マリモは日本が起源、渡り鳥が運搬か
釧路の研究員ら、遺伝子調査で確認

北半球約220カ所で生息が確認されているマリモの起源が日本であることが釧路市教育委員会マリモ研究室(北海道釧路市)の若菜勇学芸員(54)らの研究で明らかになった。マリモを食べた渡り鳥が広めたとみられ、釧路市の阿寒湖と、約8500キロ離れたアイスランドのミーバトン湖のマリモが同じ遺伝子を持つことも確認された。
マリモは東アジアや欧州などの北半球の淡水湖沼に生息する緑藻類で環境省の絶滅危惧種に指定されている。球体で群生しているのは阿寒湖とミーバトン湖だけだ。
オランダなどの研究者と共同で日本やドイツ、フィンランド、アイスランドなど33カ所の湖のマリモの遺伝子を調査。最も古いタイプの"祖先型"は日本に集中。祖先型のマリモが最も時間をかけて変異を重ねたものが琵琶湖(滋賀県)にあることなどを理由に日本が起源と結論付けた。
阿寒湖は祖先型のマリモが現存する国内の湖の中で形成時期が最も古いが、若菜学芸員は「長い歴史の中で消滅した湖もあり、国内のどこの湖が起源かを特定するのは困難」としている。
大陸に伝わった時期は13万~7万年前の間氷期か、1万年前の最終氷期以降。マリモを食べたハクチョウやカモなどの渡り鳥が運搬役になり、フンに含まれたマリモの細胞や、体についた胞子から北半球の広いエリアに広まったとみられる。
詳しい生態が不明で、「謎の生物」とも呼ばれているマリモ。若菜学芸員は「ある程度、起源の解明が進んだことで生態特性の解明につながる。保全活動に生かしたい」と話している。
〔共同〕