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子育てで退職したい… お金の計画、柔軟に見直し

Dr.マネーお悩み外来 Vol.25

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お金の悩みは千差万別。でもご安心ください。解決策は必ずあります。「Dr.マネーお悩み外来」では、あなたがお金と上手に付き合い、より豊かな人生が送れるようファイナンシャルプランナー(FP)の白鳥京香がお手伝いいたします。本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」のzoom相談にやってきました。

Case19: 夫婦共働きの女性Tさん(30歳、会社員)は今後の働き方について悩んでいます。出産育児、教育、住宅取得、老後生活などライフイベントに対する費用のかけ方、それらを含めたお金の人生設計の考え方について相談に来ました。

Tさん 生涯年収を考えるとこのまま産休育休、時短勤務を利用しながら正社員として働いた方がよいのはわかっています。しかしストレスが多い職場のため、できれば出産を機に仕事をやめて子供が小学生くらいになったらパートで働きたいと思っています。子供は2人欲しいですし、家も購入したいです。働き方でお金の設計がどう変わるのか教えてください。

白鳥 お金の計画を考える上で、無理のない自分らしいライフデザインが描けることが望ましいと思います。ライフイベントにどう取り組むのか、なにを優先するのかを長期的な視点で考えることは大切です。同時にそれをどう実現するのかを具体的に考えていきましょう。

今後の大きな支出は「教育費」「住宅資金」「老後生活費」です。

教育資金は「公立」と「私立」で大きく変わってきます。また自宅通学でない場合は生活費なども必要になります。

公立小学校→公立中学→私立高校→私立大学(理系)なら総額約1172万円というように、「学習費・教育費の総額」を参考に教育費がいくらかかるかを計算してみてください。

幼児教育・保育の無償化で3歳から5歳児の利用料は無料です。また所得制限はありますが「児童手当」や「高等学校等就学支援金制度」、各都道府県が独自に国の制度に上乗せする形で私立高校などの授業料を支援する制度を設けている場合もあります。大学進学で利用できる返済が不要な奨学金も増えてきていますので考慮してください。

住宅価格は参考表を載せますが地域、形態、築年数等によって、また返済期間や借入金利でも差が生じます。居住地の相場等で考えてみてください。

現役時代はこれらの支出を賄いながら「老後資金」を計画的につくっていきます。老後は公的年金とためたお金を取り崩して生活費としますが、何歳まで働き、リタイア後の期間を何年見込むか、老後生活費は現役時代の何割くらいになるかをイメージして自分の必要貯蓄率を求めます。

少し古いですが内閣府「国民生活白書」(2005年)によれば、大学卒業後に同一企業で正規雇用として働き続けた場合の生涯所得は平均2億7645万円になるのに対し、出産退職後パート・アルバイトとして子どもが6歳で再就職した場合の生涯所得は4913万円となり、逸失率は82.2%と推計されています。

将来の収入の想定は、今後「同一労働同一賃金」が進むことで、これまでの年功的な右肩上がりの賃金上昇とは変わってくるかもしれません。老後受け取る老齢厚生年金の額も年収や被保険者期間によって変わります。女性が非正規雇用になることで、子供の教育費、住居費、老後生活費など今後の人生設計の選択肢に差が生じる可能性があります。

Tさんが①今後65歳まで正社員で仕事を続けた場合②2人の子供を出産し育休と時短勤務を利用し65歳まで働いた場合③出産退職しパートで65歳まで働いた場合――で考えてみましょう。

Tさんの今後の収入は①2億2000万円②1億9000万円③6000万円――と仮定します。②は2人の子供を出産して3歳まで時短勤務にするとし、出産手当金、育児休業給付金を受け取り、復職後は残業ができないとして、①の場合より15%くらい収入が減ると想定しています。③は①の3割程度としました。

現役時代を通じて今後受け取れる「手取り年収の平均値(Y)」を使って、「人生設計の基本公式」で計算したTさんの老後生活費率(x)、必要貯蓄率(s)、老後生活費の関係はこのようになります。

③は必要貯蓄率が35%にも上り、支出の計画を立て直す必要があることがわかります。住宅価格を下げる、教育費負担を減らす、あるいは長く働くなどの方法があります。

人生のお金についての考え方はシンプルです。人生の残り時間を「現役期間a年」と「老後期間b年」に分け、Yに対してsの率で貯蓄をしていくと、現役時代の生活費はY(1 ー s)です。sが大きくなると現役時代にゆとりがなくなります。

子供が成人し、住宅ローンも終わるとすれば、現役時代より支出が減ります。今のx倍の金額で生活すると老後生活費はxY(1 ー s)です。

老後は年金(P)とためたお金を計画的に取り崩した合計を生活費とします。取り崩し額は貯蓄額(A)を老後年数(b)で割り算したものです。

ライフプランを立てるというのは、必要貯蓄率をいくらにするかを具体的に考えることでもあるのです。

思い描くライフプランを実現するために、女性の負担が大きくなりがちな子育て期をどう乗り切るか、夫婦でしっかり話し合い、必要なら転職なども検討して正社員のまま働ける環境をつくりたいものです。会社の制度を確認して、在宅勤務や育児休暇などを利用しながら長く働けるように考えてみてください。

今後は「70歳までの高年齢者就業確保措置(努力義務)」により長く働くことが可能になります。年金の「受給開始時期の選択肢の拡大」なども進みます。どう働きどのような人生を送るのか、ライフプランはますます多様になってくるでしょう。しっかりと夫婦でコミュニケーションをとりながら、ライフプランの変化に応じてお金の計画を見直すことが必要です。

きょうの処方箋です。

自分のイメージするライフプランを実現するために数字を入れ替えてシミュレーションをしてみましょう。

実行できる必要貯蓄率を求め、確実に貯蓄(運用も含みます)し、お金の不安がない幸せな人生を送ってください。

Dr .マネーお悩み外来は今回でおしまいです。これまでお読みいただきありがとうございました。

岩城みずほ(いわき・みずほ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に「『保険でお金を増やす』はリスクがいっぱい」(日本経済新聞出版)など。https://www.officebenefit.com/

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