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成長株投資は「素人」こそ勝てる 個人投資家座談会

スゴ腕個人が語り合うここからの投資戦略

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株式投資で数億円の資産を築いた辣腕の個人投資家たちは、先行き不透明感が増す足元の株式相場にどのような戦略で臨み、どんな視点で有望株を見極めているのか。成長株投資で資産を大きく増やしてきた奥山月仁さん(ハンドルネーム)、DUKE。さん(同)、DAIBOUCHOUさん(同)の3人に、銘柄選定のコツや投資戦略について率直に語り合ってもらった。

――皆さんは成長株投資で資産を大きく増やしました。米資産運用フィデリティで活躍した伝説のファンドマネジャー、ピーター・リンチ氏の投資手法を取り入れた点でも共通していますね。

奥山月仁さん(以下敬称略) リンチ氏の手法は、私にとっては教科書的な存在です。リンチ氏の手法をベースに投資を始めたのは、2008年のリーマン・ショック直前でした。同じ頃に投資ブログも始め、そこで公開するための専用口座を開きました。その口座に資金100万円を投じたのですが、13年後に追加資金の投入なしで約28倍となりました。

偶然ですが、この28倍という数字は、リンチ氏が同じ13年間にファンドで上げた成績とほぼ同じです。「身近な会社の株の中から成長株を発掘して、中長期で投資する」という手法をそのまま素直に取り入れ、同じような成績を上げることができました。

DAIBOUCHOUさん(同) リンチ氏の手法を取り入れたのは、私も同じぐらいの時期です。株式投資は2000年から始めて、最初は土地や設備などの保有資産の評価額に比べて時価総額が小さい資産バリュー(割安)株に投資先を固めていました。

その後、リンチ氏だけでなく、フィリップ・フィッシャー氏やウォーレン・バフェット氏などの著名投資家の投資法について書かれた本を読んで成長株投資にシフトし、投資成績が向上しました。

リンチ氏については、「業績が伸びているが不人気な銘柄に投資する」という手法に共感しました。資産の拡大に大きく貢献してくれたのは、アーネストワン(現在は、統合して飯田グループホールディングスに)など、まさに業績は好調だったけれども、不人気だった新興不動産会社の株です。信用取引も使って大きな利益を上げることができました。今は対象を広げて、高配当株などにも投資しています。

DUKE。さん(同) 私はウィリアム・オニール氏の投資手法をベースにして、年初来高値や昨年来高値を付けた銘柄を買って、さらに高値で売るという投資を手掛けています。

高値を更新した銘柄には、事業などのビッグチェンジ(大きな変化)が起きていることが多い。そうした変化が起きていることを確認して、業績の拡大が続きそうな銘柄を購入しています。リンチ氏の手法では、「消費者の視点で銘柄を探す」という部分を取り入れています。

アマチュアの強みを生かす

――リンチ氏は著書で「アマチュアだからこそ株式投資で勝てる」と主張しています。

奥山 「素人の発想で勝てる」という指摘は大きな気付きになりました。「業界の詳しい情報を入手するなど、深いところに入り込まないと勝てない」と錯覚している個人投資家は多い。でも、そう難しく考えずに自分の身の回りでうまくいっている会社を選べば、一定程度の勝率を上げることはできる。リンチ氏流の投資を実践して、このことを体感してきました。

例えば、最近では釣り具メーカーのグローブライドに投資しました。家の近くにある釣具店に人がいっぱい集まっていることにヒントを得て、関連銘柄として同社の株に目を付けたのです。2000円付近で買い集めて、21年後半に売却し、2倍近い利益を取ることができました。

他にも、同僚が実際に製品を使っていたパソコン販売のMCJに投資するなど、日々の暮らしや仕事の中で何か発見があったら、こまめに関連銘柄を調べています。

DUKE。 日ごろの発見といえば、コロナショックが起きた後に「妻の意見がこれほど重要か」と思い知らされることがありました。「(ファッション通販サイトの)『ZOZOTOWN』で狙っている商品がすぐ売り切れる」と妻が嘆くのを聞いたのです。それですぐにZOZOを購入して大当たりしました。それ以来、流行しているものを妻に定期的に聞いています。

