抱える従業員が増え、会社の経営上の課題になる可能性があると思うか」との問いに、「ある程度」(62%)を含めて、全体で91%が「そう思う」と回答した。

 

 一方で介護の問題は「受ける」側だけではなく、「する」側の問題でもあるわけです。つまり福祉の世話になる機会の増える高齢者の処遇は、高齢の親族を抱える現役世代の問題でもあるのです。「現役世代の負担軽減のため」との美名で高齢者向けの福祉が削られた場合、「高齢の両親を介護する子世代」の負担は、果たしてどうなるのでしょうか。中には親とは縁を切った人もいる、あるいは高齢の祖父母の介護はママの役目と無関係を決め込んでいる若きネット論客も多いのかも知れません。しかし、大半の人にとって老いた肉親をどうするかは切実な問題です。いずれは親の面倒を見るべき日が訪れるもの、そうなったときに高齢者向けの福祉が充実しているか否かは現役世代の命運を左右します。高齢者が直接の受給者となる福祉や今回のような高齢者向けの給付は単に高齢者のものではなく、高齢者の面倒を見る子世代のものでもある、その現実を受け入れた上で語られるべきものです。

 

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大半は給与面の問題なのだが

2015-12-20 11:37:51 | 雇用・経済

(宅老所の現場から)「人として向かい合えるか」(朝日新聞)

 介護職の人材不足は深刻だ。千葉労働局によると、介護職の有効求人倍率は3倍前後の状況が続く。県によると、団塊の世代が75歳以上になる2025年は、今より約5万人多い11万5千人が必要になるが、現在の増員ペースだと、2万3千人が不足する見通しだ。

 不人気の理由の一つは低賃金だ。同労働局によると平均月収は17万~21万円、全職種平均より2万~5万円少ない。国は4月の介護報酬改定で、職員賃金が平均1万2千円相当上がるよう加算制度を拡充した。

 淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授(46)は人材不足による介護の質低下を懸念する。一方で「達成感が感じられる職場は離職率が低い。すべてを給与面では計れない」と指摘する。

 

 さて「マトモな」求人には応募者が殺到し就職難が続く一方で、時給700円のアルバイトを募集する事業者は人手不足を嘆くという昨今ですが、介護人材の不足もまた深刻視されているわけです。必然的に高齢化が進む中で将来的な不足は千葉だけでも2万3千人との予測が伝えられているところ、信頼性はどれほどのものでしょう。この手の予想は甘い見通しに立ったものが多いと言いますか、10年後には思い描いていたよりも危機的な現実が待っているかもしれません。

 先日は「上司から提案されたら、転職を思いとどまる条件」のアンケート結果を取り上げました。結果は「給与額が現在の1.5倍になる」を選んだ人が圧倒的多数で、その他の条件を挙げた人は微々たるものでした。個々人を掘り下げていけば様々な問題はあるとしても、最大公約数的な問題は「カネ」なのです。稼げる職であれば激務でも汚れ仕事でも人は集まる、逆に薄給であれば人は集まらない、志を持った人でも離職していくもの、それが現実です。

 例によって介護職の不足の原因として低賃金が指摘されています。国は職員賃金が1万2千円相当上がるよう加算制度を拡充したとのことで、まぁ何もしないよりはずっと良いことです。しかし同時に介護職の月収は全職種平均より2万~5万円少ないことも伝えられています。1万2千円程度でも賃金が上がるのは、間違いなく良いことでしょう。しかし、もくろみ通りに報酬が上がってもなお、他の職種の平均を下回っている現状は変わりません。離職者を思いとどまらせるだけの対価としては、まだまだ不足があります。

 なお淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は「達成感が感じられる職場は離職率が低い。すべてを給与面では計れない」と語ります。いかにも典型的な日本的経営感覚といった風情ですね。こういう人が、本当に必要な対策――すなわち待遇改善――の必要性から目を背けさせてきたと言えます。ブラック企業の代名詞的存在であるワタミでは「ありがとうを集める」のが仕事だと説かれているように、「やりがい」なり「社会貢献」なり「達成感」なり、偉い人はそうした精神論で押し通すことを好むものです。それが良い結果を生んでいるかどうかには目もくれず……

