不動産取引の相談先は 仲介や開発、得意分野で決める
20代からのマイホーム考(62)

自宅の売買や賃貸借など、不動産に関する悩みは不動産会社に相談するのが至極当然のことのように思えます。ただ、不動産会社といっても実はいろいろな種類があり、どこに相談すればよいか迷うこともあるでしょう。今回はいくつかの相談内容を例に、不動産会社の種類や選び方について整理してみました。
賃貸や中古住宅の売買は不動産仲介会社に
賃貸物件を探したり、持ち家の売却や中古住宅の購入を検討したりする場合は、駅前などに店舗を構えるいわゆる「不動産屋さん」と呼ばれる不動産仲介会社ならどこでも対応してくれます。幅広い地域で営業する大手や中小、地元に根差した会社など様々です。住まいに関する仲介業務は定型化されたものが多く、物件検索サイトの発展や認知度の向上で売り物件情報の非対称性(消費者と不動産仲介会社との情報格差)が少なくなっていることから、どこを選んでもさほど変わらないサービスを受けられます。なお、中古住宅の購入後に設備が故障した場合の保証などで差別化を図るケースが多いのでチェックするとよいでしょう。
分譲住宅はデベロッパー、注文住宅ならハウスメーカーも選択肢
新築の分譲住宅や分譲マンションを買いたい場合は「デベロッパー」と呼ばれる不動産開発会社に相談するのが一般的です。デベロッパーの販売子会社や委託先の不動産販売会社が窓口になることもあります。
間取りや設備、外観などを選べる注文住宅の場合、土地探しから注文建築までをワンストップで対応する不動産会社があります。土地探しだけでなく、設計監理や建築施工の機能も備えた不動産仲介会社というイメージです。建築士の資格を持つ社員を多く抱え、希望の建物に適した土地を探してもらえるメリットがあります。ハウスメーカーの中でも大手ではワンストップ対応できる体制を整えているため、注文建築を希望する場合はこうした会社を選んで相談するとよいと思います。
また、建築施工の機能を持たず、土地探しから設計監理までを受け持つ不動産仲介会社もあります。施工会社は相見積もりによって選定することが多いようです。施工会社を自由に選びたい方にはお勧めです。設計監理とは設計だけをして終わるのではなく、建物が設計図書や仕様書の通りに造られているかまでを点検・確認してくれますので、建物が引き渡されるまでお付き合いは続きます。こうした不動産仲介会社の中には「中古マンションを購入後、リノベーションして住みたい」という方のニーズに応えてくれる専門不動産会社もあります。
DIY可能な賃貸は「まちづくり系仲介」
最近では内装などを自分自身でリフォームやリノベーションできる「DIY可能な賃貸物件に住みたい」や「まちに関わりながら暮らしたい」といったニーズも増えています。こうしたニーズに応えてくれるのが、まちづくり系の不動産仲介会社です。空き家問題を解決しながら地域価値をアップできる活動をしたいという意識が強い傾向があり、これまでの不動産仲介会社とは趣がかなり異なります。こうしたスタンスに共感できる方にとっては相談相手として非常に面白いのではないかと思います。
相続や投資は「悩みの根源」探せる不動産会社を
相続対策や投資戦略など、現在から将来にかけて(子世代や孫世代にかけて)の家族の不動産やその他財産価値を維持向上するための課題を見いだし、何らかの手を打ちたいという悩みもあるでしょう。大手や中堅不動産会社を含め、こうした総合的な不動産コンサルティングを受け付けている会社は多くあります。しかしこの分野は、顧客の悩みの根源となる「真の課題」を発見しないと、対症療法になりかねません。課題解決に必要な税理士や弁護士などの専門家を招致し、全体を統括していく力量が求められます。ですので、会社の規模やブランドだけでは選定しにくいというのが実情ではないかと思います。
相談を担当する方に幅広い不動産実務経験や、金融、信託を含む法務、税務、マーケティング、建築、住宅の劣化対策などの知識やノウハウがあるのかどうかがポイントになります。宅地建物取引士であることは当然として、建築士、施工管理技士、ファイナンシャルプランナー(FP)、経営学修士号(MBA)といった資格などを保有する社員がおり、チームとなって対応してくれるような会社であればよりよいと思います。
このように、不動産会社には様々な種類があり、得意分野も大きく異なります。自身の相談したい内容に合わせて不動産会社を的確に選ぶことはとても重要だと思います。

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