アマゾンのキンドル199ドル iPadなどに値下げ圧力
インターネット小売り最大手の米アマゾン・ドット・コムが多機能携帯端末(タブレット端末)に参入し、価格競争を仕掛ける。11月に売り出す「キンドル・ファイア」は199ドル(約1万5000円)と米アップルなどの製品を大きく下回る。当初は米国のみでの販売だが、日本勢を含む各社が事業戦略の見直しを迫られそうだ。
「高級な商品を低価格で提供する」。28日の記者会見で、アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は強調した。タブレットで先行する米アップルの「iPad(アイパッド)2」などは最低価格が499ドル。アマゾンのファイアはこれらより6割安い。アナリストの事前予想(250ドル)もかなり下回る価格設定で、業界では「原価割れではないか」との声すら出た。
ファイアはiPad2に比べ記憶媒体の容量を8ギガ(ギガは10億)バイトと半分以下に抑えた。内蔵カメラも省いた。一方で、同社が得意とするクラウドコンピューティングなどで機能を補完。収益は自社で手掛ける書籍や音楽・映像などのネット配信による手数料で補う。
アマゾンは「日本などでの発売時期は決まっていない」(幹部)としている。11月に発売する端末は英語での利用が前提となっており、書籍などのコンテンツサービスも米サイトにアクセスして購入する方式が中心だ。
競合メーカーは価格面での対応を迫られることが必至だ。4~6月期だけで925万台のタブレットを販売したアップルでも、段階的な値下げを迫られるとの見方が浮上している。
規模が劣る日本メーカーなどは利益の確保に苦戦しそう。東芝やソニーなどの端末は国内では4万~5万円で販売している。各社は高画質技術などで工夫をこらすが、市場での占有率は低い。アマゾンやアップルのようなコンテンツ配信による収入も期待しにくい構図だ。端末価格を含め事業戦略の見直しを迫られる可能性が高い。
(ニューヨーク=奥平和行)