 しかしまぁ「達成感」とやらは、何によって得られるのでしょうか。苦しい仕事でも巨額の賃金で報いられるなら、「やり遂げた」と概ね達成感は得られそうです。逆に過酷な仕事にもかかわらず微々たる給与しか与えられないのなら、それは徒労感をもたらすものではないでしょうか。同じ作業に従事させる場合でも、多額の報酬を受け取ったグループは「有意義な仕事をした」と感じ、逆に対価を支払われなかったグループは「無駄な仕事を強いられた」と感じると、心理学の本で読んだ記憶があります。まぁ、当たり前の話ですよね。達成感が感じられる職場は離職率が低いのかもしれませんけれど、では最も汎用的に達成感をもたらしてくれるのは何か、それを考えれば結局は同じ結論にたどり着くはずです。

 

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カネの問題は命の問題につながっている

2015-12-16 23:07:08 | 政治・国際

低所得者ほど穀類摂取=肉野菜少なく、食事に偏り-喫煙者は増加・厚労省調査(時事通信)

 世帯所得が低いほど米やパンなど穀類の摂取量が増え、肉や野菜は減少する傾向があることが9日、厚生労働省が公表した2014年の国民健康・栄養調査で分かった。同省は「おかずをそろえ、食事内容のバランスを整える余裕が少ない可能性がある」とし、健康面の格差拡大に懸念を示している。

 調査は毎年行われ、今回は昨年11月に実施。全国約5400世帯を無作為抽出し、約3600世帯から有効回答を得た。摂取品目を詳しく尋ね、所得と食生活の関係を調べたのは初めてという。

 その結果、米やパン、麺など穀類の1日当たり平均摂取量は、世帯所得が600万円以上の男性は494グラムだったのに対し、200万~600万円未満は520グラム、200万円未満は535グラムだった。女性もそれぞれ352グラム、359グラム、372グラムで低所得ほど多かった。

 野菜の摂取量は所得600万円以上は男性322グラム、女性313グラムだったが、200万円未満では男性253グラム、女性271グラムだった。肉の摂取量も低所得ほど少なかった。 

 

 ある程度まで豊かな国になると、得てして貧しい人の方が太っているものです。ヘルシーな食事とフィットネスは決して安くありませんから。そして低所得層にも手が届く安価な食材は、だいたいにおいてカロリーが高いばかりだったりするわけです。今回の厚労省の調査結果はいかがでしょう。安価でもなく、調理の手間もかかる肉と野菜の摂取量は、生活に余裕がある層と、貧乏暇なしの層とで大きな違いがあることが伝えられています。所得格差の問題は、健康格差の問題でもある、カネの問題は命の問題につながっている、そう意識されるべきです。

 さて先日は軽減税率を巡って自民党と公明党とで色々と話し合ったとか。例によって批判している側の主張が酷すぎて安倍内閣の判断がマトモに見えてしまうとも感じたところですが、いかがなものでしょうね。まぁ逆進課税原理主義者や、日頃は富裕層を優遇することしか考えていないのに軽減税率の話になると「それでは低所得層の負担軽減にならない」とか言い張り始めるネット論客、あろうことか「高所得者の方が得をする」などと言い出す算数のできない民主党議員、あるいはエンゲル係数の意味するところ――収入の大半を支出に回す世帯の25%と収入の半分程度を支出に回す世帯の20%の違い――を理解できていない面々、そうした人々の与太話に耳を傾ける必要はないと思います。

 ただ結局のところ政府案も「やらないよりはマシ」の域を出ないと言いますか、ヨーロッパではよくある食品は0%(非課税)と違って「8%に据え置き」では、焼け石に水です。この程度で公明党が「庶民のために軽減税率を導入しました」と胸を張るなら、それは成果の粉飾のようなものでしょう。やらないよりはマシですが、これで十分と思っているなら、それは間違いです。何でもかんでも10%にするよりはマシではあるにせよ、この程度で「対策をとった」とアリバイ作りをされては困ります。

