今年のふるさと納税 注目は旅行や体験型返礼品の復活
プロが解説 今年のふるさと納税のポイント(上)

実質2000円の自己負担で、地域の特産品などの返礼品がもらえる「ふるさと納税」。近年は返礼品のラインアップが充実し、コロナ禍の巣ごもり需要も手伝って利用が拡大してきた。
ふるさと納税と言えば、黒毛和牛や高級フルーツといった「普段自分では買わない、ちょっとぜいたくな返礼品」が人気だった。しかし昨年来の物価高を受けて、トイレットペーパーや食用油などの日用品をゲットし、家計の節約に役立てる人が増えている。
ふるさと納税の比較サイト「ふるさと納税ガイド」の編集長を務める飛田啓介さんが注目するのは、コロナ禍のあおりを受けた旅行や体験型の返礼品の復活だ。飛田さんは次のように語る。
「自治体側にも需要回復への期待感があり、JTBの旅行クーポンの導入が増えるなど、コロナ禍の前よりも内容が充実している。全体にまだ動きは鈍いが、都内の区が提供する食事券など人気化しているものもある」
今年も残すところ4カ月、寄付も追い込みのシーズンに入る。そこで、飛田さんにふるさと納税活用のポイントを聞いた。
「寄付の上限額」と「期限内の手続き」がポイント
飛田さんによれば、ふるさと納税の制度を利用する際に注意が必要なのが、「寄付の上限額」と「期限内の手続き」だ。
ふるさと納税では、寄付額のうち2000円を超えた分が所得税や住民税から差し引かれるが、控除を受けられる寄付額には限度がある。上限額は、寄付をする人の年収や家族構成などによって変わる。

気を付けたいのは、今年分の所得に関して確定申告をする場合。他の控除を受けることで上限額が増減するからだ。
「医療費控除」や「雑損控除」を申告すると、控除の適用によって所得が減り、上限額も下がる。一方で、副業の「雑所得」を申告したり、上場株式等の「配当所得」を総合課税で申告したりすると所得が増えて、その分上限額がアップする。なお、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」は医療費控除や雑損控除のような所得控除ではなく税金から直接引かれる税額控除だが、ふるさと納税の控除と併用する場合はやはり注意が必要だ。

上限を超えて寄付をすることも可能だが、超えた分の寄付については自己負担が増える。また専業主婦や学生など収入がなく家族に扶養されている人が自分の名前で寄付をしても、控除の対象となる税金を納めていないため、制度の恩恵にあずかれない。
もう1つの注意点が、ふるさと納税は「寄付したら終わり」ではないことだ。寄付した年の翌年に確定申告をするか、一定条件を満たす会社員なら「ワンストップ特例(寄付金税額控除に係る申告特例)」の申請をする必要がある。飛田さんは次のように助言する。
「ワンストップ特例の申請書の提出期限は、2024年は1月10日だが、年によっては1月11日になることもある。当日必着となっているため、年末ぎりぎりに寄付をした人は遅れないよう注意が必要だ」

確定申告やワンストップ特例の申請を行っても、まだ安心はできない。手続きをしたのに住民税が減額されていなかったといったケースも散見されるからだ。
「寄付した人の手続きに不備があった場合もあれば、行政側のミスの場合もある。いずれにしても、毎年6月に住民税決定通知書が手元に届いたら、ふるさと納税の控除が反映されているかどうかを必ず確認したい」と飛田さん。

居住地への寄付は要注意
他にも注意点はある。
ふるさと納税は使い道を指定できるので、居住地の特定のプロジェクトに寄付をしたいと考える人もいるだろう。だが、居住者だと返礼品送付の対象にならない。
また、ふるさと納税は「節税」のイメージが強いが、寄付をしたからと言って本来払うべき税金が減るわけではない。むしろ、寄付をしない人より2000円分負担が増える。しかし、その2000円を上回る価値の返礼品が受け取れるからお得なわけだ。
形としては"税金の先払い"となるため、飛田さんは人によっては資金繰りも考える必要があると助言する。「会社員などでまだ年齢が若くて毎月の家計の収支がぎりぎりなら、ボーナスを使って寄付する手もある」と飛田さんは続ける。

(ライター 森田聡子)
[日経マネー2023年10月号の記事を再構成]
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