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物価高の今年こそ家計簿を アプリで自動記帳

2022年版 家計管理術(1)

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今年に入って、食品や日用品を中心に物価高が鮮明となってきました。節約に欠かせないのは家計管理です。今月は2022年最新バージョンの家計管理術を考えてみたいと思います。

10%以上の価格上昇も覚悟

この連載の今年最初の記事「値上げ?値下げ? 2022年の家計負担は」の中で、今年の物価高を予測していたことを覚えているでしょうか。残念なことに予想は的中し、物価上昇が本格化しています。

円安基調に原油高、食品を中心とした世界的な原材料価格の上昇が、値上げという形で私たちに襲いかかり始めています。

最初は5%程度の上昇幅だったものが、10%や20%以上という大幅値上げをするような価格改定もちらほら出てきました。長らく10円を維持してきた駄菓子が、価格据え置きの限界に達して12円になったというのも(割合にすれば20%上昇!)、今年の値上げを象徴しています。

このままいくと、年内に2回目の値上げがあってもおかしくない雰囲気です。5%の値上げが年2回あればあわせて10%以上の値上がりになる流れも考えておくべきでしょう。

値上げトレンドがやまないとすれば、家計防衛が必要になります。来年度以降は物価上昇分の賃上げが確保できるかもしれませんが、2022年度に関しては、今の給与でやりくりをするしかありません。

家計を見える化し、支出減少の余地を見いだすために必要なツールはやはり「家計簿」です。今年ほど、家計簿が重要になった年はありません。

古い「家計簿」のイメージは捨ててやり直そう

日記と家計簿といえば「三日坊主」の代名詞でした。しかし、私たちは毎日、日記を書くようになっています。そう、SNS(交流サイト)です。

身構えてしっかり書かなくてもいいこと、スマホでいつでも書けること、写真を活用できることなどの変化によって、日記は誰にでも続けられるものに変わりました。かつては紙の日記帳を用意し、夜に自宅でしっかり書こうと身構えてしまったからこそ、私たちは三日坊主になってしまったわけで、家計簿もそうです。

(1)紙の家計簿に鉛筆で記入(2)夜や週末にまとめ記帳(3)数件の記入忘れに四苦八苦(4)小計や合計のためにひたすら電卓をたたく――という昔ながらのルールで行ってきたからこそ「三日坊主」になってしまったわけです。

日記がSNSで簡単かつ楽に続けられるようになったのと同様に、家計簿の世界にもイノベーションが起こっています。例えばこんな感じです。

紙の家計簿 → スマホアプリの家計簿
鉛筆で記入 → タッチパネルで記入
夜や週末にまとめ記帳 → スマホカメラでその場記帳
記入忘れ → 自動記帳機能で入力漏れが激減
電卓たたき → スマホアプリが自動計算、自動グラフ化

今まで抱いていた家計簿の古いイメージである「つらい」「苦しい」「大変」という気持ちをすべて捨ててしまいましょう。家計簿作成はいまや簡単かつ楽に実行できるものです。

そして、記帳の時間を減らした分、本来家計簿が担うべき役割である「分析と改善」に、私たちの時間を振り向けることができるようになったのです。これこそまさにフィンテック(金融とITの融合)です。

2022年は自動記帳がカギ

以前、家計簿アプリの開発者から「今でも週末にまとめ記帳する人が多い」という話を聞きました。これこそまさに昔の家計簿のイメージが残っている証しでしょう。

SNSの投稿を通勤時間やランチタイムにやるように、家計簿アプリも時代に合わせて変化しています。カギとなるのは「自動記帳」と「その場記帳」です。

まず、「自動記帳機能」を生かします。複数の口座の取引情報を集約するアカウントアグリゲーション機能、つまりフィンテックのメリットを生かすことができる家計簿アプリを使用することで、家計簿の記帳負担は一気に半減します。

Zaim、マネーフォワードME、マネーツリーが自動記帳可能な3大アプリです。これらのアプリは銀行のモバイルバンキング、クレジットカードやECサイトのアカウント、電子マネーなどと連携させることができ、電子的な利用履歴を自動的に記帳させられます。

銀行の通帳から引き落とされた水道代、クレジットカードから引き落とされたスマホ料金などを手入力するだけで数十分かかります。面倒だからサボってしまいますが、こうした手間はすべて自動化されます。これほど楽なことはありません。

一部のキャッシュレス決済では費目が記入されないこともありますが、日付と金額、店名などが入力されているだけでも便利ですし、そこまで分かれば修正は容易でしょう。

キャッシュレス決済を積極的に利用している人なら、すでに記帳項目の8割以上が自動で完了させられます。これをきっかけにクレジットカードや電子マネーの利用を増やしてみるのも一考です。

現金出費はその場記帳、カメラ記帳

次に「その場記帳」をします。個人商店などでの買い物、自動販売機など、現金払いが求められる買い物はまだゼロにはできません。これらの記帳をためないことです。

「もう数百円、何かに使ったんだけどなあ……」という記憶を探ることに時間を費やすのはストレスですし無駄です(だいたい思い出せない)。そのせいで家計簿記帳を断念するのはさらにもったいないことです。

その場で記帳すれば、週末のまとめ記帳の手間や、記入漏れで悩むことがなくなります。これもスマホの機能で実現します。今や1000万画素超となったスマホカメラは、実はレシートを撮影して自動認識、自動記帳するために進化したといっても過言ではありません。

現金払いをしたら極力その場で記帳します。私はスーパーマーケットの買い物(ほとんどはキャッシュレス決済ですが)を終えた瞬間、袋詰めをする前にカメラでレシートを撮影します。慣れれば数十秒もかかりません。

あるいは、利用後数時間内で記帳することをルール化しておきます。例えば「お昼休みに注文したランチが届くまでのあいだ」にその日の午前中の現金払いをまとめ入力します。

「トイレタイム(個室)」「電車移動時間」などのすきま時間にも、前回記帳した以降の現金払いを入力します。

実はこうしたすきま時間は「スマホゲーム」か「SNSウオッチ」に費やされていたものです。家計簿アプリにその1~2分をシェアしてください。「いいね!」ボタンを押したり、パズルゲームをグルグル回したりしている時間を、家計簿アプリにちょっとだけ分けてあげたところで、おそらくあなたの人生でマイナスはほとんどないでしょう。

それどころか家計簿がすきま時間で仕上げられれば、物価上昇時代の家計防衛体制が確立することになります。

ものは試し、家計簿アプリをスマホにインストールして設定してみてください。前述のアプリは基本利用は無料なので、実際に使い勝手を試すことができます。銀行やクレジットカードとの連携がやや面倒ですが、そこを突破できれば、あなたの家計を見直す強力な武器が手に入ることでしょう。

来週以降は家計簿の分析をしていきます。それまでに、ぜひ初期設定をしてみてください。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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