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育休3年間を「評価」は36%

第131回 編集委員 大石格

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安倍晋三首相が企業の育児休業制度を現行の最長1年半から3年に延ばす構想を打ち出しました。少子化対策の切り札であると同時に夏の参院選での女性票獲得につなげる狙いが込められています。しかし電子版読者の回答は「評価する」が36.7%にとどまり、やや思惑外れの結果でした。

順風満帆の安倍政権の施策はどれも歓迎されてきました。本欄でも環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加は87.6%、日銀の金融緩和は80.6%、経済界への賃上げ要請は78.5%の支持を集めました。育休3年はどこが違ったのでしょうか。

「評価しない」という読者のコメントをみてみましょう。

○女性にだけ子育てを押し付ける施策だ(32歳、男性)

○安心して働き続けられる仕組みが必要(57歳、男性)

○3年間も休んだら円滑な職場復帰は困難になる(44歳、女性)

○共働きでないと生活費が不安でないか(63歳、男性)

設問で指摘したのとほぼ同じ回答が多数寄せられました。「戻ったときのフォローのない計画は無理がある」(42歳、女性)などの声に政府はもっと耳を貸すべきでしょう。

「3歳神話の復活としか思えない」(56歳、男性)とのコメントもありました。三つ子の魂百まで、ということわざがありますが、3歳まで親がしっかり面倒をみるとその後は自然とよい子に育つのでしょうか。子育ての専門家ではない筆者にはよくわかりません。

子育て頑張れとは別の視点から「評価しない」というコメントもありました。

○社会に負担をかけてまでやることではない(63歳、男性)

○復職後、短期間で退職する女性も多い(50歳、男性)

育休は企業の負担増、職場の迷惑という趣旨です。こうした見方の人がどれほどいるかを知りたくて入れたのが2問目です。

職場に子育て期の同僚がいると「子どもが熱を出したので迎えに来いとの連絡が保育園からありました。突然ですが早退します」などの突発事は必ず起きます。そういう人と一緒には働きたくないという選択肢を5人に1人が選びました。

○家庭のことを職場に持ち込むな(38歳、男性)

○中小企業では余剰人員を抱える余裕がない(53歳、男性)

○応援したい女性もいるが、制度に甘えている女性もいる(46歳、男性)

「家庭のことを職場に持ち込むな」というのは言い過ぎだろう、という気はしますが、他方で本来は国が担うべき子育て支援を企業に下請けに出している日本型の社会制度がよいのかという気もします。

回答者の内訳
回答総数1179
男性81%
女性19%
20代6%
30代22%
40代26%
50代23%
60代18%
70代5%
80代以上0%

同一労働、同一賃金。これが給与の基本です。理屈だけでいえば企業は同一賃金を支払い、国家の持続のために国が給与控除を設けるなどして子育て支援する。これが筋でしょう。

話が脇にそれました。急に休む従業員がいても大丈夫なだけの余裕のある職場にできるかどうかは最後は日本経済が上向きかどうかによるのでしょう。「できるだけ応援したい」を選んだ読者には「すべて大目にみろとはいわれたくない」(63歳、男性)など条件付き応援もありました。

子育てを女性だけの問題にしないためにはイクメンを増やすことが大事です。男性の育児参加については「もう少し増やした方がよい」がほぼ半数でした。

○男性の育休取得がもっと一般的になってほしい(27歳、男性)

○できそうなことから参加してやる気を高めてもらう(64歳、男性)

もっとも「母親と同じぐらい」となると、賛同は3割弱でした。

○女性ばかりが仕事と家庭の両立を求められる。男性は両立しなくていいのか(45歳、女性)

もっともな指摘です。ただ、「現状で十分」にも同じくらい支持があったことは留意すべきです。女性にもこの回答を選ぶ人がかなりいました。

○男は生活費を稼ぎ、女性は育児があるべき姿(77歳、男性)

○お父さんはしっかり稼ぎましょう。母乳も出ないし…(46歳、女性)

○男性が頻繁に休むと職場に迷惑がかかる(34歳、女性)

全体としてみると、育休の延長や男性の育児よりも労働時間の短縮が一番の子育て支援という感じがしました。ジョブシェアリングなどの論議と一体で考えてみてはどうでしょうか。

安倍内閣の支持率は71.1%と大きく下がりました。不評の政策とセットで聞いたからでしょう。それでも「政策には疑問があるが、内閣としては支持したい」(37歳、男性)などのコメントを読むと、安倍首相への信頼感は底堅い感じがします。

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