DAIBOUCHOU 身近な銘柄から探すと、他の個人投資家や機関投資家がその銘柄の良さに気付く前に投資できて初動に乗りやすいですよね。

奥山 私のような会社員投資家はサラリーマンの視点を生かす手もあります。仕事を通して自分が詳しいビジネスの関連で、伸びる企業を見つけることができます。

DUKE。 気になる銘柄を見つけたら、その会社の商品やサービスを体験することが大事だと思います。過去の10倍株を調べたことがあるのですが、10倍株の多い業種のトップ3は情報通信、サービス、小売りでした。サービスや小売りは、消費者目線のリサーチがしやすい。

大化け株をものにしたケースを振り返っても、プレミアアンチエイジングの化粧品を自分で使ったり、子供にジャストシステムの通信教育を試させたり、神戸物産の「業務スーパー」で買い物してみたりというように、商品やサービスの体験が役立った例が多くあります。

DAIBOUCHOU 神戸物産は16年に安値で買いました。インサイダー取引の疑惑が浮上し(その後不起訴)、為替差損やデリバティブ関連でも評価損が出て、投資家から見放されて株価が大きく下がっていたのです。でも、実際に業務スーパーへ行くと、そこでしか買えない商品があって宝探しみたいで面白い。投資家は皆「駄目だ」と思っていたわけですが、利用客がインサイダー疑惑を意識して買い物をやめるとは思えなかったので、購入に踏み切りました。19年まで何度か売買し、最大約5倍高で売却しました。

「不人気」と「成長性」の掛け算で大化けを狙う

――DAIBOUCHOUさんは今も人気株は避けて投資していますね。

DAIBOUCHOU 企業の成長を100%は信用していないからです。ですから、株価が上昇する保証として、不人気や資産バリューといった割安さの要素を重視して投資しています。「不人気」と「成長性」の掛け算でテンバガー(10倍株)を狙うという考えです。そうした銘柄は皆が騒ぎ出して株価が上昇軌道に乗ると急騰するので、大きな含み益を抱えて株価を追い掛けることができる。多少相場が揺らいでも大丈夫という安心感があります。

――今年の相場で皆さんはどのような戦略を取っていますか。

奥山 小型株は成果を上げるのが難しい状況ですね。相場が軟調な時に、大口の投資家は小型株から逃げる傾向がありますから。だからといって、完全には撤退していません。今は小型株だけでなく、日産自動車住友金属鉱山といった大型株も保有しています。

DAIBOUCHOU 私も株価が下がっていてつらいのですが、(運用資産のほとんどを株で持つ)フルポジションを続けています。足元では、地方銀行の株など、配当利回りの高い資産バリュー株を多めに保有しています。配当収入を生活費に充ててもいますので。

良い株は案外下がらない

DUKE。 私は警戒してポジション(持ち高)をゼロにしていますが、相場から離れず有望株を見極めようとしています。逆風に強い銘柄をウオッチしています。

DAIBOUCHOU ずっと株を売買していて思うのですけれど、「下がりそうだ」と思わなかった時がないんですよね。どんな時にも何かしらの悪材料がありますから。

奥山 確かにそうですね(笑)。

DAIBOUCHOU 13年の5月、16年の初頭、18年後半などで相場全体が急落した時にも、「逃げて楽になりたい」と思いました。ですが、中小型株は買い手がなかなか付かない。少しずつ売っているうちに全体相場が反発してくれる。様子を見ようと思ったら上がったということを繰り返しています。相場の急落をうまく乗り切れたらいいのですが。

奥山 「相場に連れ安したら仕込みたい」と狙っている株の価格は、案外下がらないんですよね。良い株がほどほど安いと思ったら、タイミングは考え過ぎずに買ったらいいと思います。実際、いつが一番良いタイミングか分からない。確かに今は中小型株への投資は厳しい局面ですが、買ってから下がってしまっても、成長性の高い企業の株価はいずれ戻ります。「下がっても売らない」という覚悟で買うといいでしょう。

(大松佳代)

[日経マネー2022年4月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年4月号 中長期でがっちり儲ける 次世代10倍株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/2/21)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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