 とかく「財源」を騒ぎ立てる論者も目立つところですが、それもおかしな話です。減税ではなく増税を論じているのになぜ財源の話になるのか。一部の食品を増税の例外にしたところで税収が今より減るわけではありません。要は「(消費税増税分を当て込んでいた法人税減税の)財源が足りなくなる」というのが正しい理解のはずです。ならば話は簡単、アホな法人税減税をやめればおつりが来ます。それよりも、消費税増税によって抑制される国内消費、それに伴う経済活動の停滞と必然的な税収減を補う財源を考えた方が建設的でしょうね。そして言うまでもなく最良の判断は消費税増税をやめることですけれど――現与党以上に逆進課税に積極的なのが野党第一党という有様ですから、まぁ救いようがないのかもしれません。

 消費税の逆進性の緩和という観点もさることながら、国民の「健康」面ではどうでしょう。支出を切り詰めざるを得ない世帯では、肉や野菜の摂取が少なく食生活に偏りが大きいと、冒頭の引用でも伝えられているわけです。そして国民の健康水準が低下すれば、すなわち医療費の増大と労働力の不足につながります。財政のことを考えるならば目先の支出削減に囚われず、将来の支出削減に向けて「投資」をしなければなりません。国民に食費を切り詰めさせれば、遠からぬ将来にツケを払うことになる、そのことを財政ばかりが懸念事項であるかのように語る人は理解すべきです。

 

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カネの問題だという現実を受け入れよう

2015-12-13 11:27:25 | 雇用・経済

転職を思いとどまる条件TOP10(R25)

とはいえ、この結果から「転職する気はない」も46.5%いることが判明。この差は何にあるのだろう。もしかしたら、何かが解消されたら、今の会社にとどまりたいと思うのかも? 「いずれ転職したい」と回答した107人に「上司から提案されたら、転職を思いとどまる条件」について聞いた。

■転職を思いとどまる条件TOP10
(10項目から1、2位を選んでもらい、1位を2pt、2位を1ptとして集計。協力/アイリサーチ)

1位 給与額が現在の1.5倍になる 139pt
2位 希望する部署に異動できる 30pt
3位 残業時間がゼロになる 27pt
4位 嫌な部下や同僚を他部署に異動してもらえる 26pt
4位 確実に将来、会社の主要役職に就ける 26pt
6位 裁量労働制で、自由に勤務時間を選べる 18pt
7位 社内で新規事業を立ち上げられる 13pt
8位 希望する勤務地を選べる(在宅勤務含む) 12pt
9位 希望する学校に留学をさせてもらえる 7pt
9位 売上などのノルマがなくなる 7pt

 

 ……と言うことで、転職を思いとどまる条件としては「給与増」がダントツの1位になりました。まぁ、もらえる対価が高額なら汚れ仕事にだって人は集まっているわけです。逆に、その仕事への熱意を持った人は多くとも薄給で知られる業界は人手不足に喘いでいます。好条件の仕事には求人の何十倍、何百倍もの応募者が殺到する一方で、低賃金の非正規でしか募集をかけない企業は「人が集まらない」と嘆いてばかりです。要するに、最大公約数的な処方箋は「給与」なのでしょうね。

 身体にとって栄養のある食事や休養が万能薬であるのなら、金もまた社会にとっての万能薬と呼ぶことができます。個別の症例の特効薬には必ずしもならないとしても、全般的な底上げにはつながる、そういうものです。もし会社が本気で従業員の離職に悩んでいるのなら、最も幅広く効果があるのは「賃上げ」なのですね。実際、ヘンリー・フォードを筆頭に従業員の賃上げで離職者を減らすことに成功し、会社の収益力を増すことに成功した経営者も少なからずいます。個別に調べていけば個人的な問題も多々あることでしょうけれど、給与水準を引き上げさえすれば、だいたいは片付きそうです。

