相続税、10人に1人が対象 税額の把握と対策は早めに
相続プランニング2024(6)

国税庁の「令和4年分相続税の申告事績の概要」を見ると、亡くなった人のうち相続税の申告を行った人の割合は9.6%。この中には、申告して小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用して相続税が非課税となった人も含まれる。そのため、実際に相続税を負担した人はさらに少ないと考えられる。

とはいえ、不動産や株式の価格高騰を背景に、相続税の課税対象者はじわじわと増加している。地価の高いエリアに戸建ての実家がある人は、相続税の心配をしておいた方がいいかもしれない。
基礎控除以下なら非課税

相続税には「3000万円+相続人の数×600万円」の基礎控除があり、それを超えた額が課税対象となる。超えた額を法定相続割合に応じて分割取得した場合の額に税率をかけて相続税額を算出し、合算。それを再度相続人の取り分に応じて振り分け、負担額を割り出すのが計算の流れだ。最後に配偶者の税額軽減や兄弟姉妹、おい・めいなら2割加算といった各相続人の立場に応じて調整する。
参考までに、相続人の構成と基礎控除を引く前の課税価格でおおよその相続税の総額が分かる早見表を掲載した。前回の課税価格(課税される相続財産)を当てはめてみてほしい。

相続税がかかる場合、実際に相続が発生してしまうと10カ月以内の申告というゴールを目指して慌ただしく準備を進めていくことになり、節税を検討する余裕はあまりない。相続発生後に活用できる節税策も限られる。相続税がかかることが分かっているなら、親が元気なうちから対策を考えたい。
注目高まる孫への生前贈与の注意点
税理士の福田浩彦さんは、今年から相続関連の税制が大きく変わったことで孫への生前贈与が注目されていると指摘する。子が存命であれば孫は相続人でなく、孫への贈与は持ち戻しの対象にならないからだ。しかし、次のような点には注意が必要だという。
「孫が祖父母から生前贈与を受けていた場合、祖父母の死後に孫が相続財産を受け取ると、持ち戻しの規定が適用されます。例えば、祖父母が自分たちを契約者、被保険者にして孫を受取人とする生命保険をかけていた場合は祖父母の死後に孫が死亡保険金を受け取ることになり、孫への生前贈与でも持ち戻しの対象になります」

上に一般的な相続税対策をまとめたが、生命保険の非課税枠(相続人×500万円)、相続財産の評価額を抑えられる不動産の活用など、様々な手法がある。
とはいえ、節税に走り過ぎて相続でもめるようでは元も子もない。福田さんは自身の経験から「相続は人それぞれなので、どの節税策が有効かは家庭によって異なる」と話す。早い段階から専門家の意見を聞いておくのも手だろう。
(ライター 森田聡子)
[日経マネー2024年7月号の記事を再構成]
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