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国民年金「65歳まで納付」案 若者世代にはプラス

正しく年金を理解する(3)

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今月のテーマ「正しく年金を理解する」は、正確な理解というより、少し肩の力を抜いて理解してみようというイメージです。今週考えてみたいのは、「65歳まで国民年金保険料を納める」という改革案についてです。一見すると負担増ですが、実は若者世代にとってはプラスが多い改正案なのです。

プチ炎上中の「国民年金45年加入」

先月、厚生労働省の社会保障審議会年金部会が開催されました。久しぶりの開催であり、5年に1度の年金財政検証に向け、年金改正の議論を行っていくことが期待されています。

メンバーが入れ替わったため、事務局から過去の議論のおさらいがあり、各委員が自己紹介がてら問題意識を述べるだけで初回会合は終わりました。

ところが、気の早いメディアでは「65歳まで国民年金加入することについて議論」「5年の負担増」のような記事が掲載され(実際には前回の議論の紹介としてわずかに出たにすぎない)、世論の反応はおおむね批判的でした。

現状をまず確認します。20歳から60歳まで40年間国民年金保険料を納めれば、満額の老齢基礎年金を65歳から受けられます。加入期間が5年長くなると、5年分多く保険料を納めることになる、つまり負担増になるという部分が注目されているわけです。

前々回に取り上げたパートの厚生年金適用もそうでしたが、「負担増」と「給付増」の双方を見てから判断する必要があります。

年金世代の給付は増えない 現役世代のみプラス

現在の国民年金保険料は月1万6590円です。5年分となれば合計99万5400円の負担増ということになります。約100万円です。

これだけをみると「若い世代にだけ負担増を求めて、年金世代の給付に使うのだろう」とか「負担増だが年金は減額されるのだろう」というイメージが浮かびます。

しかし、国民年金5年の負担増が給付に反映されるのは今の年金生活者ではありません。年金部会の資料を読み解いてみると、給付が増えるのは「5年多く保険料を納めたこれからの世代」の話だということが分かります。

前回(2019年)の財政検証結果にオプション試算というものがあり、仮に国民年金に45年加入し、その分の年金額を増額させたらどうなるかというものがあります。

現在は満額の年金が40年加入でもらえるわけですが、45年加入した人は12.5%長く加入することになりますから、基礎年金額も12.5%増やしてみたらどうなるかというシミュレーションです。これをみると、全世代を対象に行われるマクロ経済スライドの給付水準引き下げをカバーし、これからの世代の将来の年金水準を大きく引き上げることが示されています。

つまり、「5年負担増」は「5年分の給付増」であり、それは負担をした人たちだけに反映されることが想定されているわけです。

すでに65歳を超えている人は追加の負担もありませんが、年金額の計算にも変更がありません。つまり年金生活者の年金増には回りません。

仮に77万7800円もらえる満額の老齢基礎年金(2022年度の年額)が12.5%アップするとすれば、87万5025円、金額では97225円の増額になります。65歳男性の平均的な老後が約20年、女性は約25年ですから、負担増よりも給付増のほうがメリットがあるといえます。

何十年も変わらぬ制度の根幹を見直す時期

1961年にスタートした国民年金制度、1990年代に現状の枠組みへの改正をした厚生年金制度が、2020年代の働き方とマッチしていないのは当然のことです。当時、「人生100年時代」といったら誰もが笑いました。70歳まで働くといっても実感のなかった時代です。

厚生年金は「働いているなら70歳まで」保険料を納め、その分年金額も増える仕組みに制度をアップデートをしました(もはや75歳でもおかしくないですが)。ところが、国民年金は、保険料を納める時間として「60歳まで」としていた60年前の仕組みをいまだに引きずっているわけです。

当時の感覚で、40年を超えて働くことを想定していなかったことは当然のことでしょうが、さすがに今は違います。この間、男性の平均寿命は16年も延伸しており、5年納付期間が延びることはそうおかしくないように思います。

40年超働く時代へのアップデート

この改正案が実現すると、自営業者(国民年金保険料を納付)だけではなく、会社員(厚生年金保険料を納付)にもプラスがあります。

よく「厚生年金保険料は国民年金保険料分を含む」と説明されていますが、厚生年金に40年超加入しても、国民年金の給付額を計算する際に算入されるのは40年が上限です。

大卒の22歳から65歳まで厚生年金加入をしたとすれば43年加入することになりますが3年分の保険料が年金に反映されていないことになります。かといって厚生年金保険料がダウンすることはありません。もし「国民年金45年加入」が実現すれば、こちらも45年分年金額に反映されることになります。

これも40年を超えて会社員をする想定がなかった、数十年前の計算式がそのまま今も引き継がれているせいです。つまり60歳代も働き続ける会社員にもメリットがある改正になりうるわけです。

実際の議論は、まだこれからですが、少なくとも「負担増で給付減」と批判をするのは時期尚早です。過去の年金改正議論をひもといてみれば、厚生労働省のねらいはそこにはありません。むしろ厚生労働省が「負担増で給付も増」という改正を目指していくことを若い世代はサポートしていきたいところです。なにせ自分たちだけが給付増になる改正なのですから。

これは、「人生100年時代」に必要な年金制度のアップデートなのです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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