 そうは言っても、人件費を抑制することで会社の利益を確保するのが21世紀の日本的経営ですし、あろう事か労組の中には安倍政権の賃上げ要請に反発して要求を控えるようなところもある始末です。最も効果的であるとわかっていてもなお、賃上げという最良の解決策からは目を背けてしまうものなのでしょう。あるいは、企業は従業員の語る「建前」を真実と勘違いしているフシもありそうです。働くのは金のため――そう公然と語ることは、日本の求職者に許されていません。就職したければ、金のためではなく、何らかの「やりがい」なり自己実現なり社会貢献なり、美辞麗句を並べることが求められます。そこで語られる絵空事を真に受け、社員が働いているのは金のためではない、賃上げは解決にならないと、そう錯覚しているのが日本の経営者なのかもしれません。

 介護人材の不足は結構な以前から叫ばれていますけれど、その薄給は昔から変わっていません。そこで改革派の政治家や財界人は移民の受け入れを検討せよと語るものですが、まぁ金を出さずに済ませようとするのが日本的なソリューションなのでしょう。そして昨今は保育士の不足が問題視されています。保育士の資格保持者は十分な頭数がいるはずなのですが、にもかかわらず保育士として働く人が絶対的に足りていないわけです。そこで幼稚園や小学校の教員を保育士の代わりに働けるようにしようなんて規制緩和が検討されていたりもするようですけれど、これが解決に見える人の頭の中身を見てみたいです。保育士の給与水準もまた非常に低いことが知られています。なぜ有資格者なのに保育士の職から離れていく人が多いのか、何を改めれば人を確保できるのか、それは十分に明らかなことのはずです。

 

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多様な人材は集まったし目的は達成されているように思える

2015-12-09 23:01:07 | 政治・国際

7割が「法知識不足」…大阪市「人物重視」採用(読売新聞)

 大阪市が、2012年度実施の職員採用試験(大卒程度)から専門知識を問う問題を廃止し、エントリーシート(ES)や論文など「人物重視」に変更したところ、採用者の7割が「法律知識不足」を認識していることが市のアンケートでわかった。制度変更前の旧試験組の2倍で、市は今年実施した来春採用者向けの試験で、論文で法律知識を問う問題を設定した。

 「人物重視」の試験は、多様な人材を集めるため、橋下徹市長が導入。13年4月の採用者から教養試験や憲法、行政法などの専門試験を廃止し、ESを導入して論文や面接中心にした。市によると、こうした「人物重視」試験だけで採用を行っているのは、20政令市で大阪市だけという。

(中略)

 市は今年6~7月に実施した来年度採用者向け試験では、論文のテーマに、これまでの「一般」に加え、「法律」を設定。ただ、申込者1354人中、「法律」を選択したのは60人(4・4%)だけだった。

 

 成否を語る上では「狙い」とそれを「達成できたか」を意識する必要があります。たとえば橋本龍太郎から小泉純一郎に端を発する一連の改革は、何を達成しようとしてきたのでしょうか。経済成長を目指して失敗したのか、それとも従業員から会社への所得移転を目指して成功したのか――往々にして改革を唱える人ほどを真意を隠すものでして、賛否はさておき案外「本当に狙っていたもの」は達成できているケースが多いのでは、という気がします。この大阪市の場合も、そうなのではないかな、と。

参考、闇の京都大学方式   ……とか、ならなければいいけど

 「人物重視」云々は大学入試周りでも喧しいところがありまして、橋下も流行に迎合しているところですが、「人物重視」の結果と「それ以前」は何が違ってくるのでしょうか。昔ながらの学力テストだけの選考であるなら、合格するのは要するに「勉強ができる人」に限られます。では、他の要素は? 試験に受かって入学するのは「勉強ができる」という点では共通した生徒たちです。しかし、勉強以外の能力すなわち「人物」に関してはどうなのでしょう。しばしば難関大学ほど奇人変人のたまり場だったりするものです。まぁ、勉強ができさえすれば合格できるのなら、人物面では「何でもあり」ということになります。ならば勉強はできるが、奇矯な性格の人が入ってくることもあるわけです。

