リニア中央新幹線、「直線ルート」採用へ 国交省小委
費用対効果で優位
国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会(国交相の諮問機関)は20日の会合で、東海旅客鉄道(JR東海)が計画するリニア中央新幹線について「南アルプスルート(直線ルート)」が費用対効果で優位だとする試算を公表した。ルート問題はこれで事実上決着し、直線ルートが採用される方向だ。
試算によると、整備による効果を建設費などの費用で割った数値は基本ケースで「南アルプスルート」が1.51倍となり、諏訪方面に迂回(うかい)する「伊那谷ルート」の1.24倍を上回った。
委員会は年内にも中間報告をまとめ、直線ルートの優位性を示す見通しだ。長野県内には地域振興のため迂回ルートを望む声もあるが、JR東海は直線ルートを要望していた。
試算では経済成長率が1%で推移し、2045年に東京―大阪間で開業した場合を基本ケースにした。それによると、直線ルートの費用は5兆5200億円で、効果は8兆3500億円。これに対し、伊那谷ルートの費用は6兆500億円なのに対し、効果は7兆4900億円にとどまった。直線ルートの方が距離が短く建設コストがかからないうえ、移動時間も短くて済むためだ。
試算は東京から大阪までのリニア料金を、1万4100円の東海道新幹線より高い1万5千円に設定。運行本数も1日あたり114本の東海道新幹線より多い130本と想定した。
小委員会ではルートにかかわる環境調査の結果も公表した。大気汚染の観測結果では、南アルプス、伊那谷の両ルートとも環境基準を満たしたが、環境への配慮から保存すべき地形の面積などは伊那谷ルートの方が上回った。農業や森林地域も同ルートの方が格段に広かった。
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