AIは有望株を探せるのか 始まった投資家の挑戦
ChatGPTの投資活用最前線(1)

2023年上半期、株式市場はAIブームに沸いた。震源地は対話型生成AIの「ChatGPT」。質問や指示を入力すると、人間がつくったような自然な答えが返ってくるウェブ上のサービスだ。
開発したのは米マイクロソフトが出資する米非営利法人のオープンAI。22年11月に公開されると、その生成する文章の見事さが話題となり、2カ月で1億人のユーザーを獲得した。同時にChatGPTの導入を支援する会社や社内活用を表明する企業などが相次いでいる。
ChatGPTのように指示を受けて文章や画像などのコンテンツを生成するAIのことを「生成AI」と呼ぶ。米アルファベット傘下のグーグルも生成AIサービス「バード」を試験運用中だ。
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ChatGPTを使って投資に勝つための挑戦が加速
文章作成や翻訳などに絶大な力を発揮するChatGPTだが、個人投資家として気になるのは「これを使って儲けられないか?」だろう。お宝銘柄を発掘したり、売り時・買い時などを教えてくれたりしないのだろうか。残念ながらChatGPTは21年9月までの情報しか学習していないし、原理的にも未来予想は難しい。
ところが、23年5月、ChatGPTが銘柄を選んだ架空ファンドが、英国の人気ファンドの成績を大幅に上回ったというニュースが伝わった。英比較サイトのファインダーが行った実験の結果だ。
一方、米金融情報サービスのブルームバーグは、金融情報に特化した「ブルームバーグGPT」を開発した。ChatGPTは一般のウェブサイトが情報源なので精度に問題がある。ブルームバーグの金融データを情報源にして回答精度を上げようという試みだ。
米国の交流サイトでは個人レベルでChatGPTを投資に活用する試みが報告されている。投資で活用するための拡張ソフト「プラグイン」も続々と登場中だ。
まさに今、ChatGPTを使って投資に勝つための挑戦が行われている。日本でも先進的な個人投資家や一部の機関投資家などが投資関連での活用を模索し始めた。どのように活用して稼ごうとしているのか。明日は活用に取り組む個人投資家の事例を紹介する。
今更聞けないChatGPTの基本
名前は聞いたことがあるが、実際に触ったことはまだないという読者も多いだろう。最初にChatGPTの概要を紹介する。
基本① ChatGPTって何?
質問や指示(プロンプト)を文字で入力すると、答えを返してくる「チャットボット」と呼ばれるウェブ上のサービス。AI技術を使って学習した大規模言語モデル(LLM)に基づいて回答を生成する「生成AI」の一種でもある。
データファイルを与えると、必要なプログラムを内部で生成し、分析した結果を表示することもできる。学習しているのは2021年9月までのウェブ情報。最新情報やインターネットにない情報は学習していない。
回答は、ある単語の次に来る確率が統計上最も高い単語を並べるという方法で生成する。学習している情報と統計を使って「それらしい文章」を切り貼りで生成している。内容の正確性などは判定しておらず、事実とは異なる内容、文意に関係ない内容など、もっともらしい嘘が出力されることもある。
最新のウェブ情報を参照したり、特定のサイトの内容を情報源にしたりする機能拡張ソフト(プラグイン)も用意されている。インターネットにはない情報を学習させたLLMを使うことで精度を上げようとする試みもある。
基本② どうやって使うの?
米オープンAIのウェブサイトでアカウントを作るとすぐに使い始めることができる。ブラウザーにChatGPTの画面を表示させ、質問文や指示(プロンプト)を入力すると答えが返ってくる。答えに対して追加で質問や指示をすることも可能。
無償版の「ChatGPT-3.5」と、月20ドルの有料版「同4」がある。回答の精度や入力できる文字数、プラグインの利用の可否など、両者の機能には大きな差がある。投資関連での活用を考える場合は、最新情報が参照できる有料版を使いたい。
なお、有料版を申し込まなくても①グーグルのブラウザー「クローム」に機能拡張「WebChatGPT」を導入するか、②マイクロソフトのブラウザー「エッジ」の「Bingチャット」を使うことなど、無償版のChatGPT-3.5で最新のウェブ情報を参照した回答を得る方法もある。

基本③ 何ができるの?

その原理上、文章の作成、記事の要約・翻訳、プログラミング、コールセンターにおけるような定型応答業務などは得意。人間以上のパフォーマンスを発揮する場合もある。ネット上に大量の情報がある分野については回答の精度も高い。
投資関連では企業の調査、有価証券報告書の要約、外国語のニュースの翻訳、情報の収集など、事務的な作業の効率化が期待できる。ただし人間のチェックは必要。一方、最新の経済情報などを踏まえた株価や為替の予想など、未来の予測は苦手とされている。
(本間健司)
[日経マネー2023年9月号の記事を再構成]
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