 逆に流行の「人物重視」となると、どうなるでしょう。「人物」に加点して学力テストの敷居を下げれば、そこに合格するのは必ずしも「勉強ができる人」ではなくなります。代わりに「人物」の面で高い点を獲得できる人が入ってくるわけです。その結果は、どうなるのか。採点者(面接官)の歓心を買うのに巧みな――いわゆる「コミュニケーション能力が高い」――人が合格者の多数を占めるようになるならば、要するに「そういう人ばかり」になると言えます。つまり、人物重視で合否を決めれば「似たような人が集まる」のですね。ただし、あまり勉強のできない人でも人物評価によって試験に受かることで、学力の面では幅が出てくることでしょう。人物面ではコミュニケーション強者ばかりでも、勉強のできる人もいれば勉強のできない人もいる、そういう面で多様性が生まれるのです。

 そして大阪維新村のケースを考えてみましょう。これまでは法律知識が重点的に問われてきました。必然的に採用される職員は「法律には通じている」一方で法律知識以外ではバラバラ、お堅い人間もいれば入れ墨のある人間もいて、まぁ人物面では多様性があったわけです。これが「人物重視」で法律知識を問わない採用になった結果は、上記引用にて伝えられる通りです。法律の試験がないのですから、当然のこととして「法律に疎い」人も入ってくることになります。今までと違って、「法律に強い人もいれば、法律を知らない人もいる」配置となりました。つまりは法律知識の面で多様性が生まれたのです。

 当たり前のことですが、選別の基準になった項目から多様性は生まれないわけです。逆に、選別の基準から外れた項目でこそ「イレギュラー」が通過するもので、それが多様性を構築します。今までは法律知識による専攻で、法律には強いけれども人物面では変なのも採用されていたのかもしれません。それが橋下体制の元で「人物面では選別されたけれど法律に通じているかは定かでない」人が採用されるようになったのが現状と言えます。こうして人物ではなく法律知識の面で多様性が生まれたのですが――そもそも改革の意図はどこにあったのか。本当の狙いは橋下シンパの改革バカで組織を固めることであって、それには成功しているのが実態なんじゃないかと私は思いますね。

 

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組合は自民党より会社寄り

2015-12-06 11:09:43 | 雇用・経済

金属労協、ベア要求半分に 政府の姿勢よそに現実路線(日本経済新聞)

 自動車や電機など主要製造業の産業別労働組合で構成する金属労協は4日、2016年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善要求を月額3000円以上にすると正式決定した。大手と中小企業の賃金格差の是正、非正規従業員の待遇改善も要求に加える。要求の水準は6000円以上を掲げた15年春の半分。政府や経団連が15年を上回る賃上げを議論するなか、組合要求が15年を下回る異例の展開だ。

 記者会見した金属労協の相原康伸議長は要求水準を月例賃金の1%程度とする理由を「経済情勢や格差是正、物価などを総合的に考慮した」と説明した。定期昇給相当分を含む3%の賃上げを求める政府の動きは「(組合の)要求なきところに回答はない。労使自治の原則に基づいて議論を進める」とはねつけた。

(中略)

 産別労組のある幹部は「15年春は政府主導の賃上げムードに乗って浮ついた要求になった面もある」と振り返る。金属労協の幹部は「将来を見据えた議論が必要だ。今がよければいいという要求はしない」と話す。17年4月には消費税率10%への引き上げも予定されるなか、将来の労働・生活環境の変化を視野に要求を決めたという。

 過度の賃上げは将来の雇用不安につながる恐れもある。ホンダが65歳までの定年延長で労使協議に入るなど、従業員が長く安定して働ける環境づくりに向けて、賃金制度や働き方を抜本的に見直す企業が増えている。政府と経営側が賃上げによる国内経済の活性化を重視した論戦を繰り広げるなか、組合は将来を見据えた現実論に立ち返る考えだ。

 

