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ふるさと納税どう変わる? 返礼品競争過熱で見直し

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ふるさと納税の仕組みが6月から変わると聞いたけど、どのように変わるの。ふるさと納税はとても人気を集めているのに、なぜ見直すことになったのかな。

ふるさと納税の見直しの内容や理由について、加藤明美さん(51)と海老沢亜希子さん(33)が斉藤徹弥編集委員に話を聞いた。

――ふるさと納税とはどんな仕組みですか。

もともとは都市部から地方部にお金を流す仕組みをつくろうということで、2008年度に始まりました。年収などに応じて上限はありますが、どこかの自治体に寄付した場合、自己負担の2千円を引いた額が所得税や住民税から控除されます。出身地でなくても全国どの自治体でも寄付することができます。

15年度から寄付先が5自治体までなら確定申告をしなくてもよい「ワンストップ特例制度」が始まり、控除の上限も大きく引き上げられたことで人気に火が付きました。17年度の寄付金額は3653億円に達し、スタートした08年度の45倍に膨らんでいます。

ここまで人気が高まったのは、お得な返礼品がもらえるからです。中でも肉、カニ、コメの3つは「三種の神器」と呼ばれ、これを返礼品に送る自治体に寄付が集中する傾向があります。

――人気があるのに、なぜ見直すのですか。

寄付の集まりやすいお得な返礼品をそろえる自治体間の競争が過熱し、お得感を出すため、高額な返礼品を送る自治体が相次ぎました。17年度の寄付金額に対する返礼品の費用は38.5%を占めています。送料やふるさと納税サイトの事務費などを差し引くと、自治体には寄付金額の半分以下の44.5%しか残りません。地元とあまり関係のない家電製品などの返礼品も増えました。

ふるさと納税制度を所管する総務省は、過度な返礼品競争は「応援したい自治体に寄付する」という制度の趣旨に反するとして、返礼品費用の割合を3割以下にするよう自治体に繰り返し要請してきました。しかし大阪府泉佐野市のように、お得な返礼品をあちこちから用意して「通販サイト」のような状況の自治体もあります。これでは真面目に総務省の要請に応じている自治体が損をします。

寄付者が多く住む都市部の税収の減少も問題になっています。17年度は13都府県で税の流出額の方が大きくなりました。最も影響が大きいのは東京都の自治体です。他の府県では流出額の多くを国に補てんしてもらえますが、財政に余裕のある東京都は補てんを受けられません。世田谷区は約40億円が流出して、「学校の改築1校分だ」と嘆いています。

――どのように見直すのですか。

6月以降の寄付については総務相が指定した自治体でなければ、寄付しても税の控除を受けられなくなります。寄付者にとってメリットがなくなり、寄付は減るでしょう。

指定を受ける条件は2つあります。一つは返礼品費用の割合が3割以下であること、もう一つは返礼品が地場産品であることです。6月までに各自治体の返礼品が2つの条件を満たしているか、総務省が調べて指定自治体を決める見通しです。

地場産品にはそこで主要な加工をした製品なども含まれます。特産の乏しい市町村は、都道府県や近隣市町村と共通の返礼品を設けることもできます。

――今後の課題としては何がありますか。

ふるさと納税に一定の意義があるのは事実です。納税者が寄付先を選択することで税に対する意識を高めたり、自治体間の政策競争を促したりする効果がありました。最近は田植えを手伝うなどの体験型の返礼もあり、都会の人と地方を結びつける役割を果たしています。

寄付文化の定着にも一役買っており、自治体が使い道や目標額を示してネットで資金を集める「クラウドファンディング」や、災害時に被災地に寄付する動きが広がっています。

ちょっとウンチク

交付税減額 自治体をけん制

総務省はふるさと納税を6月から見直すのに先立ち、2018年度に多額の寄付を集めた自治体に配る特別地方交付税を減らした。特別な財政事情が生じた自治体に渡すお金で、多額のふるさと納税で財政が豊かになり、地方交付税をもらわなくてもやっていけると判断した。

対象はふるさと納税が360億円にのぼる見通しの大阪府泉佐野市や、通販大手アマゾンのギフト券を返礼品にして249億円を集めた静岡県小山町など4市町。石田真敏総務相は「過度な返礼品のペナルティーではない」というが、けん制する意味合いはありそうだ。

(編集委員 斉藤徹弥)

今回のニッキィ


 海老沢 亜希子さん 6月の発表会でドビュッシーの作品のピアノ演奏を予定している。アナリーゼ(楽曲分析)のために図書館に通うことも。「1年に1曲、新しい楽曲に取り組めればいいな」
 加藤 明美さん 東京マラソンを沿道で応援した。冷たい雨が降るなか、車いすマラソンの選手の疾走に目を奪われた。「2020年は東京五輪とともにパラリンピックにも注目したいと思います」

[日本経済新聞夕刊 2019年4月1日付]

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