昭和の財務戦略「株式持ち合い」 狭まる包囲網
政策保有株 まとめ読み

昭和の財務戦略の象徴といわれてきた企業の株式持ち合いが例年になく注目を集めています。理由はいくつかあります。一つは歴史的な株高で、日経平均株価が4万円を突破するなか、塩漬けだった保有株を手放して株主還元や成長投資に充てるべきだとの声が機関投資家などから強まっています。
もう一つ見逃せないのがガバナンスやコンプライアンスの問題です。大手損保のカルテル不正などを受け、金融庁は損保各社にゆがんだ取引の遠因となっていた政策保有株を手放すように求めました。損保は相次いで持ち合いをゼロにする計画を打ち出しました。大量の政策株を持つ損保が動いたことで、3メガバンクや事業会社などの持ち合い縮減を後押しする一因にもなりそうです。
新たな問題も浮上しています。持ち合い株を売買目的の「純投資」に振り替える動きです。有価証券報告書を調べたところ、純投資への振り替えが目立ったのは地銀でした。金融庁は、企業が持ち合い批判から免れるための「ウオッシュ(見せかけ)」が一部で紛れていないかどうか全上場企業の調査に乗り出しています。企業は本当に売るのか、はたまた持ち続けるのか。投資家の視線は厳しさを増しそうです。
日本経済新聞ではニュースだけでなく、企画「岩盤政策株」やコラム「金融取材メモ」で持ち合い株の問題に迫りました。改めてご一読いただければ幸いです。今後も注意深く取材していきたいと考えています。
(金融グループ 南畑竜太)
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