 以前にも連合が安倍政権の賃上げ方針に異を唱えたことがありましたが、この辺も同様でしょうか(参考、誰が音頭を取ろうと賃上げとは良いものだ――が、連合にとっては違うらしい)。政府が賃金を上げよと曲がりなりにも動いている中で、労組の中には賃上げ要請の水準を低く抑えるという暴挙に出ているところも存在するわけです。まぁ、ある種の人々にとって自民党への反対は何よりも優先順位が高いようでもあります。組合員の賃金向上よりも大切なものがあると、この金属労協は判断したようです。

 正直、あろうことか最大労組である連合なんかも民主党の勝利が第一で労働者の権利なんかくそ食らえみたいになっている場面もあります。労働者の味方は、少なくとも労組よりは自民党である――そんな冗談みたいな事態が現実のものになりつつあるのかもしれません。金属労協曰く「(組合の)要求なきところに回答はない。労使自治の原則に基づいて議論を進める」とのこと。この種の組合にとって賃上げを求める自民党は、労使協調という蜜月を破壊する侵入者にしか見えないのでしょう。

 自民党の賃上げ方針だって十分とはいえない、強制力が足りずに口先倒れに終わりそうな部分は多いのですが、それなもなお賃上げを求める声を控える労組に比べれば、相対的には自民党の方がマシだと言えます。先日も書きましたが、結局のところ自民党政治に問題は多々あろうとも、それを批判している人々/組織の方が輪をかけて駄目である以上、安倍政権が「ほかの内閣より良さそうだから」との理由で一定の支持率をキープし続けているのは、至って自然なことなのだろうなと思うばかりです。

 類は友を呼ぶと言いますか、駄目な人に賞賛されているのはやっぱり駄目な人だったりするわけですが、今回の労組の姿勢は日経新聞に「現実論」とヨイショされています。賃上げを唱える自民党と、賃金要請を控えることを「現実路線」と称する労組&経済紙、果たして労働者が支持すべきは、二択であったとしたらどちらなのやら。労組のある幹部とやらは「15年春は政府主導の賃上げムードに乗って浮ついた要求になった」云々とのことですけれど、それは労組が一貫して賃上げを主導「しなかった」からであることを恥じるのが先ではないでしょうかね。労組が仕事をしないから、政府が代わりにやっているだけなんですが。

 いずれにせよ長年続いた過度の賃金抑制が、働いても生活が成り立たない人、子育てや老後のための資金を蓄えられない人を増やしてきた、支出を切り詰めざるを得ない人を増やし、それが日本市場の購買力を損ねても来たわけです。金属労協の幹部に言わせれば「今がよければいいという要求はしない」とのことですけれど、賃金抑制で会社の利益を確保するなんて、それこそ目先のことしか考えていない話ではないでしょうか。賃金を上げて、労働者がモノを買えるようにしていくこと、それが将来への投資です。

 かつてヘンリー・フォードは従業員が自社の車を買えるように賃金を大幅に引き上げました。財界筋からの批判もあったようですが、自らの正しさを証明したのがフォードの方であったことは今更言うまでもないでしょう。反対に――労組が望むように――賃金抑制を続けていけば、短期的には会社は儲かるのかもしれません。しかし、それは将来へ向けて貧困の種をまいているだけ、将来的な市場の縮小を招いているだけの話なのです。いやはや、安倍政権には財界だけではなく労組とも戦ってくれることを期待すべきなのでしょうかね。

 

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サムライの精神

2015-12-02 23:46:13 | 社会

「同性愛者は異常動物」 海老名市議が不適切ツイート(朝日新聞)

 神奈川県海老名市の鶴指(つるさし)真澄市議(71)が29日、自身のツイッターで同性愛者について、「生物の根底を変える異常動物だ」などと書き込んだ。人権侵害だといった批判が相次ぎ、鶴指市議は「不適切な表現であった」として書き込みを削除した。

 鶴指市議は29日午前1時過ぎ、「最近のマスコミの報道は倫理観に欠けている」とした上で、「一例が同性愛とやらだ!生物の根底を変える異常動物だということをしっかり考えろ!」とツイートした。

 ツイッター上では、「ひどい差別、迫害だと思う」「市議会議員としての発言だと考えると失望した」「異常である根拠を示せ」といった批判が殺到。鶴指市議は約10時間後にツイートを削除した。

 鶴指市議は朝日新聞の取材に対し、「酒を飲んでいて、カッときた拍子に書いてしまった。同性愛は個人の自由だと思うが、基本的には男女の別があるので少しおかしい」と話した。

 

 酒を飲んで車を運転して事故を起こせば罪が重くなるわけですが、むしろ自動車事故だけが例外と言いますか、「それ以外」の場合においては概ね「酒に酔って~」は免罪符として機能し続けています。事故を起こした際に飲酒を隠すべくアレコレ策を弄するドライバーもいる一方で、その他の問題行動の場合は「酒を飲んでいた」ことをアピールするのが釈明として成り立つ、こうした風潮は筋が通っているのでしょうか。飲酒窃盗や飲酒暴言、飲酒暴行や飲酒ヘイトスピーチも、飲酒運転と同じような扱いを受けても良いような気がするのですが。

 さて神奈川の市議会議員が同性愛を指して「生物の根底を変える異常動物」などと宣ったとか。ふむ、日本には自分たちを他のアジア人とは違う特別な存在と考える文化もありますが、自分たちすなわち人間を他の生物とは違う特別な存在とは考えないのでしょうかね。性行為に単なる生殖活動とは違う意味合いを見出すのは、それはある意味で誇らしいことである、「獣とは違う」ことの証明であると、そう肯定的に捉えられても良さそうなものと私などは思います。

 我々の先祖の大半は、農民でした。しかし農民である先祖の存在を蔑ろにして、現代日本人の圧倒的多数は「サムライ」を称します。家系図を遙か昔にまで辿っていけば一人くらいは武士もいるのかも知れませんが、それ以上に多くの農民がいたはず、しかし農民の先祖の存在が無視されて武士階級だけが誇られる風潮には、また色々と嘆かわしいものを感じないでもありません。それはさておきサムライが大好きな現代人ですけれど、この武士階級の文化と言えばまず第一は「衆道」が挙げられます。

 柔術は柔道になり、剣術は剣道へと、近代日本は「道」を追求してきました。そんな雨後の竹の子のごとく萌芽した「○○道」と違って本当に武士の時代からの長きにわたる伝統を持つのが「衆道」です。歴史を紐解いても農民出身の豊臣秀吉などは最後まで武士の文化に馴染めなかったようですが、生まれながらの武士は当然のこととして衆道を嗜んできたわけです。中には生涯女人とは交わらないと誓って衆道一筋に生きた軍神だっています。現代で言う同性愛は、まさにサムライの精神そのものでした。

 天皇家は万世一系だとか日本は単一民族国家だとか、そういう類は実のところ「戦後」に創作された代物であることが知られています。どうにも日本の歴史を知らない人が、鯨食文化なりサザエさん的な家族構成とか「近代に作られたもの」を伝統と取り違えているケースは枚挙に暇がないのですが、この同性愛を巡る市議会議員の発言も、そうした誤謬に連なるものと言えるでしょうか。同性愛、少なくとも男性同士の色恋や性愛は日本の古来からの伝統であり、それを今になって否定するのは歴史の断絶を感じさせる振る舞いです。

 ・・・・・

 なお少し話はそれますが「結婚したら男性側の姓を名乗る」ってのも現代にできあがった風習であって断じて日本の伝統に連なるものではないわけです。例えば三本の矢という作り話でも有名な毛利隆元、吉川元春、小早川隆景の兄弟ですが、実の兄弟でも名乗る姓が違うのなんて当たり前のことでした。あるいは岸信介や湯川秀樹も然り、ちょっと昔の日本人にとっても「継ぐ家の姓を名乗る」のは普通のことで、「男性側の姓を名乗る」のが当たり前になったのは本当に歴史の浅いことでしかありません。夫が妻側の姓を名乗ったことで岸家の家庭に何か悪影響はあったのか、誰かお孫さんにでも聞いてみて欲しいところですが、まぁ日本の歴史や伝統を知らない人は多いですよね。

 

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